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国民皆歯科健診で厚労省が示した歯周病の唾液検査とは?検査機器・論文・精度を歯科医師向けに解説

最終更新日:2026/8/4

目次

  1. はじめに
  2. 厚労省が示した「簡易な口腔スクリーニング」とは
  3. 資料に掲載された検査機器・検査キット
  4. 検査の中心は唾液中ヘモグロビン
  5. サリバスター
  6. シルハペーパー ケンシン-ヘモグロビン
  7. ネスコート Sa-Hb オート
  8. OC-ヘモディアオートとLZテスト
  9. PTMキット
  10. 唾液潜血検査に関する主な研究
  11. 厚労省資料では妥当性をどう評価してきたか
  12. 歯科医師が押さえておきたい検査精度
  13. 検査結果から分かること・言えること・言えないこと
  14. 歯科健診として導入する際の注意点
  15. まとめ
  16. 参考文献

1.はじめに

2026年5月、厚生労働省の「歯科健診等のあり方等に関する検討会」で、「簡易な口腔スクリーニングを用いた歯科健診」が議題となりました。

資料には、唾液などを検体とする体外診断用医薬品が、実際の製品名とともに掲載されています。1

これらの検査が注目される背景には、自治体や職域で歯科健診を受ける人を増やし、歯科医院を受診していない人を受診につなげたいという政策上の目的があります。

一方で、資料を読む際には注意が必要です。

資料に掲載された検査機器・検査キットは、歯科医師による従来の歯科健診と同じ範囲を評価できるものではありません。また、掲載製品の大部分は、歯周病を確定診断するものでもありません。

この記事では、厚労省資料に掲載された各製品について、次の点を整理します。

  • 何を測定する検査なのか
  • 製品に直接関係する査読論文はあるのか
  • 関連研究から何が分かっているのか
  • その研究から何が言えて、何が言えないのか
  • 厚労省は過去に検査の妥当性をどう評価してきたのか
  • 歯科健診へ導入する場合に、歯科医師が注意すべき点は何か

2.厚労省が示した「簡易な口腔スクリーニング」とは

歯科医師による従来の歯科健診では、う蝕、歯周組織、歯列・咬合、口腔粘膜、口腔衛生状態などを総合的に診査できます。一方、自治体や職域で歯科健診を広く実施する場合には、歯科専門職の確保、時間、費用、会場などが課題になります。

そこで検討されているのが、短時間で実施できる簡易検査を入口とし、一定のリスクが認められた人を歯科医療機関へつなぐ方法です。

厚労省資料では、薬機法に位置づけられた体外診断用医薬品などによる口腔検査から、結果に応じた歯科医療機関への受診勧奨までを「簡易な口腔スクリーニングを用いた歯科健診」とする考え方が示されています。1

ただし、厚労省資料に掲載された検査の多くは、歯周病を診断する検査ではありません

唾液中のヘモグロビンなどを測定し、歯周組織に出血や組織破壊が生じている可能性を評価するスクリーニング検査です。

厚労省資料にも、現在承認されている体外診断用医薬品が評価できるのは歯周病関連のリスクであり、う蝕、咬合、口腔機能、口腔粘膜などは評価できないことが明記されています。1

3.資料に掲載された検査機器・検査キット

厚労省資料に掲載されている製品は、次のとおりです。1

製品名製造販売元検体主な測定対象判定方法
サリバスター株式会社ジーシー昭和薬品唾液ヘモグロビン試験紙の色調
シルハペーパー ケンシン-ヘモグロビンアークレイ株式会社先口吐出液ヘモグロビン専用装置
ネスコート Sa-Hb オートアルフレッサ ファーマ株式会社唾液ヘモグロビン専用装置または分光光度計
OC-ヘモディアオートⅢ‘栄研’栄研化学株式会社唾液ヘモグロビン専用装置
OC-ヘモディアオートS‘栄研’栄研化学株式会社唾液ヘモグロビン専用装置
LZテスト‘栄研’HbA0栄研化学株式会社唾液ヘモグロビン専用装置
PTMキット株式会社松風歯肉溝滲出液AST色調判定

