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部活・マラソン・ジム・水泳プール通いの人必見:ロンドン五輪アスリートの半数以上が虫歯だった理由

目次

  1. はじめに:なぜアスリートは歯を守りにくいのか
  2. ロンドン五輪で分かった「エリート選手の口の中」
  3. アスリート全体で見た虫歯・酸蝕症の頻度
  4. スポーツドリンク・エナジードリンクの酸蝕リスク
  5. スポーツ栄養(補給)とう蝕・酸蝕症の関係
  6. アスリートが実践したい予防のポイント
  7. まとめ:パフォーマンスを守るための「口のコンディショニング」

1. はじめに:なぜアスリートは歯を守りにくいのか

アスリートは「体は健康そうなのに、口の中はボロボロ」ということが珍しくありません。
その背景には、激しいトレーニングに加えて、

  • スポーツドリンクやエナジードリンクなど、糖分・酸の多い飲料の頻回摂取
  • エナジージェルやバーなどの粘着性の高い補給食
  • 口呼吸や脱水による唾液量の低下
  • 遠征や合宿での不規則な生活による口腔ケアの甘さ

といった、う蝕(虫歯)・酸蝕症の「リスクの集合」があります。

ここでは、代表的な研究をもとに、アスリートとスポーツドリンク摂取、う蝕・酸蝕症の関係を分かりやすく整理します。

2. ロンドン五輪で分かった「エリート選手の口の中」

2012年ロンドンオリンピックに参加したアスリートを対象とした研究では、選手村の歯科診療所を受診した302名のうち、278名のデータが解析されています。

この調査では、

  • 虫歯(う蝕)のある選手:55%
  • 酸蝕症のある選手:45%
  • 歯肉炎:76%
  • 歯周病:15%

と、世界トップレベルの選手であっても、非常に高い割合で口腔疾患を抱えていることが明らかになりました。

さらに、

  • 4割以上の選手が「口の状態に悩んでいる」と回答
  • 約3割が「生活の質(QOL)への影響」を自覚
  • 約2割が「トレーニングやパフォーマンスに悪影響がある」と感じていた

と報告されています。

この研究では、糖質の多いスポーツ飲料やスナックの頻回摂取、口呼吸増加による口腔内乾燥および唾液量減少によるドライマウス、不十分な口腔ケアなどが背景因子として指摘されており、「スポーツ栄養と口腔疾患」の関係が重要なテーマであることが強調されています。

3. アスリート全体で見た虫歯・酸蝕症の頻度

その後の2024年の総説では、エリートアスリート全体の口腔健康状態がまとめられています。

ある包括的レビューでは、複数の研究を統合したうえで、エリートアスリートの口腔疾患の有病率はおおよそ次のように整理されています。

  • 虫歯:20〜84%
  • 歯の酸蝕:42〜59%
  • 歯肉炎:58〜77%
  • 歯周病:15〜41%

スポーツ種目や国、評価方法によってばらつきはあるものの、「多くのアスリートで口腔疾患が一般人口と同等か、それ以上に多い」という傾向が一貫して報告されています。

このレビューでは、アスリートの口腔状態が悪い理由として、

  • 高糖質・高頻度のスポーツ補給
  • 酸性飲料の常用(スポーツドリンク、エナジードリンク、アイソトニック飲料など)
  • 強い運動負荷による唾液量・唾液緩衝能の低下
  • 口腔清掃習慣の不十分さ

これらスポーツ栄養・酸化ストレス・口腔衛生の3つの要素が大きな要因とされています。

4. スポーツドリンク・エナジードリンクの酸蝕リスク

4.1 酸蝕症とは何か

酸蝕症とは、「細菌の関与なしに、酸によって歯が溶ける」状態です。
原因として、

  • 酸性飲料(スポーツドリンク、炭酸飲料、エナジードリンク、フルーツジュースなど)
  • 胃食道逆流(胃酸の逆流)
  • 塩素濃度の高いプール水

などが挙げられます。

スポーツドリンクやエナジードリンクは、pHが5.5以下のものが多く、歯のエナメル質が溶け始める「臨界pH」を下回るため、頻回・長時間接触すると酸蝕症のリスクになります。

4.2 アスリートを対象にした酸蝕症の研究

スポーツドリンク等の酸蝕ポテンシャルに注目した2025年の系統的レビューでは、アスリート567名を対象とした4つの研究が解析されています。

その結果、

  • 歯の酸蝕有病率は19.4〜100%と幅がある
  • エナメル質だけでなく、24〜57%の選手では象牙質まで酸蝕が進行している

といった、高い酸蝕負担が報告されています。

一部の研究では、「塩素入りプールで練習する水泳選手が、スポーツドリンクをよく飲む場合に酸蝕リスクがさらに高まる」といった結果も示されました。

ただし、このレビューの結論としては、

  • 現時点のデータだけでは「スポーツドリンク単独が酸蝕症の主因」とまでは断定できない
  • 胃食道逆流、プール水、運動強度、口腔衛生など多くの要因が絡む
  • それでも、「酸性飲料の頻回摂取が酸蝕症のリスク要因である」ことは妥当であり、今後はより質の高い追跡研究が必要

