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薬局での口腔チェックから歯医者さんへ:国民皆歯科健診モデル事業と「歯科医療機関連携強化加算」の流れ

更新日:2026/8/6

職場や薬局の口腔チェックから歯科受診へ。国のモデル事業が進行中です。

目次
  1. 1. 国民皆歯科健診とは何か
  2. 2. なぜ今「薬局・職場から歯科へ」なのか
  3. 3. 日本の歯科健診受診率の現状
  4. 4. 就労世代モデル事業の実データ
  5. 5. 薬局モデルと日本薬剤師会資料の位置づけ
  6. 6. その後の流れと都道府県レベルの展開
  7. 7. NTTデータ経営研究所は事業にどう関わっているか
  8. 8. 糖尿病と歯周病の関係
  9. 9. 歯科医療機関連携強化加算とは
  10. 10. 患者さんにとっての意味

はじめに

この流れは、モデル事業の実データ、日本薬剤師会の資料、その後の全国展開、都道府県の動き、NTTデータ経営研究所の役割、2026年度新設の「歯科医療機関連携強化加算」へ広がっています。

社会人になると、学校歯科健診のような定期的な歯科チェックの機会は一気に減ります。そのため、「痛くないから行かない」「忙しくて後回し」という理由で、歯周病やむし歯が進んでから受診する方が少なくありません。

しかし歯周病は、初期から中等度の段階では自覚症状が乏しいまま進行しやすい病気です。さらに近年は、糖尿病をはじめとする全身疾患と口腔の健康との関係も明らかになってきました。こうした背景から、歯科医院の中だけではなく、職場健診、保険者事業、薬局、地域保健事業の中で口腔チェックや受診勧奨を行う仕組みづくりが進められています。

歯が痛くなってから歯医者さんへ行く時代から、症状が出る前に口の健康をチェックし、必要なら早めに歯科につなぐ時代へと流れが変わってきています。

1. 国民皆歯科健診とは何か

日本では、乳幼児健診や学校歯科健診は制度として整っていますが、成人後は毎年必ず歯科健診を受ける全国一律の仕組みがありません。そこで政府は、2022年の骨太の方針で「生涯を通じた歯科健診(いわゆる国民皆歯科健診)の具体的な検討」を明記しました。6

ここでいう「国民皆歯科健診」は、単に全員に歯科健診を義務付けるという意味だけではありません。実際には、乳幼児から高齢者まで、それぞれのライフステージに応じた口腔チェックの機会を整え、必要な人を歯科受診や保健指導へつなぐ仕組み全体として進められています。厚生労働省資料でも、自治体・職域・薬局等を通じたモデル事業がその実装手段として示されています。3,7

2. なぜ今「薬局・職場から歯科へ」なのか

歯科受診率を上げるうえで最大の課題は、「歯科医院に来ない人」にどう接点を持つかです。就労世代では、職場の定期健診は受けても歯科受診は後回しになりやすく、痛みがないと受診行動が起こりにくいことが知られています。3

そこで注目されているのが、すでに人が集まる生活導線を使う方法です。職場健診、特定健診、保険者による保健事業、薬局での待ち時間、商業施設での健康イベントなどの場で、口腔リスクのチェックや受診勧奨を行い、歯科受診につなげる発想であり、厚生労働省のモデル事業にも「日常生活の場を活用した歯科受診勧奨」として位置づけられています。3,7

3. 日本の歯科健診受診率の現状

現在の日本では、歯科健診受診率は少しずつ改善傾向を示す状況です。

  • 令和5年(2023年)の国民健康・栄養調査では、過去1年間に歯科検診を受けた成人の割合は58.8%でした。1
  • 令和6年歯科疾患実態調査では、過去1年間の歯科検診受診割合は63.8%でした。2
  • 厚生労働省のモデル事業説明資料(平成30年度の集計)では、市町村が実施する歯周疾患検診の受診率は全国平均で約5.0%と示されています。8

調査の対象や方法、時期が異なるため単純比較はできませんが、自分で歯科に行く人が一定数いる一方で、市町村の歯周疾患検診の利用は限られていることが分かります。特に市町村歯周疾患検診の受診率の低さには、「案内するだけでは動かない」という課題が表れています。1,2,8

4. 就労世代モデル事業の実データ

厚生労働省の「就労世代の歯科健康診査等推進事業」では、全国31自治体と110の事業所等が参加し、歯科健診や簡易口腔チェックの実施方法と参加状況が検証されました。3

自治体モデルでは、歯科医師による従来型の歯科健診・歯科保健指導は対象4,293名に対して受診者327名、受診率7.6%でした。一方、簡易な歯科検査は7,626名に実施機会が提供され、3,107名が参加し、参加率は40.7%でした。特定保健指導と同時に実施した場合は参加率74.6%と、特に高い値が示されています。参加者満足度では、「短時間でできる」が69.5%、「身体の健診等のついでにできる」が46.9%でした。3

職域モデルでは、対象30,627名のうち11,005名が参加し、参加率35.9%、そのうち簡易歯科検査の実施率は87.0%でした。このモデル事業の範囲では、歯科医院で待つだけではなく、既存の健診機会に口腔チェックを組み込む方法が参加のハードルを下げる可能性が示唆されます。3