掲載製品の大部分は、唾液中のヘモグロビンを測定する検査です。例外はPTMキットです。PTMキットは唾液ではなく、特定部位から採取した歯肉溝滲出液中のASTを測定します。したがって、これらを一括して「唾液検査」と呼ぶと、検体と測定原理の違いが見えにくくなります。

正確には、全口腔由来の唾液潜血検査と、部位別の歯肉溝滲出液検査が併記されていると理解する必要があります。

4.検査の中心は唾液中ヘモグロビン

歯周組織に炎症があると、歯肉からの出血によって唾液中にヘモグロビンが混入します。

唾液潜血検査は、このヘモグロビンを化学的方法または免疫学的方法で検出し、口腔内に出血を伴う炎症が存在する可能性を評価します。この検査が主として捉えているのは、採取時点における出血や炎症負荷です。

一方、プロービングデプスやクリニカルアタッチメントレベルのように、歯周組織の形態や過去からの組織破壊を直接測っているわけではありません。エックス線検査のように、歯槽骨吸収を評価するものでもありません。

そのため、次のような結果が生じる可能性があります。

  • 広い範囲に歯肉出血があれば陽性になりやすい
  • 歯肉炎でも陽性になる可能性がある
  • 歯周炎があっても、採取時の出血が少なければ陰性になり得る
  • 口内炎、外傷、強いブラッシングなどによる血液混入でも陽性になり得る
  • 喫煙などにより歯肉出血が抑制されている場合は、偽陰性になり得る

したがって、「唾液潜血陽性=歯周炎」ではありません

「口腔内で出血を伴う炎症などが生じている可能性があるため、歯科医師による診査が必要」と読むのが適切です。

5.サリバスター

サリバスターは、採取した唾液に試験紙を浸し、色調によってヘモグロビンを判定する検査です。専用の大型分析装置を必要とせず、その場で結果を確認できる点が特徴です。1

サリバスター系の唾液潜血検査については、地域住民を対象とした研究があります。Shimazakiらは、40歳以上の地域住民1,998人を対象に、唾液潜血検査と歯周組織検査を比較しました。

歯周状態不良の定義に対する感度は0.72、特異度は0.52でした。唾液潜血検査の結果は、BOPが認められた歯の割合や、4mm以上の歯周ポケットを有する歯の割合と関連していました。2

この研究から、唾液潜血検査が歯周組織の炎症状態と一定の関連を持つことは分かります。一方、特異度は十分に高いとはいえません。研究者も、詳細な歯周組織検査の代替として用いるには特異度が不十分であると結論づけています。2

6.シルハペーパー ケンシン-ヘモグロビン

シルハペーパー ケンシン-ヘモグロビンは、先口吐出液に試験紙を浸し、専用装置でヘモグロビン濃度を測定する製品です。結果は即時に取得できるとされています。1

SillHaを用いた研究として、唾液中の白血球エステラーゼ活性、ヘモグロビンペルオキシダーゼ活性、タンパク質、アンモニアなどと、歯周病の炎症状態を比較した報告があります。

36人を対象とした縦断研究では、SillHaで測定した白血球エステラーゼ活性が、歯周組織の炎症状態を反映する可能性が示されました。3

ただし、この研究はSillHaの複数項目測定システムに関するものです。厚労省資料に掲載されたシルハペーパー ケンシン-ヘモグロビン単独の診断精度を検証した研究ではありません

7.ネスコート Sa-Hb オート

ネスコート Sa-Hb オートは、唾液を専用液で希釈し、専用装置または所定の試薬と分光光度計を用いてヘモグロビン濃度を測定する検査です。1目視判定よりも数値化しやすく、多数の検体を処理する運用との親和性が考えられます。

一方、今回確認できた範囲では、現行のネスコート Sa-Hb オートを使用し、歯周組織検査を参照基準として感度・特異度を報告した査読論文は確認できませんでした

製品が体外診断用医薬品として承認されていることと、自治体健診や職域健診で用いた場合の臨床的有用性が十分に検証されていることは、別の問題です。

薬機法上の承認は、承認された使用目的や測定性能に関するものです。どの対象集団に、どのカットオフ値で、どの受診勧奨基準を適用すれば最適かという検診プログラム全体の妥当性まで、自動的に保証するものではありません。

