食器を分ければ虫歯は防げる? ―― それよりも重要な、保育園(0~2歳)の保護者の方に知って欲しいこと

はじめに
乳幼児の保護者の方から、よくこんな質問を受けます。
「子どもに虫歯菌をうつさないように、スプーンやコップは必ず分けた方がいいんですよね?」
子どもを虫歯から守りたい一心で、家族での食器共有をガマンしている方も少なくありません。
ところが、2023年に日本口腔衛生学会が出した声明では、
「食器の共有をしないことでう蝕(虫歯)を予防できるという科学的根拠は必ずしも強いものではありません」
とはっきり述べられています。
本記事では、この学会声明と近年の研究結果をもとに、
- なぜ「食器を分けても虫歯を完全には防げないのか」
- 万が一親からの感染を防げたとしても、園児同士での感染リスクがある現実
- 虫歯菌に感染していても虫歯にならない人が多く存在するという事実
- むしろ重要なのは、親の虫歯の状態であるということ
- それよりもっと大事な虫歯予防のポイントは何か
を、保育園の保護者の方向けにわかりやすく解説します。
記事を読む前に
前提として、「虫歯にしないためにできること -虫歯予防についての新常識-」に書かれているに、虫歯は感染症ではない、とするのが現在の基本的な考え方です。つまり、虫歯は、口腔内の常在細菌が糖摂取などで病的な菌バランス(ディスバイオーシス)へと傾くことで生じるもので、細菌自体は唾液で共有されるものの、「菌がうつる=病気がうつる」という意味での感染症ではないことに注意が必要です。
1. 食器を分けても「虫歯菌ゼロ」にはならない理由
1-1. 虫歯菌の感染は、食器共有よりずっと前から始まっている
「食器から虫歯菌がうつる」と聞くと、ほとんどの方は離乳食が始まる生後5〜6か月ごろをイメージされると思います。
しかし、最新の研究では、生後4か月の時点で、すでにお母さんの口の細菌が赤ちゃんのお口に入り込んでいることがわかっています。
- 448組の母子を対象にした日本の研究では、生後4か月児の舌から採取した細菌のうち、平均で約1割が実の母親と同じ細菌でした。
- しかも、母子間で共有されている細菌の割合は、哺乳瓶やミルクなどの「授乳方法」によっても変わることが示されています。
離乳食が始まるのはその後ですから、食器を分け始めるタイミングより前に、すでに親の細菌は子どものお口に入っている、ということになります。
抱っこ、キス、頬ずり……。こうした日常のスキンシップの中で、どうしても少量の唾液にふれるため、食器だけをどれだけ気を付けても、完全に細菌の伝播を防ぐことはできません。
1-2. 虫歯の原因は「1種類の菌」ではない
かつては「虫歯菌=ミュータンス菌」と紹介されることが多かったのですが、現在の研究では、
- 口の中には数百種類以上の細菌が常在していること
- そのうち複数の菌が、砂糖などをエサに酸を出して歯を溶かすこと
がわかっています。
日本口腔衛生学会の声明でも、「ミュータンスレンサ球菌だけがう蝕の原因菌ではありません」とはっきり書かれています。
つまり、たとえ特定の「虫歯菌」を完全に防げたとしても、他の酸を出す菌が増えれば虫歯は起こりうるのです。食器分けだけでは、この複雑な細菌バランスをコントロールすることはできません。
1-3. 日本の3歳児の研究でも「食器共有」と虫歯には差がなかった
では実際に、「食器を分けた家庭」と「分けなかった家庭」で、子どもの虫歯のなりやすさに差はあるのでしょうか。
日本で3,035人の3歳児を対象に行われた研究では、
