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5月のGWから気をつけたい熱中症対策 – 基本は水とお茶のみ。塩分の追加摂取は摂りすぎに

目次

  1. 熱中症対策で本当に必要なのは「水」と「塩分」
  2. 「水は飲んでいたのに倒れる」低ナトリウム血症とは
  3. 日本人の塩分摂取は実は多すぎる
  4. スポーツドリンク・清涼飲料水が虫歯に良くない理由
  5. 熱中症対策として何で塩分補給するのが良いか
  6. 日常生活と運動時、それぞれのおすすめパターン
  7. まとめ:熱中症と虫歯を両方防ぐ「落としどころ」

1. 熱中症対策で本当に必要なのは「水」と「塩分」

熱中症対策というと「水分補給しましょう」と言われますが、正確には「水分(=水)+電解質(特にナトリウム=塩分)」の両方が重要です。
汗には水だけでなく塩分も含まれており、大量に汗をかいた状態で水だけを飲み続けると、血液中のナトリウム濃度が薄まりすぎることがあります。

通常の快適な環境・体調であれば、腎臓がうまく調節しているため、少し汗をかいた程度で「塩分欠乏」になることはまずありません。
問題となるのは、炎天下での長時間の運動や重労働、あるいは下痢などで、水分とナトリウムが急激に失われた場合に、水だけを大量に補給してしまうケースです。

2. 「水は飲んでいたのに倒れる」低ナトリウム血症とは

低ナトリウム血症で起こること

塩分(ナトリウム)が不足したり、水だけを大量に飲んで血液が「薄く」なったりすると、「低ナトリウム血症」という状態になります。

軽症〜中等症では

  • 頭痛、めまい
  • 吐き気、食欲低下
  • 全身のだるさ、脱力感
  • こむら返り(筋痙攣)

などが見られます。

重症化すると

  • 意識障害(ぼんやり、錯乱、反応がおかしい)
  • けいれん発作
  • 脳浮腫、肺水腫から呼吸困難、昏睡、死亡

といった深刻な状態に至ることがあり、救急搬送・集中治療が必要になります。

「水だけをまじめに飲んで」起こるケース

水分摂取による低ナトリウム血症・水中毒の系統的レビューでは、1946〜2019年に報告された成人の水中毒関連論文177報を解析し、そのうち233例の症例がまとめられています。
このレビューによると、

  • 過剰な水分摂取の理由の12%が「運動に関連した多飲」であり
  • 長時間の持久系運動中・終了後に、電解質を含まない水を大量に飲んだ場合に低ナトリウム血症が起こりうる

ことが示されています。

また、筑波大学体育系の総説論文でも、

  • 暑熱環境下で大量に汗をかいた状態で、塩分を含まない水やお茶だけを大量に飲むと、低ナトリウム血症(水中毒)に陥り、
  • 軽症では倦怠感、頭痛、吐き気、こむら返りなど
  • 重症では循環不全、肺水腫、脳浮腫、意識障害、死亡

に至る可能性があると詳しく述べられています。

3. 日本人の塩分摂取は実は多すぎる

平均摂取量と必要量のギャップ

日本人の食塩摂取量は、推計で平均1日10 g程度とされており、必要量をはるかに超えています
これは、以前から指摘されている「日本人は塩分過多」という評価と一致しており、健康政策としても減塩が強く推奨されてきた背景です。

日本高血圧学会や日本人の食事摂取基準では、生活習慣病予防のための目標値として

  • 男性:7.5 g/日未満
  • 女性:6.5 g/日未満

を掲げ、高血圧治療中の人では

  • 1日6 g未満

を推奨しています。

高血圧の人は「夏でも減塩が基本」

日本高血圧学会のガイドラインでは、高血圧の人は原則として季節を問わず適切な減塩(6 g/日未満)が望ましいとされており、「夏だから塩を増やしてよい」という考え方は推奨されていません。
筑波大学の論文でも、厳しい減塩の一方で熱中症リスクとのバランスに注意を促しつつも、「習慣的な摂取量」と「暑熱環境での一時的な必要量」を混同せずに考えるべきだとしています。