8.OC-ヘモディアオートとLZテスト

栄研化学の製品として、次の3製品が掲載されています。1

  • OC-ヘモディアオートⅢ‘栄研’
  • OC-ヘモディアオートS‘栄研’
  • LZテスト‘栄研’HbA0

いずれも唾液中のヘモグロビンを専用装置で測定する方式です。OCシリーズの分析装置については、便潜血検査の分野における分析性能や検体前処理を検討した論文が存在します。4

しかし、便検体で得られた分析性能は、唾液を検体とする歯周病スクリーニングの臨床性能を保証しません。唾液と便では、検体の粘度、pH、共存物質、採取方法、ヘモグロビンの安定性が異なります。

また、歯周病スクリーニングとして評価するためには、歯周組織検査を参照基準として感度・特異度を検証する必要があります。

今回確認できた範囲では、厚労省資料に掲載された各試薬と専用装置の組み合わせについて、唾液検体を用いた歯周病スクリーニング性能を直接評価した査読論文は確認できませんでした

9.PTMキット

PTMキットは、ほかの掲載製品と検体・測定方法が異なります。唾液ではなく、特定部位から採取した歯肉溝滲出液を検体とし、歯周組織の破壊に伴って放出されるASTを測定します。採取した検体と試薬を専用トレイ内で反応させ、色調により判定します。1

PTMキットを用いた研究では、歯周基本治療や歯周外科治療の前後で、AST値とPPD、CAL、BOPなどとの関連が検討されています。国内研究では、初期治療後または歯周外科治療後にPTM値が改善した部位で、PPD、CAL、BOPも改善する傾向が報告されています。5

別の前向き縦断研究では、歯周組織再生療法を行った部位において、治療前後のPTM値とPPD、CAL、BOPとの関連が検討されました。PTM値は治療後に改善し、一部の歯周組織パラメーターとの相関が認められています。6

これらの研究から、歯肉溝滲出液中ASTが、測定した部位の炎症や組織障害を反映する補助指標になり得ることは分かります。

ただし、研究の多くは歯周病患者の特定部位を対象としたものです。一般住民を対象とした全口腔スクリーニングとは、検査目的が異なります。

PTMキットによる一部位または数部位の結果から、口腔全体の歯周病の有無や重症度を判定できるとはいえません。

10.唾液潜血検査に関する主な研究

製品名にかかわらず、唾液潜血検査という検査原理については、複数の研究が行われています。

地域住民1,998人を対象とした研究

Shimazakiらの研究では、歯周状態不良に対する感度は0.72、特異度は0.52でした。2 唾液潜血検査はBOPや歯周ポケットと関連しましたが、歯周組織検査の代替としては特異度が不十分でした。

妊婦を対象とした予備的研究

妊婦23人を対象とした研究では、唾液潜血検査の結果と歯周組織の炎症指標との関連が検討されました。7 一定の関連は示されましたが、対象者数が少なく、妊婦という限定された集団です。この研究だけでは、一般住民における診断精度や、自治体健診での有用性までは判断できません。

国保健診受診者1,888人を対象とした研究

厚労省資料では、研究用唾液検査システムSMTと、体外診断用医薬品ペリオスクリーン7を用いた研究が紹介されています。1

歯周炎に対する検査性能は、次のように報告されています。

検査感度特異度精度
SMT潜血63.5~65.6%53.6~60.0%59.5~61.6%
ペリオスクリーン773.1%40.0%56.4%

検査に対する受診者の受け入れは良好で、検査を受けないと回答した人は3~4%程度でした。一方、唾液検査の結果だけでは、その後の歯科受診や歯周病の改善には結びついていませんでした。1

ここには重要な示唆があります。

簡易検査を行い、結果を通知するだけでは、歯科受診や健康状態の改善につながるとは限りません

結果説明、受診勧奨、予約のしやすさ、歯科医療機関への接続まで含めて、制度を設計する必要があります。

11.厚労省資料では妥当性をどう評価してきたか

唾液検査の妥当性は、2026年になって初めて議論されたわけではありません。

2000~2002年度の厚生労働科学研究

「歯周疾患の予防、治療技術の評価に関する研究」では、唾液中ヘモグロビンとLDHが歯周病の病態を反映し、治療経過に伴って変動することが報告されました。1

ここから分かるのは、これらの物質に生物学的な指標としての妥当性があることです。

ただし、バイオマーカーが病態と関連することと、集団スクリーニングとして十分な感度・特異度を持つことは同じではありません。

2003~2005年度の厚生労働科学研究

「効果的な歯周疾患の判定法および治療技術の開発」では、免疫法による測定感度の向上や、唾液中ヘモグロビンの基準値として2.0μg/mLを用いる方法が検討されました。1