- 「親とスプーンを共有しない」「口移しをしない」など、いわゆる虫歯菌の垂直感染対策をしている保護者は、
- 歯みがき回数が多い
- おやつの管理がしっかりしている
など、全体的に口の健康への意識が高い傾向がありました。
- にもかかわらず、食器共有などの「感染予防行動」と、実際の虫歯の有無とのあいだに、有意な差は認められなかったのです。
この結果から、研究者たちは、
「食器を分ける」といった感染予防行動そのものは、子どもの虫歯の少なさに直接は結びついていない
と結論づけています。
2. もし親からの感染を防げたとしても…「保育園での園児同士の感染」は起こっている
ここまで読まれて、「では家庭での食器分けをがんばれば大丈夫」と思われた方に、重要な現実をお伝えする必要があります。
親からの虫歯菌伝播を完全に防いだとしても、保育園や幼稚園で園児同士の間で虫歯菌が感染する可能性があるということです。
2-1. 幼保施設での「園児間感染」の実態
研究によって、複数の園児が同じ種類の虫歯菌を持っていることが報告されています。
トルコで行われた研究では、幼保施設に通う子どもたちの間で、44.12~46.72%の高い確率で、園児同士が同じ虫歯菌を持っていたことが報告されています。
この高い共有率は、
- 幼保施設での長時間の集団生活(1日7~9時間程度)
- 食器やおもちゃの共有
- おもちゃを口に入れる習慣
といった、乳幼児特有の行動が関係しています。
2-2. 一方、学童期では感染リスクが大幅に低下
興味深いことに、米国の研究では、5~6歳の幼稚園児の間での水平感染率(園児同士の感染)は、全体で6.3%、感染者同士では13%と、かなり低いレベルにとどまっていました。
つまり、
- 乳幼児期(保育園年齢):感染リスク比較的高い(長時間密接接触)
- 学童期(小学校以上):感染リスク低い(接触時間短い、口移し減少)
という傾向が見られるのです。
2-3. 園児同士の感染経路は何か
具体的に、園児同士でどのようにして虫歯菌が感染するのでしょうか。
複数の研究から、以下の行動が感染のリスク要因であることがわかっています:
- 共有の食器やスプーン
- 共有のコップ
- おもちゃを複数の子どもが口に入れる行為
- スプーンで食べ物を与えるときの接触
つまり、家庭では食器を分けていても、保育園や幼稚園という集団生活の環境では、このような共有がどうしても起こりうるということです。もちろん、両親が気をつけていても祖父母から、ということも十分考えられます。
2-4. では「完全隔離」は必要なのか?
ここで誤解を招きたくないのですが、
「だから、園児同士を完全に隔離しなければならない」
という結論は導き出しません。
理由は以下の通りです:
- 乳幼児期の集団生活は、社会性発達に極めて重要である
- 園児同士の感染リスク自体は、その後の虫歯予防ケア(砂糖制限、フッ化物利用、歯磨き)でコントロール可能である
- 親子間・園児間どちらの感染も「感染すること自体」より「感染した後のケア」の方がはるかに重要である
むしろ、「万が一虫歯菌が感染しても、虫歯にならないようなケアをする」ことに焦点を当てるべきなのです。
3. 意外な事実:虫歯菌に感染していても、虫歯にならない人が多く存在する
ここで、最新の科学がもたらしてくれた重要な知見をご紹介します。
3-1. 虫歯菌「S. mutans」がない人、そして感染していても虫歯がない人の存在
2025年の最新な医学分析によると、虫歯のない(カリエス・フリーの)人にS. mutans(虫歯の主要な原因菌)が存在するかどうかについて、驚くべき事実が明かされています。
