コラム|船橋の歯医者・矯正歯科|かわせみデンタルクリニック

初診のみ
WEB予約
電話予約
初診のみ
WEB予約

コラム

コラムCOLUMN

国民皆歯科健診の唾液検査で「陽性」と出たら、どう返すか

最終更新日:2026/10/5

簡易歯科健診で唾液検査が陽性なら、精密検査を勧めます1。けれども受診して軽い所見だった人は、次の検査を当てにしなくなるおそれがあります。結果は「病気の有無」ではなく「受診の急ぎ度」とすることで、伝える要点を揃えて届けることがこの問題を解く鍵になります。

目次
  1. 示された流れ
  2. 課題1:陽性でも、深い歯周ポケットがある人は一部
  3. 課題2:陰性の人にも、歯周病の人は残る
  4. 課題3:繰り返すうちに、検査が当てにされなくなるおそれ
  5. 課題4:陽性でも陰性でも「歯科へ」なら、検査は何を変えるのか
  6. 課題5:結果ごとに何を伝えるかが、そろっていない
  7. 提言:結果を「急ぎ度」として、要点をそろえて返す

この記事は、歯科健診を設計する保険者や自治体、企業の担当者に向けて、示された流れに残る課題とその解き方を提案します。

1. 示された流れ

中間とりまとめは簡易歯科健診を、歯科を受診していない人を歯科へつなぐ入口と位置付けています1。

中間とりまとめ(2026年7月31日)は、歯科医師の口腔診査による歯科健診が難しい場合に、体外診断用医薬品を使った歯周病のスクリーニング検査を行えるとしています1。この検査に質問票などを組み合わせたものが「簡易歯科健診」です1。現時点で想定されている体外診断用医薬品は、唾液中のヘモグロビン(血液の成分)を調べるものです1。

望ましいのは歯科医師が総合的に判断する「口腔疾患スクリーニング」で、実情に応じて歯科医師等が歯周病の疑いを評価する「歯周病スクリーニング」も行えるとしています1。次の図は、その歯周病スクリーニングで結果をどう返すかを示したものです。

歯周病スクリーニングにおける受診勧奨までの流れのイメージ
出典:歯科健診等のあり方等に関する検討会「中間とりまとめ」参考資料3(2026年7月31日)1
検査自覚症状返す内容
陽性有無を問わない口腔疾患の疑いを説明し、歯科での精密検査の受診を勧める
陰性あり口腔疾患の情報を提供し、歯科への受診を勧める
陰性なし予防法などの情報を提供し、歯科での定期健診や口腔健康管理を勧める

中間とりまとめは、陰性で症状がない人にも、この健診で評価できる口腔疾患の疑いは一部であることを十分に説明し、定期健診につなげることが重要だと述べています1。受診を勧めた人の受診状況を可能な範囲で確かめ、未受診の人へ改めて勧めることも望ましい取組として挙げています1。

結果を受け取る人の側から見ると、この流れには次の五つの課題が残ります。

2. 課題1:陽性でも、深い歯周ポケットがある人は一部

陽性を「歯周病の疑い」と伝えると、40代前半では歯科へ行った人の3人に2人が、深い歯周ポケットのない「軽い所見」を告げられる計算です。

検討会の資料には、唾液検査薬の一つであるペリオスクリーンの成績が載っています2。成績を測ったときの基準は、4mm以上の歯周ポケット(歯周組織の状態を0〜4で表すCPIコードの3と4)でした3。

指標値
感度(4mm以上のポケットがある人を陽性と判定できる割合)73.1%
特異度(ポケットがない人を陰性と判定できる割合)40.0%

出典:2,3

この成績は、検査前2時間以内に飲食や歯みがき、うがいをした人と、健全と歯肉炎と歯周炎のどの区分にも当たらない人を除いて測られています3。

陽性と出た人のうち実際にポケットを持つ人の割合(陽性的中率)は、その年代にポケットを持つ人がどれだけいるかで変わります。長野県二市の健診受診者で測られたこの成績に3、令和6年歯科疾患実態調査の年代別の保有率を当てはめて試算すると、次のようになります2,3,4。