とされており、「リスクは高いが、多因子である」という整理になっています。

5. スポーツ栄養(補給)とう蝕・酸蝕症の関係

アスリートの口の中で問題になるのは、酸蝕症だけではなく「う蝕(虫歯)」です。

スポーツ栄養・補給の観点からは、

  • 糖質を含む飲料:スポーツドリンク、エナジードリンク、甘い炭酸飲料など
  • 糖質・粘着性の高い補給食:エナジージェル、グミ、バーなど

が、虫歯リスクを押し上げる要因となります。

包括的レビューでは、

  • アスリートでは、高糖質・高頻度の補給が「パフォーマンスのためには必要」だが、
  • その一方で、う蝕・酸蝕・歯周病のリスクを高めており、
  • 「スポーツに適した栄養」と「口腔健康」をどう両立させるかが大きな課題

とまとめられています。

特に問題とされるのは「ちびちび飲み・ちびちび食べ」です。
トレーニングや試合中に、砂糖入り飲料やジェルを少量ずつ何度も摂取すると、

  • 口の中が長時間「酸性+糖が豊富な状態」になる
  • 唾液量も運動で減り、酸や糖が洗い流されにくくなる

ため、う蝕も酸蝕も急速に進行しやすくなります。

6. アスリートが実践したい予防のポイント

ここまでのエビデンスから、アスリートができる現実的な対策をまとめると次のようになります。

6.1 飲み方・食べ方の工夫

  • スポーツドリンク・エナジードリンクは「日常の水分補給用」ではなく、「必要な場面に限って使う」
  • 可能な範囲で、練習・試合中は用途に応じて必要最低限の量にとどめる
  • ストローを用いて歯面になるべく触れないようにする
  • 飲み終わった後は水や無糖のお茶も一緒に飲み、口の中を流す
  • こまめな水分補給として少しずつ頻回にスポーツドリンクを飲むと常に歯が酸性の状態になり歯が溶けるため、極力まとめて飲む
  • 補給食(ジェル・バー・グミなど)は、「短時間にまとめて摂る」方が、だらだら食べ続けるよりリスクが低い

6.2 口腔ケアとフッ化物の活用

  • 毎日のフッ化物入り歯みがきを徹底する(できれば1日2回以上)
  • リスクが高い競技や選手では、歯科でのフッ化物塗布や高濃度フッ化物配合歯みがき剤を検討
  • 就寝前は特に丁寧にみがき、飲食を控える

6.3 歯科検診と情報共有

  • 年1回以上は歯科検診を受け、う蝕・酸蝕の早期発見・早期治療を行う
  • トレーナーや栄養士と連携し、「パフォーマンスを落とさずに、口のリスクを減らす補給パターン」を一緒に設計する

ロンドン五輪の研究でも、「直近1年間に歯科受診していない選手がほぼ半数」という結果が報告されており、歯科の受診率を上げることも重要な課題だとされています。

7. まとめ:パフォーマンスを守るための「口のコンディショニング」

  • エリートアスリートでは、虫歯や酸蝕症、歯周病の有病率が高く、パフォーマンスや生活の質に悪影響を与えていることが、ロンドン五輪の研究をはじめ、複数の研究で示されています。
  • スポーツドリンクやエナジードリンクは、「酸性+高糖」の性質から、う蝕と酸蝕症のリスクを高める要因になり得ます。特に、ちびちび飲み・長時間の摂取が問題です。
  • 一方で、適切なタイミング・量・飲み方を工夫し、フッ化物や歯みがき、歯科検診を組み合わせることで、「パフォーマンスに必要な補給」と「歯の健康」を両立させることは十分可能です。

筋肉や心肺機能と同じように、「口の中のコンディション」もパフォーマンスを左右する重要な要素です。
練習メニューや栄養計画に「歯と口のケア」を組み込むことが、これからのアスリートに求められる新しいスタンダードと言えるでしょう。

参考文献

  1. Oral health and impact on performance of athletes participating in the London 2012 Olympic Games: a cross-sectional study (2013)
    ロンドン2012オリンピック参加アスリートの口腔健康とパフォーマンスへの影響:横断研究
    https://bjsm.bmj.com/content/47/16/1054
  2. Sports Diet and Oral Health in Athletes: A Comprehensive Review (2024)
    アスリートのスポーツ栄養と口腔健康に関する包括的レビュー
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38399605/
  3. Erosive Potential of Sports, Energy Drinks, and Isotonic Solutions on Oral Health in Athletes: A Systematic Review (2025)
    アスリートにおけるスポーツ・エナジードリンク・アイソトニック飲料の酸蝕性:系統的レビュー
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39940260/
  4. Erosive Potential of Sports, Energy Drinks, and Isotonic Beverages: A Narrative Review (2025)
    スポーツドリンク等の酸蝕ポテンシャルに関するナラティブレビュー
    https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11820644/
  5. Oral health and elite sport performance (2014)
    口腔健康とエリートスポーツパフォーマンスに関するレビュー
    https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4316856/

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