虫歯のない人の中でも、S. mutansが検出される人と検出されない人が混在しているのです。つまり、
- S. mutansがまったく存在しない人:確実に存在する
- S. mutansに感染しているのに虫歯がない人:多数存在する
という状況が存在しているのです。
3-2. 具体的なデータ:虫歯菌を持っていても虫歯がない子ども
アメリカ・インディアンのコミュニティで行われた長期研究では、以下のような結果が報告されています:
- 虫歯がない13歳の子どもの中に、S. mutansが検出された子どもが30人いた
- これらの子どもたちの平均S. mutans菌数は5.42×10⁵ CFU/ml であり、虫歯がある子ども(平均1.56×10⁶ CFU/ml)より低いものの、確かに感染していた
- さらに驚くことに、虫歯がない子どものうち16.67%は、S. mutansとS. sobrinus(別の虫歯菌)の両方を持っていたにもかかわらず虫歯がなかった
別の大規模研究では、虫歯がない子どもの中で91.55%でS. mutans が検出されたが、虫歯を発症していないという結果も報告されています。
3-3. 虫歯菌の「質」の違い:感染する菌株と感染しない菌株
さらに注目すべき発見があります。同じS. mutansであっても、その菌株によって「虫歯を起こしやすさ」が異なるというのです。
研究によると:
- 虫歯がある人から分離されたS. mutans菌株は、唾液に含まれる抗菌ペプチド(HNP、HBD、LL-37)に対して、より高い耐性(抵抗力)を持っている
- 虫歯がない人から分離されたS. mutans菌株は、同じ抗菌ペプチドに対して、より感受性が高い(=より容易に唾液によって殺滅される)
- つまり、「毒性の弱い虫歯菌」に感染した場合、体の免疫が自然に菌を抑え込んでしまうため、虫歯にならないのです
これは、虫歯菌の「感染の有無」よりも、感染した菌株の「病原力の強さ」が虫歯発症を左右することを意味しています。
4. 親の虫歯状態が、子どもの虫歯リスクを強く左右する
ここで、もう一つの重要な現実をお伝えします。
食器分けに気を遣う以前に、親自身の口腔内の状態が、子どもの虫歯リスクをはるかに強く規定しているという事実です。
4-1. 母親の虫歯の有無が子どもの虫歯リスクを22倍変える
ブラジルで77組の母子を対象に行われた研究では、以下のような衝撃的な結果が報告されています:
- 母親に虫歯がある場合、子どもが虫歯になるリスクは22.5倍に増加した(95%信頼区間 3.2-156.6、P<0.001)
- 同じ家庭内で、母子の両方に歯肉出血が観察される場合:リスク12.2倍増加
- 同じ家庭内で、母子の両方に目に見える歯垢がある場合:リスク4.1倍増加
つまり、親の虫歯や口腔衛生状態が「そのまま」子どもに影響するという関係性が存在するのです。
4-2. 妊娠中の母親の虫歯が子どもの生涯虫歯リスクを決める
さらに驚くべき知見として、タイで158組の母子を対象に行われた研究では:
- 妊娠中に母親が虫歯を持っていなかった場合:その子どもが幼少期に虫歯を発症する確率は約5%
- 妊娠中に母親が1~5本の虫歯を持っていた場合:子どもの虫歯リスクは平均4.5%増加(累積100本の歯あたり)
- 妊娠中に母親が6本以上の虫歯を持っていた場合:子どもの虫歯リスクは平均8.8%増加
つまり、母親が虫歯をしっかり治療しておくことで、子どもの虫歯リスクは大幅に低下するということです。
4-3. なぜ母親の虫歯が子どもに影響するのか?
