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虫歯の原因は細菌だけじゃなかった? 東北大学が発見した「カビ」と虫歯の意外な関係

「虫歯」はミュータンス菌という1種類の菌が原因でなく、様々な細菌によって引き起こされることが分かっています。[1]

 しかし、最近の研究、特に東北大学大学院歯学研究科の研究によって、私たちの口の中にいる「カンジダ菌」というカビ(真菌)の一種も、虫歯の悪化に関わっている可能性が明らかになってきました。これは、これまでの虫歯予防の常識を覆すかもしれない、驚きの発見です。[2]

そもそも「カンジダ菌」って何?

カンジダ菌は、実は私たちの口の中や腸などに普段から住んでいる「常在菌」の一種です。健康な状態であれば、特に悪さをすることはありません。しかし、体調を崩して免疫力が落ちたり、抗生物質を長く使ったり、口の中が不潔になったりすると、異常に増殖して「口腔カンジダ症」という病気を引き起こすことがあります。口の中に白い苔のようなものができたり、赤くなってヒリヒリ痛んだりするのが特徴です。

 東北大学が突き止めたカンジダ菌と虫歯の関係

 東北大学の研究グループは、このカンジダ菌が虫歯にどうかかわっているのかを詳しく調べ、主に次の2つの重要な発見をしました。

  1. 酸素が少なくても「酸」を作り、歯を溶かす!
    虫歯菌は、歯垢(プラーク)の中のような酸素が少ない場所でも、糖分を分解して歯を溶かす「酸」を作り出します。驚くことに、東北大学の研究で、本来は酸素がある場所を好むカンジダ菌も、酸素が少ない環境(嫌気環境)で活発に「酸」を作り出し、歯を溶かす力を持っていることが初めて確認されました。これは、歯垢の奥深くなど、これまで見過ごされがちだった場所でも、カンジダ菌が虫歯を進行させる可能性があることを示しています。
  2. 虫歯予防の味方「フッ素」が効きにくい!
    虫歯予防といえば「フッ素」が有名です。フッ素は歯を強くするだけでなく、虫歯菌が酸を作るのを邪魔する働きも持っています。ところが、東北大学の研究によって、カンジダ菌はこのフッ素に対して非常に強い抵抗力(耐性)を持ち、フッ素を使っても酸を作るのを止めにくいことが判明したのです。研究チームがカンジダ菌を壊して内部の酵素を調べたところ、酵素自体はフッ素で働きが抑えられることが分かりました。しかし、生きているカンジダ菌は何らかの仕組みでフッ素が菌の中に入るのを防いでいる可能性があるようです。これは、従来のフッ素頼みの虫歯予防だけでは、カンジダ菌が関わるタイプの虫歯には効果が十分ではない可能性を示唆する、衝撃的な結果です。

虫歯菌との協力関係も

他の研究では、カンジダ菌が虫歯菌(ミュータンス菌)と協力関係にあることも指摘されています。カンジダ菌がいると、虫歯菌はより強力でネバネバした歯垢(バイオフィルム)を作りやすくなり、その中で酸をどんどん作り出してしまいます。まさに「悪のタッグ」と言えるかもしれません。特に、小さなお子さんのひどい虫歯(重症早期幼児う蝕:S-ECC)では、この二つの菌が一緒に見つかることが多いという報告もあります。

どんな人が注意すべき?

東北大学の研究結果を踏まえると、以下のような方は特にカンジダ菌による虫歯リスクに注意が必要かもしれません。

  • 小さなお子さん(特にひどい虫歯がある場合)
  • 免疫力が低下している方(病気療養中、高齢者など)
  • 唾液の量が少ない方(ドライマウス)
  • 入れ歯を使っている方(清掃が不十分な場合)
  • 抗生物質やステロイド薬を長期間使用している方

私たちにできる予防策は?

カンジダ菌も虫歯に関係しているとなると、これまでの虫歯予防に加えて、カンジダ菌を増やさないための対策も重要になってきます。東北大学の研究は、真菌(カビ)も視野に入れた新しい虫歯予防法の開発につながる可能性がありますが、現時点で私たちができることとしては、基本的な口腔ケアをより一層徹底することが大切です。

  • 毎日の丁寧な歯磨き: 歯垢をしっかり除去することが、虫歯菌だけでなくカンジダ菌の増殖も抑えます。
  • デンタルフロスや歯間ブラシの活用: 歯と歯の間など、歯ブラシだけでは届きにくい場所の汚れもしっかり落としましょう。
  • 甘いもののコントロール: 糖分は虫歯菌だけでなく、カンジダ菌のエサにもなります。だらだら食べたり飲んだりするのは避けましょう。
  • 入れ歯の清掃: 入れ歯を使っている方は、毎日きれいに洗浄し、清潔に保ちましょう。
  • 唾液を出す工夫: よく噛んで食べる、水分をこまめに摂るなどして、お口の乾燥を防ぎましょう。
  • 定期的な歯科検診: プロによるチェックとクリーニングで、お口の健康状態を確認し、問題を早期に発見・対処してもらいましょう。

まとめ

虫歯の原因は、単に虫歯菌だけではないことが、東北大学の研究などによって明らかになってきました。口の中に普段からいるカビの一種、カンジダ菌も、特に酸素の少ない場所で酸を作り、フッ素にも抵抗性を示すなど、虫歯を悪化させる新たなリスク要因として注目されています。

この新しい発見は、私たちに日々の口腔ケアの重要性を改めて教えてくれます。虫歯菌だけでなく、カンジダ菌のような真菌の増殖も抑えることを意識して、丁寧な歯磨きや定期的な歯科検診を続け、お口の健康を守っていきましょう。もし、お口の中に気になる症状があれば、早めに歯科医師に相談することをおすすめします。

引用文献

  1. 虫歯の原因はミュータンス菌だけじゃない!最新研究から分かること |船橋の歯医者・矯正歯科|かわせみデンタルクリニック
  2. 「カンジダ菌」による新たなむし歯リスクが明らかに … | プレスリリース・研究成果 | 東北大学 -TOHOKU UNIVERSITY-