「通常の食事を摂っている人」は意識的に塩分を増やさなくてよい

日本高血圧学会の一般向け解説では、

  • 日本人の食塩摂取量は平均1日約10 gと多く、必要量を大きく上回っていること
  • 通常の食事(1日3食)を摂れている人は、夏場でも「熱中症予防のために」と意識的に塩分摂取を増やす必要はないこと

が明記されています。

したがって、健康な成人がふだんの食事をきちんと摂っている限り、「熱中症が心配だから」といって日常的に塩タブレットや塩飴、濃い味付けの食品で塩分を上乗せする必要性はなく、むしろ血圧や心血管リスクを考えれば避けるべきといえます。

不適切な塩分摂取が、むしろ熱中症リスクを高めることも分かっています。

4. スポーツドリンク・清涼飲料水が虫歯に良くない理由

虫歯予防の観点から、砂糖入りの清涼飲料水やスポーツドリンクは「控えるべき」とする論文や国際的ポリシーが多数存在します。

1)遊離糖類(砂糖)の頻回摂取

砂糖入り飲料(SSB:sugar‑sweetened beverages)は、虫歯の主要リスク因子である「遊離糖類」の重要な供給源です。
WHO向けの系統的レビューでは、遊離糖類の摂取量が増えるほどう蝕が増加し、1日1〜3回のSSB摂取でも成人のう蝕リスクが約30%増加するというデータが引用されています。

また、WHOおよびMoynihanらのレビューは、

  • 遊離糖類を総エネルギーの10%未満に抑えると虫歯は減少するが、
  • 5%未満にするとさらにリスクが低下する

と結論づけており、「砂糖そのものを減らすこと」が虫歯予防の中心とされています。

2)酸性度による脱灰・酸蝕

多くのスポーツドリンクや炭酸飲料はpHが5.5未満で、歯のエナメル質が溶け始める臨界pHを下回っています。
その結果、

  • 飲み物そのものの酸で歯が溶ける「酸蝕症」
  • 飲料中の糖をエサにした細菌が作る酸による「う蝕」

という二重のダメージが起こります。

アスリートでは、脱水や口呼吸により唾液量・緩衝能が低下しやすく、酸や糖が口の中に長く残りやすいため、う蝕・酸蝕のリスクがさらに高まると報告されています。

3)こまめなスポーツドリンクの水分補給は虫歯を量産する

食事のあと、口の中が酸性になり歯が溶けます。その後、唾液の緩衝能(中性に戻す力)で徐々に中性に戻っていきます。スポーツや野外活動の際にこまめにスポーツドリンクを飲むと、常に歯が酸性の状態になり、虫歯のリスクが劇的に跳ね上がります

実際に、2012年ロンドンオリンピックではアスリートの55%が虫歯、45%に酸蝕症があり、原因として糖質の多いスポーツ飲料やスナックの頻回摂取、口呼吸増加による口腔内乾燥および唾液量減少によるドライマウス、不十分な口腔ケアなどが背景因子として指摘されています。
(詳細は部活・マラソン・ジム・水泳プール通いの人必見:2012ロンドン五輪の研究で判明!アスリートの半数以上が虫歯だった理由を参照)

4)フッ化物による保護でもリスクは「ゼロにはならない」

フッ化物(フッ素)は虫歯予防に有効ですが、「砂糖の取りすぎ」を完全に相殺できるわけではありません。
IADRのポリシー文書や教育資料では、フッ化物応用によっても遊離糖類摂取量が多いと虫歯は「部分的にしか減らない」とされ、

  • フッ化物への適切な曝露
  • 砂糖入り飲料などを含む遊離糖類摂取の制限

の両方が必須と明言されています。
WHOのファクトシートも、虫歯予防の中心は「遊離糖類の摂取を減らすこと」であり、その代表的ターゲットとして砂糖入り飲料を挙げています。

日本学校歯科医会からも注意喚起が出ています。基本は水かお茶です。

[PDF]