この関連性の背景には、以下のようなメカニズムが存在します:
母親の虫歯の有無 → 母親の口腔衛生行動 → 子どもへのケア行動 → 子どもの虫歯リスク
オーストラリアで行われた大規模研究によると:
- 虫歯がある母親は、口腔衛生が悪い傾向がある
- 口腔衛生が悪い母親は、歯科医院へ受診する頻度が低い傾向がある
- 虫歯がある母親から生まれた子どもは、親から不適切なケア行動を学ぶ可能性が高い
- その結果、子どもの虫歯リスクが上昇する
つまり、虫歯菌の伝播よりも、母親の口腔衛生行動と知識の方が、子どもの虫歯予防を左右しているという複雑な現実が存在するのです。
5. 食器共有を「完全禁止」にするデメリット
5-1. 親子のスキンシップが減ってしまう
「虫歯菌がうつるから」と、
- 一緒のスプーンを絶対に使わない
- 口移しは一切しない
- 子どものほっぺや口元へのキスも我慢する
といった”厳戒態勢”を続けていると、親子のスキンシップ自体が減ってしまうことがあります。
もちろん、過度な唾液の共有(大人の口で噛み砕いた食べ物を頻繁に与える、など)はおすすめできませんが、
「たまにスプーンが一緒になってしまった」
程度であれば、そこまで神経質になる必要はありません。
5-2. 唾液の接触がアレルギー予防に役立つ可能性も
さらに、親の唾液とのほどよい接触が、アレルギー予防に役立つ可能性を示す研究も出てきています。
日本の小学生約3,500人を対象にした研究では、乳児期(1歳未満)に親と食器を共有していた親が、子どものおしゃぶりを口でなめてから渡していたという子どもたちは、
- 学童期に湿疹(アトピー性皮膚炎)やアレルギー性鼻炎になりにくいという結果が示されました。
まだ「確定した事実」とまでは言えませんが、親の口の中の細菌が子どもの免疫を刺激し、アレルギーを起こしにくい体づくりを助けている可能性が考えられています。
虫歯だけを恐れて、親子の自然なふれあいや、免疫を鍛える機会まで手放してしまうのは、少しもったいないかもしれません。
6. 本当に大事なのは「砂糖」と「毎日のケア」
ここからは、研究で「虫歯と強く関係している」とわかっている、本当に大事な虫歯予防のポイントをご紹介します。
6-1. いちばん効くのは「砂糖の量と回数」を減らすこと
多くの研究で、砂糖をとる量と回数が増えるほど、虫歯になりやすいことが示されています。
子どもの食事と虫歯を追跡した複数の研究をまとめたレビューでは、
- ジュースや甘い飲み物を毎日飲む
- キャンディーや甘いお菓子を頻繁に食べる
- とくに「寝る前」に甘い飲み物やお菓子をとる
といった習慣がある子どもは、そうでない子どもに比べて虫歯になるリスクが明らかに高いことが報告されています。
また、別の大規模研究では、乳幼児期から「砂糖多めの食生活」が続くと、5歳時点で虫歯が2倍以上になってしまう可能性が示されています。
ご家庭で意識したいポイント
- 「量」よりもまず回数を減らす(ダラダラ食べ・ダラダラ飲みを避ける)
- 大前提として甘い物を買わない、家に置かないように工夫していく
- ご褒美に甘い物を与える習慣を無くす
- 朝ごはんを菓子パンで、といったことをしない
- とくに寝る前の甘い飲み物・お菓子は控える
- 普段の飲み物は
水、お茶、無糖の麦茶などを基本に
ジュースは「特別なとき」に
砂糖のとり方を見直すことは、虫歯だけでなく、将来の生活習慣病予防にもつながる、大事なポイントです。
以前の記事「子どもの甘い習慣は誰のため? 甘い物味覚に慣れさせる罠 ―― 資本主義と甘味産業の闇」では、以下のようなことをまとめています。
- 生後6ヶ月前の砂糖導入は、将来の永久歯の虫歯リスクを27%増加させる
- 乳児期に甘い飲料を日常的に飲んでいた子どもは、6歳時に砂糖飲料を1日1回以上摂取する確率が2.22倍にまで高まる
➠ 早期の甘味曝露が一度形成された嗜好を長期間にわたって強固にしてしまうことを示唆しています。 - 0歳から2歳までに砂糖摂取を制限した群で、成人期の2型糖尿病リスクが35%、高血圧リスクが20%低減する
また、「「甘いものがやめられない」のはなぜ? - 甘味に慣れるメカニズム」の記事では、
