コラム|船橋の歯医者・矯正歯科|かわせみデンタルクリニック

初診のみ
WEB予約
電話予約
初診のみ
WEB予約

コラム

コラムCOLUMN

日本人は味に敏感? アジアでみる味覚の違いとその理由

日本人は他のアジアの人より味に敏感なのでしょうか。苦味、甘味、塩味、うま味の感じ方の違いを、遺伝子、舌の構造、食文化の観点から研究論文をもとにわかりやすく解説します。

味の感じ方には個人差がありますが、国や地域によっても、ある程度の違いが見られます。 ただし、その違いは昔のような「人種分類」で単純に説明できるものではなく、現代の研究では、地域集団ごとの遺伝的傾向や食文化の違いとして理解されています。

とくに日本人については、「味に敏感なのではないか」と感じる人も少なくありません。 実際に、日本人を含む東アジアでは、苦味受容体に関わる遺伝子の特徴や、他のアジア集団との比較研究から、味覚感度が比較的高い可能性を示すデータがあります。

目次

  1. 味覚の違いは「人種差」ではない
  2. 味覚を左右する主な要因
  3. 日本人の味覚にはどんな特徴があるのか
  4. アジア地域の中で見た味覚の違い
  5. 日本人は他域と比べてどう考えればよいか
  6. まとめ
  7. 参考文献

1. 味覚の違いは「人種差」ではない

味覚の話になると、「日本人は欧米人と違う」「アジア人は味に敏感だ」といった表現が使われることがあります。 しかし、現代の遺伝学では、コーカソイド、モンゴロイド、ニグロイドのような古い人種分類を、生物学的に明確な区分として扱う考え方は支持されていません。

実際には、同じ国の中でも味覚には大きな個人差があります。 そのうえで、地域や民族的背景ごとに、味覚関連遺伝子の分布や食習慣に違いがあるため、集団としてみたときに一定の傾向が現れると考えられています。

つまり、「日本人だから必ず味に敏感」ということではありません。 より正確には、「日本人を含むある地域集団では、こうした傾向がやや見られやすい」と理解するのが適切です。

2. 味覚を左右する主な要因

味覚の違いは、ひとつの原因で決まるわけではありません。 大きく分けると、遺伝、舌の構造、そして食文化や経験が関わっています。

まず、苦味の感じやすさには、TAS2R38という苦味受容体遺伝子がよく知られています。 この遺伝子の型によって、PTCやPROPのような苦味物質を非常に苦く感じる人もいれば、ほとんど感じない人もいます。

次に、舌の表面にある乳頭の数や密度も重要です。 乳頭が多い人は味刺激を受け取りやすく、味をより強く感じやすい傾向があります。

さらに、毎日どのような味に触れてきたかという食文化や経験も無視できません。 辛い料理を多く食べる地域、甘味の強い食品に慣れている地域、だしやうま味を重視する地域では、好まれる味の強さや、味を感じ始める濃さが変わることがあります。

味覚に影響する主な要因

要因内容
遺伝TAS2R38などの味覚受容体遺伝子の違いが、苦味などの感じやすさに影響する。
舌の構造舌乳頭の数や密度が多いと、味刺激を強く感じやすい。
食文化辛味、甘味、濃い味への慣れが、味覚閾値や好みに影響する。
経験幼少期からの家庭の味つけや食経験が、味の好みを形づくる。

3. 日本人の味覚にはどんな特徴があるのか

日本人についてよく研究されているのが、苦味の感じ方です。 日本人では、苦味受容体遺伝子TAS2R38の主要遺伝子型として、AVI/AVI型が約16%、AVI/PAV型が約48%、PAV/PAV型が約36%と報告されています。

この結果は、日本人の中に苦味を感じにくい人も一定数いる一方で、多くの人は中等度以上の苦味感受性を持っていることを示しています。 つまり、日本人全体としてみると、苦味の検知能力は比較的保たれている可能性があります。

また、世界規模の解析では、日本を含む東アジアでは、苦味受容体の機能喪失変異が比較的少ないことが示されています。 これは、東アジアの人々が苦味刺激を受け取る機能を保ちやすい集団である可能性を示すものです。

ただし、ここで注意したいのは、「苦味を感じやすいこと」と「苦い味が好きかどうか」は別の話だという点です。 味覚感度と嗜好は一致しないことが多く、好き嫌いには文化や慣れが強く影響します。