5. 熱中症対策として何で塩分補給するのが良いか

ここまでの「熱中症(低ナトリウム血症)」と「虫歯」の両方を踏まえると、次のような整理が現実的です。

基本方針

日常生活〜軽い運動:

  • 水・麦茶・無糖茶など、砂糖なしの飲み物でこまめに水分補給
  • 三食きちんと食べている人は、熱中症予防のために意識的に塩分を増やす必要は基本的にない

大量に汗をかく場面(炎天下で1時間以上の運動・作業など):

経口補水液・スポーツドリンクの位置づけ

経口補水液(OS-1等):

  • 基本的には脱水症になった時に飲むものです。予防として飲むものではありません。低ナトリウム血症や脱水に適したナトリウム濃度と、吸収を助ける少量の糖分を含む飲料で、熱中症寄りの状態には理にかなった組成です。
  • ただし酸性かつ糖を含むため、虫歯の観点から「必要な場面に限定して使う」「ちびちび長時間飲まない」ことが重要です。

一般的なスポーツドリンク:

  • ナトリウム量は熱中症対策としては適切な範囲ですが、糖分4〜6%で角砂糖9個分の糖類が入っており、pHも酸性で、う蝕・酸蝕リスクは高くなります。
  • 日常的な水分補給源ではなく、「激しい運動中〜直後のみ、回数と時間を限定して使う」飲料と考えるのが安全です。

6-1. ふだんの生活(子ども〜大人共通)

水分補給:水、麦茶、無糖のお茶を基本にする。

塩分:通常の食事をとれている人は、夏でも「熱中症が心配だから」と塩分を増やす必要はない。むしろ減塩が望ましい人(高血圧など)が多い。

虫歯予防:砂糖入り飲料(ジュース、スポーツドリンク、炭酸飲料など)は「たまの楽しみ」にとどめる。飲んだあとは水を一口飲む・うがいをする・就寝前のフッ化物入り歯みがきを徹底する。

6-2. 部活・スポーツ・屋外作業などで大量に汗をかくとき

基本:まずは水または無糖茶をこまめに。

追加の塩分・電解質補給:

  • 経口補水液:熱中症の兆候(だるさ、頭痛、軽い吐き気など)がある、または長時間の激しい運動時の「レスキュー的」使用に適する。
  • スポーツドリンク:どうしても必要な場合のみ、運動中〜直後に限定して用いる。

歯のケア:

  • 運動後に水や無糖茶で口をすすぐようにすると、酸や糖の滞留を減らせます。
  • 帰宅後はフッ化物入り歯みがきを丁寧に。

部活動、お稽古、ジムなどで週に2-3回はスポーツドリンクを飲んでいる、といった場合は「週に3本コカ・コーラ飲んでます。と同じ状況」です。これは常飲といって差し支えない状態となり、積極的に虫歯を量産しようとしている状態なので根本的に対策を見直す必要があります。

熱中症の高リスクスポーツは東京2020オリンピックに学ぶ、熱中症になりやすいスポーツは何か?で上げた通り、以下の競技に特に注意が必要です。

  • マラソンや競歩トライアスロン自転車競技などの有酸素持続運動種目は自分の望むタイミングで水分摂取が困難で、熱中症リスクが高いです。
  • 短時間高強度種目(テニス、スポーツクライミング等)は比較的低い発生率だが、競技中の環境管理(WBGT、日中開催の回避等)が重要です。