- シュガーフリーやゼロカロリーをうたう商品で代用甘味料を使っているものも多くありますが、それによって慣れが生じることも気に留めておかなければなりません。とまとめています。
つまり、「虫歯が心配なので代用甘味料・人工甘味料の入った甘いものなら幼少期からあげてもいいだろう」と考えるのは間違っているということです。
6-2. フッ素入り歯みがき剤を毎日使う
フッ素(フッ化物)は、世界中の研究で虫歯予防効果が確認されている成分です。
Cochraneレビュー(複数の研究をまとめた信頼性の高いまとめ)によると、
- 1000ppm以上のフッ素濃度の歯みがき剤を使うと、フッ素なしの歯みがき剤に比べて虫歯が明らかに少なくなる
- 濃度が高いほど虫歯予防効果は強くなるが、小さな子どもでは「飲み込み」とフッ素症(歯の白斑)とのバランスを考慮する必要がある
ことが示されています。
日本でも、歯科関連4学会が年齢別のフッ素入り歯みがき剤の使い方を推奨しており、
- 1歳半〜5歳:500〜1000ppm程度のフッ素入り歯みがき剤を、
- お米粒〜グリーンピース大の少量で
といった使い方が勧められています。

ご家庭でのポイント
- 「子ども用」と書かれているフッ素入り歯みがき剤を選ぶ
- 少量でよいので、毎日使うことが大切
- 仕上げみがきのときに、保護者の方が量を調整してあげる
6-3. 親の仕上げみがきは最低でも「6歳くらいまで」が目安
小さな子どもは、自分ではどうしても磨き残しが多くなってしまいます。
研究によると、「親が歯みがきを見ている(仕上げをしている)かどうか」が、子どもの虫歯の有無と強く関係していることがわかっています。
基準は年齢ではなく、習慣化できているか、実際に磨けているかどうかです。奥歯までしっかり光を入れてチェックしないと磨き残しがあるかを判別するのは難しいため、実際に磨けているかは歯医者さんでないときちんと確認できません。かかりつけの歯科医院を作ってチェックしてもらいましょう。
実践のコツ
- 目安として小学校入学前ごろまでは、毎日の仕上げみがきを
- お風呂上がりや寝る前など、生活リズムの中に「仕上げみがきタイム」を組み込む
- いやがる子には、「30数えたらおしまい」、歌をうたいながら磨くなど、楽しく続けられる工夫も効果的です。
6-4. 定期的なフッ素塗布・検診を活用する
ご家庭でのケアに加えて、歯科医院での
- 定期検診(6か月ごと など)
- 必要に応じたフッ素塗布
を組み合わせることで、虫歯の「早期発見・早期予防」がしやすくなります。
とくに、歯の溝が深いお子さん、甘い物が好きなお子さん、仕上げみがきが難しいご家庭では、定期的な専門家のチェックが安心につながります。
7. 「どこまで気にすればいいの?」現実的なガイドライン
ここまでの内容を踏まえて、「じゃあ、結局どうすればいいの?」というポイントを整理します。
7-1. しても大丈夫・あまり神経質にならなくてよいこと
- うっかりスプーンを一度共有してしまった
- 同じお皿のおかずを、順番に食べてしまった
- 頬やおでこへのキス、ハグなどのスキンシップ
こうしたことで、急に虫歯リスクが大きく跳ね上がることはありません。
「完璧に避ける」ことよりも、日々の甘い物のとり方や歯みがき習慣を整える方が、ずっと大きな予防効果があります。
7-2. できれば控えた方がよいこと
- 大人が自分の口で噛み砕いた食べ物を、頻繁に子どもに与える
- 虫歯がたくさんある大人が、
- 毎日のように同じスプーン・箸で子どもと食事をする
- 口元への濃厚なキスを繰り返す
といった、大人の唾液が大量に、繰り返し子どもの口に入る行為は、控えめにしておくのが安心です。
ただし「一度でもやったらアウト」というものではなく、
- 大人側の虫歯をきちんと治療しておく
- 砂糖のとり方やフッ素の利用で、子どもの歯を守る
ことと組み合わせることで、リスクを十分にコントロールできます。
7-3. 園での園児間感染を心配される保護者の方へ
「でも、保育園で園児同士が虫歯菌をうつしてしまったらどうしよう……」と心配される方も多いかもしれません。