年代4mm以上のポケットを持つ人陽性的中率100人が受けた場合
40〜44歳28.6%32.8%陽性約64人のうち、ポケットあり約21人
60〜64歳59.1%63.8%陽性約68人のうち、ポケットあり約43人

この表は別の集団で測った成績に全国の保有率を当てはめた試算で、各年代で実際に測った値とは別のものです。

同じ研究では、陽性で歯科健診を受けた1,122人のうち歯周炎が611人、歯肉炎が197人で、歯肉炎まで含めると約7割に何らかの歯周病がありました3。一方で40代前半では、陽性の3人に2人は4mm以上のポケットがない計算で、その人たちが歯科で告げられるのは歯肉炎などの軽い所見か、所見なしです。「疑い」と聞いて身構えた人ほど、「大したことはなかった」と受け止めるおそれがあります。

3. 課題2:陰性の人にも、歯周病の人は残る

60代前半では、陰性と出た人のおよそ半数が4mm以上の歯周ポケットを持つ計算になります。

同じ試算で、陰性と出たのに実際には4mm以上のポケットを持つ人(見逃された人)の割合は、40〜44歳の21.2%に対し60〜64歳では49.3%です2,3,4。中間とりまとめも、この検査は歯周病に特異的な指標ではなく、歯周病にかかっていても唾液を採った時点の状況によってヘモグロビンが検出されない場合があることに留意が必要としています1。陰性を「歯ぐきは健康」という知らせと受け取った人にとっては、定期健診へ向かう理由が薄くなるおそれがあります。

4. 課題3:繰り返すうちに、検査が当てにされなくなるおそれ

陽性の意味が伝わらないまま健診を繰り返すと、「陽性でも大丈夫だった」という経験が積み重なっていくおそれがあります。

たとえば陽性と出て歯科に行ったが軽い所見だった人や、陽性と出ても受診しなかった人が、数年後の健診でまた唾液検査を受けたとしましょう。

  • 次は陰性だった場合:「やっぱり前回も行く必要はなかった」と受け止める。
  • 次も陽性だった場合:「前回も行かなかったが問題なかった。この検査に意味はあるのか」と受け止める。

どちらの道でも、陽性の知らせが次の行動を促す力は弱まるおそれがあります。

1回の結果の段階でも、受診まで進む人は一部です。令和6年度の職域のモデル事業では、過去1年に歯科を未受診の人が検査キットやアプリによる簡易スクリーニングで「リスク高」と返されても、その後に歯科を受診したと答えたのは14.5%でした5。

41.0%が「受診するつもり」、44.5%が「受診していない」と答えています5。この「リスク高」が唾液検査の陽性と同じ意味かは、報告書からは読み取れる範囲の外です。

一方で、2型糖尿病のスクリーニングを調べた英国の研究では、陰性の結果が1年余りの間に誤った安心感を生むことは、はっきりとは確認されませんでした6。この研究が見たのは1回のスクリーニングの後の1年余りで、陽性が外れ続けた場合の受け止め方は対象の外です。歯科の唾液検査で実際に信用が失われるかどうかはこれから測る必要のある問いで、制度を始めるときから確かめる方法を組み込んでおく必要があります。

5. 課題4:陽性でも陰性でも「歯科へ」なら、検査は何を変えるのか

示された流れでは、陽性の人にも陰性の人にも、最後は歯科の受診を勧めます。

三つの出口は精密検査、受診、定期健診と、医学的には意味が違います1。それでも受ける人が歯科医院を選んで予約するという行動は、どの出口でも必要になります。

検査の価値が生まれるのは、結果によって受ける人の受け止め方と行動が変わるときです。陽性と陰性で伝わる中身が同じなら、受ける人にとって検査はどちらにしても歯科へ行くよう言われる手続きになり、陽性の知らせが持つ重みは薄れていくおそれがあります。