歯周病の発症前や、治療後の再発・進行に対する予知性も報告されています。しかし、測定法、対象集団、歯周病の定義が異なれば、同じカットオフ値をそのまま用いることはできません。現行製品すべてに、2.0μg/mLを共通基準として適用できるわけではありません。

2008~2010年度の成人歯科健診研究

成人歯科健診の研究では、質問票と簡易検査を組み合わせたスクリーニング方法が検討されました。8 質問票は重度歯周病を拾い上げる感度が高い一方、特異度が低いという結果でした。

唾液検査やLDHも歯周状態と関連しましたが、単独で確定診断に用いる検査とは位置づけられていません。

2015年の歯周病検診マニュアル改定に関する検討

厚労省の検討資料では、唾液潜血検査の利点として次の項目が整理されています。9

  • 非侵襲的である
  • 歯科専門職以外でも実施しやすい
  • 半定量的な評価が可能である
  • 質問票と組み合わせることで効率化できる可能性がある
  • 国内の研究報告や自治体での使用実績がある

一方、次の問題も明記されています。

  • 単独では感度・特異度が必ずしも高くない
  • 国際的に標準化された方法ではない
  • 喫煙者では偽陰性が生じる可能性がある
  • 検査費用が発生する

厚労省は、早い段階から利便性だけでなく、偽陽性・偽陰性と標準化の問題を認識していたことが分かります。

2017年度の職域研究

職域の1,933人を対象とした研究では、唾液潜血検査の精度は61.2%、感度63.8%、特異度58.9%でした。10

潜血とアンモニアを組み合わせても、精度は62.1%にとどまりました。潜血またはアンモニアのどちらか一方を陽性とする判定では、感度が94.5%まで上昇した一方、特異度は14.8%まで低下しました。

見逃しを減らそうとすれば、非常に多くの偽陽性が生じます。この結果は、スクリーニング基準を設定する際の典型的なトレードオフを示しています。また、対象者の22.7%が、検査前2時間以内に飲食または歯磨きをしていました。

採取条件を統一できなければ、検査精度以前に、検体採取前のばらつきが結果へ影響する可能性があります。

2019年度の研究

労働者を対象とした研究では、「要精密検査」を基準とした場合、唾液検査の感度は0.71、特異度は0.43、陽性的中率は0.65、陰性的中率は0.50でした。11

陰性的中率が0.50であれば、陰性結果だけを根拠に「歯周病リスクが低い」と説明することは困難です。

2021年度のモデル事業

職域で実施されたモデル事業では、329人に唾液検査が行われ、77.2%が陰性、22.8%が陽性でした。12

この事業からは、職域で検査を運用できることや、受診勧奨を含む事業の流れを確認できます。一方、全員に統一した歯周組織検査を行って検査結果と比較した研究ではありません。したがって、この事業は感度・特異度を評価する資料にはなりません。