重要なことは:
- 園での集団生活での感染は、完全には防げない(そして、防ぐべきではない)
- しかし、感染が虫歯につながるかどうかは、その後のケア次第である
- 家庭と園での協力により、感染→虫歯進行を断つことは十分に可能である
つまり、
- 家庭:砂糖制限、フッ素利用、仕上げみがき
- 保育園:園児への歯磨き指導、フッ素入りうがい液の導入、食後の歯磨き
といった対策を組み合わせることが、最も現実的で効果的なのです。
7-4. 親にできる最大の虫歯予防対策
この記事で最も強調したいのが、次のポイントです:
親自身の虫歯をしっかり治療し、良好な口腔衛生状態を保つこと自体が、子どもへの最大の「感染予防」であり「虫歯予防」である
理由:
- 親の虫歯が多いと、子どもの虫歯リスクは22倍に上昇する
- 親の虫歯がないと、子どもの虫歯リスクは大幅に低下する
- これは単なる「菌の伝播」ではなく、親の口腔衛生行動と知識が子どもに直接影響するから
7-5. いちばん重視してほしいのはこの3つ
- 砂糖の回数とタイミングをコントロールする
とくに「寝る前の甘い物」はできるだけ避ける - フッ素入り歯みがき剤+毎日の仕上げみがき
最低でも6歳ごろまでは大人が必ずチェック - 定期的な歯科検診・フッ素塗布
気になることがあれば早めに相談
親自身の歯科検診と治療も忘れずに
この3つを押さえておけば、食器を「完全に」分けるかどうかより、はるかに大きな虫歯予防効果が期待できます。
結論:完璧を求めず、「実践的な虫歯予防」へシフトを
虫歯菌の親から子への伝播は、実は食器共有よりずっと前から始まっています。また、保育園という集団生活では、園児同士での感染も起こりうる現実があります。
しかし、最新の科学が教えてくれた最も重要な真実は:
- 虫歯菌に感染すること自体は、虫歯発症を必ずしも意味しない
- 感染した菌株の「毒性」と、宿主の「免疫力」が虫歯発症を左右する
- 親自身の口腔健康状態が、子どもの虫歯リスクを強く規定する
ということです。
研究が示すところ、虫歯予防で本当に大事なのは、感染を完全に防ぐことではなく、感染した後も虫歯にならないようなケアをすることなのです。
- 親子の自然なふれあいを大切にする
- 毎日の砂糖の摂取をコントロールする
- フッ素入り歯みがき剤を賢く使う
- 親による見守りと歯磨きを習慣化させる
- 親自身の虫歯をしっかり治療して、良い口腔衛生状態をモデルとする
こうした「本当に効く対策」に、親のエネルギーと心配をシフトさせることが、子どもの歯を守る最短ルートなのです。
完璧な食器分けよりも、親子で一緒に笑顔で続けられる虫歯予防を、保育園の先生たちと一緒に作っていきませんか。
参考文献
- 日本口腔衛生学会. 乳幼児期における親との食器共有について. 令和5年8月31日;():.
Statement of the Japan Society for Oral Health on Utensil Sharing and Saliva Contact in Early Childhood
乳幼児期における親との食器共有についての日本口腔衛生学会声明
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妊娠中の母親の歯科齲蝕によって推定される早期幼児齲蝕リスク:後ろ向きコホート研究
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Association between child caries and maternal health-related behaviours and health literacy: A cross-sectional study
児童齲蝕と母親の健康関連行動及び健康リテラシーの関連:横断的研究
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27352468/
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