6. 課題5:結果ごとに何を伝えるかが、そろっていない

受診を増やす手がかりの一つは、結果を伝える場面での歯科保健指導です。そこで何を必ず伝えるかは、これから決める部分です。

モデル事業は、検査キットやアプリによる簡易スクリーニングの後の働きかけを変えて、その後の歯科受診を比べています5。

比べたこと結果
普及啓発と、歯科保健指導歯科保健指導を添えた場合、その後に歯科を受診した人のオッズが1.33倍
普及啓発の方法オンライン講義で行った場合、動画視聴で行った場合に比べて受診者の割合が有意に増加(報告書に割合の数値の記載なし)
普及啓発の時期(受診したと答えた割合)事前46.1%、当日の検査前46.9%、結果を返した後39.8%(顕著な差はないとの評価)

出典:5

この歯科保健指導には、検査結果の説明と予約の支援が含まれます5。

中間とりまとめは受診勧奨と歯科保健指導の方法として、歯科医師や歯科衛生士などによる対面やオンラインでの実施と、パンフレットや動画の活用を挙げています1。歯科保健指導は歯科医師や歯科衛生士が行うことが望ましいとし、すべての歯科保健事業の担当者が使える歯科保健指導マニュアル等の整備も求めています1。唾液を自宅で採って郵送する方式では、結果の通知や受診勧奨、歯科保健指導は後日になります1。

検討会の第1回(2026年5月11日)では、中野構成員が「一連の流れについての歯科医師の関わり方がどうなっているかということについては整理が必要かと思います」と述べています7。伝える方法は人、紙、動画と複数あり、示されているのは結果ごとに返す内容の大枠までです。説明で必ず押さえる要点や言葉は、これから決める部分です。

課題はほかにもあります。判定不能の場合や再検査の扱いは中間とりまとめの定めの外にあり、検査の判定基準や運用条件、効果的な受診勧奨の方法は引き続き検証する課題に挙げられています1。受診状況の確認と未受診者への再勧奨についても、中間とりまとめの書き方は「望ましい」にとどまり、誰がいつ行うかは空欄のままです1。

7. 提言:結果を「急ぎ度」として、要点をそろえて返す

陽性を「歯周病の疑い」として返すと、軽い所見だったときに検査が信用を失うおそれがあります。

歯科医師以外の人が結果を返す場面が多い歯周病スクリーニングを念頭に、結果を「病気があるかないか」ではなく「どれくらい急いで歯科で確かめるか」として返すことを提言します。陽性は、歯科で早めに確かめる順番が来たという知らせです。確かめた結果が軽い歯肉炎や所見なしでも陽性の知らせはそれで役目を果たしており、手入れを始めて次の定期健診の時期を決める機会になります。

陰性は、この検査では拾えなかったという知らせです。陰性の人には、歯科の定期健診で確かめてもらいます。

そのうえで、結果ごとに必ず伝える要点を決め、誰が伝えても同じ要点が伝わるようにそろえます。中間とりまとめが求める歯科保健指導マニュアル等に、この要点を入れておくのが近道です。

結果必ず伝える要点言葉の例
陽性診断ではないこと。早めに確かめる理由。軽い所見でも、確かめることに意味があること「唾液に血液の成分が見つかりました。歯周病かどうか、どの程度かは、歯科で確かめて初めて分かります。軽い所見でも、早めに分かれば手入れを始められます。早めに歯科で確かめてください」
陰性で、症状がある検査とは別に、症状そのものが受診の理由になること「検査の結果とは別に、その症状は歯科で診てもらう理由になります」
陰性で、症状がない歯周病がないという意味ではないこと。この検査で分かる範囲は限られること。定期健診で確かめること「今回の検査では、歯周病のサインは見つかりませんでした。ただし、歯周病があっても陰性になることがあります。むし歯も、この検査では分かりません。症状がなくても、歯科の定期健診で確かめてください」

言葉は複数の案を比べて選ぶのが近道です。モデル事業が働きかけの違いを比べたのと同じやり方で結果を返す文面を複数用意し、受診した割合と、次の健診で陽性だった人が受診するかを比べれば、響く言葉を選べます。

年齢や性別、職種、生活習慣によっても、伝える中身や響く言葉は違うものです。全員に一律の文面を読み上げるだけなら、人を配置する意味は薄れます。要点はそろえたうえで言葉は相手に合わせて選べるようにしておくことが、人が伝える意味になります。