実施可能性を示す事業と、診断精度を検証する研究は区別する必要があります

2024年の厚労省検討会

労働安全衛生法に基づく一般健康診断の検査項目を検討した会議では、唾液検査について、製品ごとの精度情報が十分に公開されていないことが指摘されました。13

日本歯科医師会の構成員からも、現時点では、どの製品を推奨すべきか判断できる段階ではないという趣旨の発言がありました。

また、唾液検査で評価できるのは主として歯周病リスクであり、う蝕、口腔粘膜、咬合、口腔機能などを含む歯科健診全体の代替にはならないことも確認されています。

12.歯科医師が押さえておきたい検査精度

唾液潜血検査の研究結果を見ると、感度はおおむね60~70%台、特異度は40~60%台に分布しています。

この数値を、仮想的な1,000人の集団で考えてみます。

歯周病の有病率を50%、感度70%、特異度50%と仮定すると、次のようになります。

検査結果歯周病あり歯周病なし
検査陽性350人250人
検査陰性150人250人

この条件では、陽性者600人のうち250人は偽陽性です。一方、歯周病がある500人のうち150人は検査陰性になります。

したがって、陽性者には「歯周病です」と説明するのではなく、「歯周組織に炎症や出血がある可能性があるため、歯科医療機関で確認してください」と伝える必要があります。

陰性者にも、「歯周病がないことを保証する結果ではありません」と説明しなければなりません

13.検査結果から分かること・言えること・言えないこと

分かること

  • 唾液中ヘモグロビンは、口腔内の出血を反映します。
  • 歯肉炎や歯周炎によるBOPが広範囲に存在する場合、唾液潜血が陽性になる可能性は高くなります。
  • 集団レベルでは、陽性結果と歯周組織の炎症指標との間に一定の関連が認められています。
  • 歯肉溝滲出液中ASTは、測定した歯周部位の炎症や組織障害を反映する可能性があります。

言えること

  • 唾液潜血検査は、歯科健診を受けていない人に対し、歯科受診の必要性を知らせる入口として利用できる可能性があります。
  • 検査が簡便で、歯科専門職のいない会場でも実施しやすいことは、自治体健診や職域健診における利点です。
  • 質問票、年齢、喫煙歴、自覚症状、糖尿病などの情報と組み合わせれば、単独検査より適切に受診勧奨対象者を抽出できる可能性があります。

言えないこと

唾液潜血検査だけでは、次のことは判断できません。

  • 歯周炎の確定診断
  • 歯周炎のステージ・グレード
  • 歯周ポケットの深さ
  • アタッチメントロスの程度
  • 歯槽骨吸収の有無
  • 病変部位の特定
  • う蝕の有無
  • 根尖性歯周炎の有無
  • 口腔粘膜疾患の有無
  • 咬合や口腔機能の状態
  • 治療の必要性と具体的な治療内容

また、検査陰性であっても、歯周炎を除外することはできません。

簡易検査はトリアージの補助であり、診断を完結させる検査ではありません

14.歯科健診として導入する際の注意点

採取条件を統一する必要があります

飲食、歯磨き、フロス、喫煙、口腔内の外傷、口内炎、抜歯後などの状態は、検査結果に影響する可能性があります。

製品の添付文書に従い、採取前の禁止事項、採取時間、うがいの方法、検体量などを統一する必要があります。

製品名と測定原理を確認する必要があります

過去の論文で用いられた製品と、現在販売されている製品が同一とは限りません。

同じメーカー、同じブランド名、同じ測定項目であっても、試薬、判定方法、分析装置、カットオフ値が異なれば、過去の精度をそのまま適用できません。

基準とする歯周病の定義を確認する必要があります

研究によって、歯周病の定義は異なります。

BOPの割合、4mm以上の歯周ポケットの有無、CPI、要精密検査判定、全顎診査など、参照基準が違えば感度・特異度も変わります。

論文を読む際には、数値だけでなく、何を陽性として、その数値が算出されたのかを確認する必要があります。

陰性者への説明が重要です

簡易検査の導入で特に注意したいのは、陰性結果が「歯科受診不要」という誤解につながることです。

現在の検査性能では、一定数の歯周病患者が陰性になります。

また、唾液潜血検査では、う蝕、粘膜疾患、咬合、口腔機能を評価できません。

陰性者に対しても、定期的な歯科健診が必要であることを明示する必要があります。

受診勧奨後の導線まで設計する必要があります

検査結果を通知するだけでは、歯科受診につながらない可能性があります。

  • 結果の意味を分かりやすく説明する
  • 受診が必要な理由を示す
  • 受診可能な歯科医療機関を案内する
  • 予約方法を簡単にする
  • 一定期間後に受診状況を確認する

こうした仕組みまで含めて、初めてスクリーニング事業として評価できます。

15.まとめ

厚労省資料に掲載された簡易検査の中心は、唾液中ヘモグロビンを測定する唾液潜血検査です。

PTMキットだけは、歯肉溝滲出液中ASTを測定する部位別検査です。唾液潜血検査については、歯周組織の炎症やBOPとの関連を示す研究が複数存在します。厚生労働科学研究でも、2000年代から生物学的妥当性、スクリーニング性能、運用可能性が検討されてきました。