4. アジア地域の中でみた味覚の違い

アジアの中でも、味覚の傾向はかなり多様です。 日本人を基準に見ていくと、その違いがわかりやすくなります。

4-1. 日本人とタイ人の違い

日本人とタイ人を比較した研究では、タイ人は甘味、塩味、酸味、苦味、うま味のすべてで認知閾値が高いと報告されました。 これは、タイ人の方が味を感じ始めるためにより高い濃度を必要とし、日本人の方が全体として味覚感度が高い傾向を示していることになります。

この研究では、タイ人が辛い料理を日常的に多く食べる一方、日本人は辛味摂取が少ないことも示されました。 辛味への慣れが、ほかの味の感じ方にも影響している可能性があります。

4-2. 中国系とインド系の違い

シンガポール在住者を対象とした研究では、中国系よりインド系の方が、甘味、塩味、酸味、うま味、苦味のすべてで認知閾値が高いことが示されました。 同じアジアに住む人々の間でも、味覚感度にはかなりの違いがあることがわかります。

背景には、香辛料や油脂の使い方、日常的な味つけの差があると考えられています。 つまり、アジアの味覚差を理解するには、遺伝だけでなく食文化も一緒に見る必要があります。

4-3. 甘味の好みの違い

マレーシアなどで行われた研究では、中国系、マレー系、インド系の若者の間で、甘味を感じ取る力そのものには大きな差がなくても、好む甘さの強さには違いがあると報告されています。 マレー系とインド系ではより強い甘味が好まれ、中国系では比較的弱い甘味が好まれる傾向がみられました。

このことは、「味を感じる力」と「どのくらいの濃さをおいしいと感じるか」は別であることをよく示しています。

4-4. 国や文化で変わる味のイメージ

味覚の違いは、実際に感じる強さだけではありません。 中国、インド、マレーシア、アメリカを比較した研究では、色や形と味の結びつけ方にも文化差があることが示されました。

たとえば、「この色は甘そう」「この形は苦そう」といった感覚は、味覚そのものというより、文化の中で学習されたイメージに近い部分もあります。 そのため、味覚の違いを考えるときは、生理学だけでなく文化心理学的な視点も重要です。

アジア地域で報告されている主な違い

比較対象主な傾向
日本人 vs タイ人タイ人の方が5基本味すべてで認知閾値が高く、日本人の方が味覚感度が高い傾向。
中国系 vs インド系(シンガポール)インド系の方が5基本味すべてで認知閾値が高い傾向。
中国系 vs マレー系・インド系甘味の検出閾値は大差ないが、マレー系・インド系はより強い甘味を好む傾向。
中国人 vs デンマーク人中国人の方が苦味を強く感じやすく、舌乳頭数も多い傾向。

5. 日本人は他地域と比べてどう考えればよいか

ここまでの研究を踏まえると、日本人は少なくともアジア地域内では、比較的味覚感度が高い側に位置する可能性があります。 とくに、日本人とタイ人の比較ではその傾向が明確で、東アジア全体としても苦味受容体機能が比較的保たれていることが示されています。

一方で、日本人と欧米人を直接比較した質の高い研究は、まだ十分に多いとはいえません。 そのため、「日本人は世界でいちばん味に敏感」といった言い方は、現在の証拠では支持できません。

現時点で最も妥当なのは、日本人は東アジアの特徴を持つ集団のひとつとして、苦味を含む一部の味覚機能が比較的保たれている可能性があり、そこに和食の薄味傾向や、だしとうま味を重視する文化、辛味摂取頻度の低さなどが重なって、日本人らしい味覚の傾向が形づくられていると考えることです。

地域ごとの苦味受容体の大まかな傾向

地域大まかな傾向
東アジア苦味受容体の機能喪失変異が比較的少ない。
欧米集団東アジアより中間的な分布を示す。
アフリカ系集団遺伝的多様性が高く、苦味受容体の多様性も大きい。

6. まとめ

味覚の違いは、単純な人種差ではなく、遺伝、舌の構造、食文化、食経験が重なって生まれるものです。 日本人はアジアの中では比較的味覚感度が高い可能性がありますが、それは絶対的な優劣ではなく、長い時間をかけて形成された地域的な特徴のひとつと考えるのが自然です。