5. 薬局モデルと日本薬剤師会資料の位置づけ

就労世代モデル事業の次の段階として、厚生労働省は薬局等を活用した受診勧奨モデルを進めており、日本薬剤師会に対する協力依頼資料では、「全世代向けモデル歯科健康診査等実施事業(薬局等を通じた受診勧奨事業)」として、薬局の待ち時間や商業施設での健診機会などを利用し、歯科受診未受診者等に口腔チェックや啓発、受診勧奨を行うことを示した資料です。7

この資料では、薬局を単なるチラシ配布の場ではなく、口腔チェック、啓発、受診勧奨、健康イベントの場として位置づけ、個々の薬局だけでなく複数薬局や地域薬剤師会単位の参加も想定して、歯科医師会と相談・連携しながら進めるよう求めています。7

6. その後の流れと都道府県レベルの展開

国のモデル事業は、自治体や職域だけでなく、都道府県レベルの医歯薬連携や地域保健事業へと広がりつつある状況です。

たとえば愛知県は、「医歯薬連携による糖尿病重症化予防事業」として、糖尿病と歯周病の関係に関する情報提供や、地域での連携体制づくりを進めています。9

また2015年の熊本県の歯科保健資料では、調剤薬局で糖尿病関連薬の処方を受けている方に対して歯周病セルフチェックを行う取り組みが紹介されており、薬局が歯科受診から離れている慢性疾患患者と接点を持ちやすいことを生かした動きです。10

7. NTTデータ経営研究所は事業にどう関わっているか

NTTデータ経営研究所は、厚生労働省から委託を受けた調査研究・運営支援の受託者としてこの一連のモデル事業に関わっており、公表資料では、令和4年度に厚生労働省から受託した「歯科健康診査推進事業に係る調査研究等一式」に基づき、全国39自治体と94の事業所・保険者でモデル事業を展開したと説明しています。11,12

また、同社が公開している説明会案内からは、参加フィールドの募集、説明会開催、モデル事業の実施支援、質問対応など、実務のハブとして機能していることが分かり、2025年度には厚生労働省の「全世代向けモデル歯科健康診査等実施事業」に関する説明会も案内しました。12

8. 糖尿病と歯周病の関係

薬局や内科から歯科へつなぐうえで、糖尿病と歯周病の関係は、主要な医学的根拠の一つです。日本糖尿病学会の糖尿病診療ガイドライン2024では、糖尿病患者さんでは歯周病が悪化しやすく、歯周病による炎症が血糖コントロールにも影響することが整理されています。5

さらに、PubMedに掲載された2022年のCochraneレビューでは、35件のランダム化比較試験、3,249名を統合した結果、歯周治療によってHbA1cが3〜4か月後に平均0.43%低下し、6か月後で0.30%、12か月後で0.50%低下したと報告されています。13

9. 歯科医療機関連携強化加算とは

2026年度診療報酬改定では、生活習慣病管理料(I)および(II)の枠組みの中に「歯科医療機関連携強化加算」が新設されました。厚生労働省資料では、糖尿病を主病とする患者さんに対し、医師が歯周病の予防・診断・治療を目的とした歯科診療の必要性を認め、患者さんの同意を得て、歯科を標榜する他の保険医療機関への受診に必要な連携を行った場合に、60点(1点10円)を年1回算定できると示されています。4,14

この加算は歯科側ではなく医科側の評価であり、内科医が糖尿病診療の一環として歯科受診につなぐ行為そのものが制度的に評価される点が制度上の特徴です。14

3割負担の患者さんであれば、60点は600円なので自己負担は約180円になります。ただし、この加算が全国でどの程度活用され、歯科受診率や糖尿病管理をどこまで改善するかは制度開始後の検証が必要です。14

10. 患者さんにとっての意味

この一連の流れは、患者さんにとって「歯科へ行くきっかけが増える」ことを意味する流れです。職場健診で口腔チェックを受ける、薬局で糖尿病と歯周病の関係を説明される、内科で歯科受診を勧められるといった複数の入口ができることで、これまで歯科から遠かった人も受診につながりやすくなります。

とくに糖尿病のある方にとっては、歯科受診はむし歯の確認だけではなく、歯ぐきの炎症を減らし、血糖管理を補助する可能性のある行動です。これは「口の健康は全身の健康とつながっている」という考え方を、制度面とエビデンスの両方から支える動きになります。5,13

一方で、薬局や職場で行う簡易チェックは確定診断ではありません。「リスクあり」は受診のきっかけであり、「問題なし」は完全な安全証明ではないことも理解しておく必要があります。簡易スクリーニングの精度や長期効果は今後の検証が必要ですが、口腔チェックによって受診の機会が訪れれば、症状が出るまで待つより早い段階で相談できる可能性があります。7,8,10

「しばらく歯科に行っていないかも」と感じた時点が、受診のタイミングです。かわせみデンタルクリニックでは、定期健診や歯周病の精密検査についてご相談いただけます。

参考文献

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執筆・監修 中村 瞬
かわせみデンタルクリニック 院長 / 歯学博士(歯科麻酔学) / 日本歯科麻酔科学会 認定医
医療記事をほぼ毎日更新中・TV取材多数
医学的根拠(エビデンス)に基づいた正確で分かりやすい情報を患者目線でお届けしています。


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当院は、初診時にしっかりと検査を行い、歯周病虫歯根管治療から矯正歯科・小児矯正まで、丁寧にご説明のうえで治療を進めています。
治療後も再発予防に努め、安心して通える歯科医院をめざしています。