しかし、これまでの研究では、感度・特異度は必ずしも高くありません。製品別の臨床性能が公開されていないものも多く、現行製品と過去の研究用製品を同一視することもできません。

現時点での適切な位置づけは、次のとおりです。

唾液検査は、歯周病の確定診断や歯科医師による口腔診査の代替ではなく、未受診者を歯科医療機関へつなぐための補助的なスクリーニング手段です

簡便さは大きな利点です。

ただし、その利点を実際の健康増進につなげるには、質問票、採取条件、判定基準、結果説明、受診勧奨、精密検査までを一体として設計する必要があります。唾液検査で陽性と判定された場合はもちろん、陰性であっても、歯周病やその他の歯科疾患を否定することはできません。

歯肉出血、口臭、歯の動揺などがある場合や、歯科健診を長期間受けていない場合は、歯科医院で口腔内全体の診査を受けることが重要です。

かわせみデンタルクリニックでは、歯周組織検査やエックス線検査などを組み合わせ、簡易検査の結果だけに依存しない総合的な診断を行っています。唾液検査の結果が気になる方や、歯周病の状態を詳しく確認したい方はご相談ください。

かわせみデンタルクリニックの歯周病治療予防歯科

参考文献

  1. 簡易な口腔スクリーニングを用いた歯科健診について(2026年)
    https://www.mhlw.go.jp/content/10804000/001698747.pdf
  2. Effectiveness of the salivary occult blood test as a screening method for periodontal status(2011年)
    唾液潜血検査の歯周状態スクリーニング法としての有効性
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21043793/
  3. Salivary leukocyte esterase activity by SillHa is a risk indicator of periodontal disease(2023年)
    SillHaで測定した唾液中白血球エステラーゼ活性は歯周病のリスク指標となる
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36998066/
  4. Impact of preanalytical factors on fecal immunochemical tests: need for new strategies in comparison of methods(2015年)
    便潜血免疫検査に対する分析前要因の影響と測定法比較における新たな戦略の必要性
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26044774/
  5. AST値と臨床パラメーターの歯周基本治療および歯周外科治療前後での比較(2014年)
    https://www.jstage.jst.go.jp/article/perio/56/4/56_390/_article/-char/ja
  6. Clinical usability of aspartate aminotransferase to evaluate the prognosis of periodontal regeneration therapies: prospective, longitudinal study(2018年)
    歯周組織再生療法の予後評価におけるASTの臨床的有用性:前向き縦断研究
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29256042/
  7. Feasibility study of a salivary occult blood test to correlate with periodontal measures as indicators of periodontal inflammation in a population of pregnant women(2015年)
    妊婦における歯周炎症指標としての唾液潜血検査と歯周組織所見との関連
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25807909/
  8. 成人に対する歯科健診のあり方に関する研究(2010年)
    https://mhlw-grants.niph.go.jp/project/18169
  9. 歯周病検診マニュアル改定に関する検討会資料(2015年)
    https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/7.pdf
  10. 歯科口腔保健の推進に関する研究報告書(2017年)
    https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2017/172031/201709026A_upload/201709026A0003.pdf
  11. 歯科健康診査推進事業に係る調査研究報告書(2019年)
    https://www.mhlw.go.jp/content/000715026.pdf
  12. 就労世代の歯科健康診査等推進事業報告書(2021年)
    https://www.mhlw.go.jp/content/000917427.pdf
  13. 第7回労働安全衛生法に基づく一般健康診断の検査項目等に関する検討会議事録(2024年)
    https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44378.html

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執筆・監修 中村 瞬
かわせみデンタルクリニック 院長 / 歯学博士(歯科麻酔学)/ 日本歯科麻酔科学会 認定医
医療記事をほぼ毎日更新中・TV取材多数
医学的根拠(エビデンス)に基づいた正確で分かりやすい情報を患者目線でお届けしています。


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当院は、初診時にしっかりと検査を行い、歯周病虫歯根管治療から矯正歯科・小児矯正まで、丁寧にご説明のうえで治療を進めています。
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