コラム|船橋の歯医者|かわせみデンタルクリニック

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歯科医学におけるアスリートのパフォーマンス向上、安全性について

日本歯科医学会誌 座談会・特別企画号(2017)「 2020年東京に五輪の華ひらく アスリートの最大能力発揮支援に歯科界が動く!」[1]

こちらの記事から、気になった部分をまとめました。

アスリートのパフォーマンス向上への貢献

咀嚼機能の維持と身体機能:

  • 適切な咀嚼機能は、食事を楽しみ、栄養吸収を高めることでアスリートのコンディショニングを支えます。特に体重制限のある競技では、よく噛むことが効率的な栄養摂取に繋がります
  • 健康な口元は精神面にも良い影響を与え、ファンの獲得にも繋がります。
  • 20本以上の歯を保つことは、活動範囲を広げ、運動への意欲を高めることにも関連します。

咬合と運動能力・身体バランス:

  • 咬合の安定は重心動揺を抑制し、平衡機能や競技能力、転倒予防に大きく関わります。特に臼歯のバランスは頭部の固定に不可欠です。
  • 歯の欠損などにより咬合接触面積が狭い場合、重心動揺が大きくなることが示されています。
  • 体操競技、フィギュアスケート、射撃、アーチェリーなど、重心の安定が求められる競技では、適切な咬合関係の維持が極めて重要です。

噛みしめと筋力発揮:

  • スポーツクレンチング(食いしばり)は、静的筋力を4%〜12%向上させ、低・中速域の動的筋力やパワーも増強させる効果があります。
  • 一方で、高速域の動きにはマイナスに作用する場合もあり競技特性に応じた適切な噛みしめ方が重要です。
  • 強く噛むことで、離れた部位の筋肉の興奮性を高める「遠隔促通効果」も確認されています。

図表は引用文献[1]より引用

姿勢と顎位:

  • 噛み合わせは、姿勢反射と連動し、アスリートが最高のパフォーマンスを発揮するための最適な下顎位を取ることに影響します。瞬時に最適な顎位に移動できる歯列と顎関節が重要です。
  • マウスガードの装着により、体幹筋力発揮時の咀嚼筋の活動量が減少し、無駄な筋力を使わずに顎を固定できる可能性が示唆されています。

歯列矯正の影響:

  • 歯並びの改善が身体バランスの向上や怪我の減少に繋がった事例(マラソン選手)や、パフォーマンス向上を実感した事例(パラリンピック走り幅跳び選手)が報告されており、咬合力とスポーツ能力の関連性も示されています。

アスリートの安全確保と歯科疾患の予防・治療

マウスガードの役割と研究

  • マウスガードは、歯科外傷の予防だけでなく、精神的な安心感をもたらし、顎の固定を補助して無意識にパフォーマンスを向上させる効果も確認されています。
  • シース効果」(鋭利な歯から軟組織を守る作用)も重要視されており、薄いマウスガードでも効果が期待できます。
  • 脳震盪の緩和についても研究が進められており、マウスガード装着が頭部の加速度を抑える可能性が示されています。
  • カスタムメイドのマウスガード着用による外傷リスク低下に関する大規模疫学研究が進められており、そのエビデンスを世界に発信することが期待されています。
  • 義務化されていない競技を含め、マウスガードの普及啓発は喫緊の課題です。

歯科疾患の予防と治療:

  • 競技中の痛みや集中力の低下を防ぐため、事前の歯科治療が不可欠です。
  • う蝕、歯周病、顎関節症など、様々な歯科疾患がパフォーマンスを低下させるため、定期的なチェックと適切な治療が求められます。
  • 気圧性外傷や、スポーツドリンクによる酸蝕症、長年の噛みしめによる「スポーツクレンチング障害」への注意も促されています。
  • トップアスリートはJOCのメディカルチェックで歯科チェックが義務付けられ、組織的な健康管理が進んでいます。

研究の課題と今後の方向性

  • 歯科と運動能力・重心動揺に関する研究は多数あるものの、スポーツの成果には複雑な要因が絡むため、より明確なエビデンスの確立が求められています。
  • 今後は、具体的な症例研究やランダム化比較研究を通じてエビデンスを増やす必要があります。
  • スポーツ科学の専門家、トレーナー、整形外科医、脳神経外科医、栄養士など、多職種との連携を強化し、チームで選手をサポートする体制構築が不可欠です。
  • 日本歯科医学会は、研究費の獲得と横の連携を強化し、歯科界全体で大規模な研究に取り組むことを目指しています。
  • 高齢者の転倒防止や生活動作改善への歯科の貢献、いきみ、呼吸法、睡眠といった新たな観点からのスポーツ歯科研究も今後の重要なテーマとされています。

引用文献

日本スポーツ歯科医学会 (2016). 日本歯科医学会誌:35,7 − 32,2016 ◦ 11 (座談会). https://www.jads.jp/assets/pdf/publication/jjads/jjads_j_zadankai.pdf