苦味に敏感であること、薄味を好みやすいこと、うま味を大切にすることは、日本人の食文化を理解するうえでも重要な手がかりになります。 ただし、同じ日本人の中でも個人差は大きく、最終的な味の好みは、遺伝だけではなく日々の暮らしの中で育っていくものです。

7. 参考文献

  1. Differences in Taste Perception and Spicy Preference(2018)
    味覚知覚と辛味嗜好の違い
    https://academic.oup.com/chemse/article/43/1/65/4609710
  2. Taste sensitivities and diet of Chinese and Indians in Singapore(2018)
    シンガポールにおける中国系・インド系住民の味覚感受性と食事
    https://apjcn.nhri.org.tw/server/APJCN/27/3/681.pdf
  3. Exploring Ethnic Differences in Taste Perception(2016)
    民族差による味覚知覚の違いの検討
    https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4910674/
  4. Misunderstanding of race as biology has deep negative consequences for public health(2024)
    人種を生物学と誤解することが公衆衛生に深刻な悪影響を及ぼす
    https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11291859/
  5. Genetic Background of Taste Perception, Taste Preferences, and Its Nutritional Implications: A Systematic Review(2019)
    味覚知覚、味の好み、その栄養学的意味に関する遺伝的背景の系統的レビュー
    https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6930899/
  6. Genotyping Analysis of Bitter-Taste Receptor Genes TAS2R38 and TAS2R16 in Japanese Patients with Gastrointestinal Cancers(2017)
    消化器がん患者における苦味受容体遺伝子TAS2R38およびTAS2R16の遺伝子型解析
    https://www.jstage.jst.go.jp/article/jnsv/63/2/63_148/_pdf
  7. Multiple loss-of-function variants of taste receptors in modern humans(2015)
    現代人における味覚受容体の複数の機能喪失変異
    https://www.nature.com/articles/srep12349
  8. Global population genetics and diversity in the TAS2R bitter taste receptor family(2022)
    TAS2R苦味受容体ファミリーにおける世界集団の遺伝学と多様性
    https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9592824/
  9. Danish and Chinese Tongues Taste Broccoli and Chocolate Differently(2021)
    デンマーク人と中国人ではブロッコリーやチョコレートの味わい方が異なる
    https://neurosciencenews.com/bitter-taste-perception-ethnicity-17534/
  10. Association between taste perception, nutrient intake, and dietary quality in healthy adults: a systematic review(2019)
    健常成人における味覚知覚、栄養摂取、食事の質の関連に関する系統的レビュー
    https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6369110/
  11. Comparison of Chinese and American subjects on the self-rated intensity of taste and palatability(2022)
    中国人とアメリカ人における味の強さとおいしさの自己評価の比較
    https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9115193/
  12. A systematic review of the biological mediators of fat taste and smell(2022)
    脂肪の味覚と嗅覚を媒介する生物学的要因の系統的レビュー
    https://journals.physiology.org/doi/full/10.1152/physrev.00061.2021
  13. Assessment of detection threshold and preference for sweet among university students from three major ethnic groups in Malaysia(2025)
    マレーシアの三大民族群の大学生における甘味検出閾値と甘味嗜好の評価
    https://mattioli1885journals.com/index.php/progressinnutrition/onlinefirst/view/16899

関連記事 |船橋の歯医者・矯正歯科|かわせみデンタルクリニック

甘味と健康

甘味と味覚

小児と味覚形成

味覚障害


執筆・監修 中村 瞬
かわせみデンタルクリニック 院長 / 歯学博士(歯科麻酔学)/ 日本歯科麻酔科学会 認定医
医療記事をほぼ毎日更新中・TV取材多数
医学的根拠(エビデンス)に基づいた正確で分かりやすい情報を患者目線でお届けしています。


かわせみデンタルクリニック

所在地:〒273-0005 千葉県船橋市本町6丁目3−20 ベルヴィル船橋本町 1階B号室
電話番号:047-409-2988
JR・東武鉄道「船橋」駅 徒歩4分
平日 9:00 ~ 13:00 14:30 ~ 18:00
土曜 9:00 ~ 13:00 14:00 ~ 17:00
(休診:日曜・月曜・祝日)

当院は、初診時にしっかりと検査を行い、歯周病虫歯根管治療から矯正歯科・小児矯正まで、丁寧にご説明のうえで治療を進めています。
治療後も再発予防に努め、安心して通える歯科医院をめざしています。