歯科医師や歯科衛生士のような口の専門職がいない現場でも、伝える人を確保できるなら、その人が要点を押さえて伝えられるよう工夫することが大切です。モデル事業の報告書も、歯科保健指導を担う歯科衛生士の確保を課題に挙げており5、要点と言葉の例を手元に用意しておくことは、その工夫の一つになります。自宅で採る方式では、同じ要点を紙や動画で届けることで、説明する人の力量によるばらつきを小さくできると考えます。

モデル事業の数値は、限られた現場での実証の結果です。過去1年に歯科を未受診でリスクが高いと判定された人の受診14.5%を出発点に、要点と言葉を改めながら、この数値を上回ることを目標に置きます。比べるときの条件は、受診を尋ねる聞き方と、結果を返してからの期間をそろえることです。

そのためには、結果を返した人が実際に歯科を受診したかどうかを受け取る仕組みも必要です。中間とりまとめは、受診のときに簡易歯科健診の結果に基づく受診であることが歯科医療機関に伝わるようにすることが望ましいとしています1。示されているのは歯科医療機関に伝えるところまでです。この機会に、受診したかどうかを健診を行った側へ返す仕組みも合わせて作れば、実際の受診率を測りながら言葉を改めていけます。

陽性をどう返すかは、検査の意味そのものに関わる問いです。陽性を「歯周病の疑い」と返し続ければ、軽い所見に終わるたびに検査が当てにされなくなるおそれがあります。陽性は「早めに確かめる順番が来た」、陰性は「この検査では拾えなかった。定期健診で確かめる」と急ぎ度の差として示し、必ず伝える要点をそろえて相手に響く言葉で返すことが、唾液検査を国民皆歯科健診の入口として生かすことに繋がります。

関連記事

参考文献

  1. 厚生労働省 歯科健診等のあり方等に関する検討会「中間とりまとめ」(2026年7月31日、全14頁。参考資料1〜4を含む)
  2. 厚生労働省「歯科健診等のあり方等に関する検討会 第1回 資料3『簡易な口腔スクリーニングを用いた歯科健診について』」(2026年5月11日)
  3. 栗田浩(研究代表)「国保特定健診における唾液検査システムを用いた歯科検診の有用性に関する検討(標準的な成人歯科健診プログラムとの比較および全身の健康状態との関連)」厚生労働科学研究費補助金 総合研究報告書(平成29〜30年度)。CPIコードの判定は10頁、4mm以上のポケットとの対応は12頁、感度・特異度と陽性者の健診結果は表7(30頁)
  4. 厚生労働省「令和6年 歯科疾患実態調査」結果の概要(令和7年6月26日公表)
  5. 厚生労働省「就労世代の歯科健康診査推進事業に関する実証事業 モデル事業の成果報告(職域)」(令和6年度、全27頁)
  6. Paddison CAM, Eborall HC, Sutton S, et al. Are people with negative diabetes screening tests falsely reassured? Parallel group cohort study embedded in the ADDITION (Cambridge) randomised controlled trial. BMJ. 2009;339:b4535. DOI: 10.1136/bmj.b4535
  7. 厚生労働省「歯科健診等のあり方等に関する検討会 第1回 議事録」(2026年5月11日)


執筆・監修 中村 瞬
かわせみデンタルクリニック 院長 / 歯学博士(歯科麻酔学)/ 日本歯科麻酔科学会 認定医
医療記事をほぼ毎日更新中。TV取材多数
医学的根拠(エビデンス)に基づく、正確で分かりやすい情報を患者目線でお届けします。


かわせみデンタルクリニック|船橋の歯医者・矯正歯科

所在地:〒273-0005 千葉県船橋市本町6丁目3−20 ベルヴィル船橋本町 1階B号室
電話番号:047-409-2988
JR・東武鉄道「船橋」駅 徒歩4分
平日 9:00 ~ 13:00 14:30 ~ 18:00
土曜 9:00 ~ 13:00 14:00 ~ 17:00
(休診:日曜・月曜・祝日)

かわせみデンタルクリニックの看板と建物外観

当院は、初診時にしっかりと検査を行い、歯周病・虫歯・根管治療から矯正歯科・小児矯正まで、丁寧にご説明のうえで治療を進める方針です。
治療後も再発予防に努め、安心して通える歯科医院を目指します。