6-3. 子ども・高齢者・持病のある方

医師や小児科医が「経口補水液」や「スポーツドリンク」を指示している場合は、その指示を優先する。

自主判断で日常的にスポーツドリンクを常飲させるのは避け、

  • 発熱・下痢・強い脱水のとき
  • 猛暑日で食事や水分が十分とれないとき
    など、「必要性の高い場面」に限って使用するなど状況を絞るのが望ましい。

7. まとめ:熱中症と虫歯を両方防ぐ「落としどころ」

  • 日本人は平均1日約10 gの塩分を摂取しており、必要量を大きく超えています。高血圧の人は夏でも1日6 g未満の減塩が望まれ、通常の食事をしている人が「熱中症予防」を理由に意識的に塩分摂取を増やす必要はありません。
  • 一方で、炎天下での長時間運動や重労働などで大量に汗をかいた状態で、水だけを大量に飲むと低ナトリウム血症(水中毒)を起こすリスクがあり、系統的レビューや総説でも警告されています。
  • スポーツドリンクや清涼飲料水は、砂糖と酸により虫歯・酸蝕のリスクを高めるため、日常的な水分補給源ではなく、「必要な場面に限定」して使うのが安全です。
  • 熱中症と虫歯を両方防ぎたい場合、
    ・普段は「水・麦茶・無糖茶」で水分補給、塩分は食事から
    ・それでも心配ならスポーツ前に小分けにされたチーズを1欠片食べるなどでも良いでしょう。
    ・大量に汗をかくときだけ「経口補水液やスポーツドリンクをスポットで使う」。
    ・砂糖入り飲料の頻度と飲む時間を減らし、飲んだ後は口をすすぐ・歯みがきをする。

というメリハリをつけることが、医学的にも歯科的にもバランスのよい「現実的な落としどころ」と言えます。

参考文献

  1. Water intoxication and hyponatremia due to excessive water intake: a systematic review (2021)
    水分摂取による低ナトリウム血症・水中毒の系統的レビュー
    https://sndj-web.jp/news/001651.php
  2. In Reconsideration of Salt Intake Restriction against Hypertension and Salt Intake Recommendation against Heat Stroke (2022)
    高血圧の減塩と熱中症対策としての塩分摂取を再考する総説
    https://www.sapec.tsukuba.ac.jp/content/uploads/2022/04/44.04.pdf
  3. 夏の日常生活における水分と塩分の摂取について:熱中症予防の観点から(日本高血圧学会)
    https://www.jpnsh.jp/general_salt_01.html
  4. Sugars and Dental Caries: Evidence for Setting a Recommended Threshold for Intake (2016)
    砂糖とう蝕:推奨摂取量設定のためのエビデンス
    https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4717883/
  5. Effect on Caries of Restricting Sugars Intake: Systematic Review to Inform WHO Guidelines (2014)
    砂糖摂取制限がう蝕に与える影響:WHOガイドライン策定のための系統的レビュー
    https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3872848/
  6. Sugar-sweetened Beverages – IADR Policy Position (2017, updated)
    砂糖入り飲料に関するIADRポリシー・ステートメント
    https://www.iadr.org/SSBpolicy
  7. Sugars and dental caries – WHO Fact sheet (2025)
    砂糖とう蝕に関するWHOファクトシート
    https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/sugars-and-dental-caries
  8. Sugar-sweetened beverages? IADR information sheet (year not stated)
    砂糖入り飲料摂取と約30%のう蝕リスク増加を示した資料
    https://www.iadr.org/sites/default/files/2021-09/SSBs%20info.pdf
  9. Erosive Potential of Sports, Energy Drinks, and Isotonic Solutions on Oral Health in Athletes: A Systematic Review (2025)
    アスリートにおけるスポーツ・エナジードリンク・アイソトニック飲料の酸蝕性:系統的レビュー
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39940260/
  10. Erosive Potential of Sports, Energy Drinks, and Isotonic Beverages: A Narrative Review (2025)
    スポーツドリンク等の酸蝕性に関するナラティブレビュー
    https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11820644/
  11. Lessening the erosive influence of electrolyte sports drinks on enamel by modified formulations (2025)
    電解質スポーツドリンクの改良によるエナメル酸蝕低減に関する研究
    https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC12702156/
  12. Sugars Intake – Caries Process, Prevention and Management: The Diet (2025)
    砂糖摂取とう蝕プロセス・予防と管理:食事の観点
    https://www.dentalcare.com/en-us/ce-courses/ce713/sugars-intake

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執筆・監修 中村 瞬
かわせみデンタルクリニック 院長 / 歯学博士(歯科麻酔学)/ 日本歯科麻酔科学会 認定医
医療記事をほぼ毎日更新中・TV取材多数
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