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歯の黒い着色汚れ「外因性ブラックステイン」とは?虫歯との違いと対処法

目次
  1. 外因性ブラックステイン(BS)とは
  2. BSが生じる主な要因
  3. BSと虫歯リスクの関係
  4. 家庭でできるセルフケア
  5. 歯科医院での確認とプロケア
  6. 受診の目安
  7. まとめ

1. 外因性ブラックステイン(BS)とは

お子さんの歯ぐきに近い部分へ黒い点や細い線が並ぶことがあります。この黒い着色は、歯の表面につく外因性ブラックステインかもしれません。この記事では、外因性ブラックステインをBSと呼びます。

BSは歯の中が黒くなっている状態ではなく、歯の表面に黒い沈着物がついている状態です。歯ぐきに沿って点状や線状に出ることが多く、乳歯にも永久歯にもみられます。1

ただし、黒く見えるものがすべてBSとは限りません。虫歯、歯石、飲食物や薬剤による着色、歯の内部から起こる変色でも黒く見えることがあるため、見た目だけで決めつけず、歯科医院で確認することが大切です。1

2. BSが生じる主な要因

BSの原因は、まだ一つに決まっているわけではありません。それでも研究から分かってきていることはあり、BSは単なる食べ物の着色というより、歯の表面にできる特殊なプラーク、口の中の細菌、鉄を含む成分が関係する着色と考えられています。

主な要因として、次のような説や報告があります。

  • 色素産生菌の優勢:総説では、Actinomyces属やPrevotella melaninogenicaなどの色素を作る細菌が、BSに関係する候補として挙げられています。1
  • 歯垢の中身の違い:未就学児を調べた研究では、BSがある子どもとない子どもで、歯垢の細菌構成や鉄に関わる特徴が違っていました。2
  • 硫化水素と鉄成分の反応:細菌が作る硫化水素と、唾液や歯ぐきの溝に含まれる鉄成分が反応し、黒い鉄化合物が歯につくという説明があります。1
  • 石灰化しやすいプラーク:BSは、歯の表面についたプラークが硬くなりやすいため、いつもの歯磨きだけでは落ちにくいことがあります。1

つまりBSは、「歯磨き不足だけ」で起こるものではありません。色素を作る細菌を含むプラーク、唾液や歯ぐきの溝の成分、鉄を含む成分などが重なってできる着色と考えると、保護者の方にも理解しやすいと思います。

一方で、「この菌がいるから必ずBSになる」「鉄剤や特定の食品だけが原因になる」とまでは言い切れません。研究によって見つかる菌の種類には違いがあり、BSは一つの原因だけで説明できる単純な着色ではないとみるのが自然です。

3. BSと虫歯リスクの関係

BSには少し意外な特徴があり、BSがある子どもでは、BSがない子どもより虫歯が少ない傾向が報告されています。3, 4

2022年のメタ解析では、複数の研究結果をまとめたところ、次のような差がありました。4

  • 虫歯がある子どもの割合が約30%少なく見える
  • 虫歯になった歯の本数が平均で約1本少ない
  • 虫歯になった歯面数が平均で約2面少ない

ここでいう「約30%少ない」は、BSがある子どもたちと、BSがない子どもたちを集団として比べた数字です。目の前のお子さんの虫歯リスクをそのまま言い当てるものではなく、BSが虫歯を防ぐと証明した結果でもありません。分かっているのは、「BSがある子どもの集団では、虫歯が少ない傾向がみられた」というところまでです。

黒い着色がBSに見えても、虫歯ではないと自己判断するのは危険です。BSか虫歯かを確認したうえで、フッ化物配合歯磨剤や定期的なチェックなど、普段の虫歯予防を続けましょう。

4. 家庭でできるセルフケア

家庭で大切なのは、黒い部分を無理に削り落とすことではなく、歯と歯ぐきを傷つけずに毎日の口腔ケアを続けることです。

  • 年齢に合った歯ブラシを使う:力を入れすぎず、歯ぐきに近い部分も丁寧に磨きます。
  • フッ化物配合歯磨剤を使う:年齢に合った量と濃度で使うことが勧められています。5
  • 歯と歯の間も清掃する:歯並びや年齢に応じて、フロスなどを使います。
  • 色の濃い飲食物の後は水で流す:気になる場合は、食後に水で口をすすぐとよいでしょう。
  • 爪や器具でこすらない:黒い部分を爪、金属器具、強い研磨剤で削ると、歯や歯ぐきを傷つけるおそれがあります。

BSは通常の歯磨きだけでは落ちにくいことがあるため、落ちないからといって清掃不足と決めつける必要はありません。一方で、BSに見えて虫歯や歯石が隠れていることもあるため、気になる黒い着色は一度歯科医院で確認すると安心です。

5. 歯科医院での確認とプロケア

歯科医院では、まず黒い部分がBSなのか、虫歯や歯石など別の状態なのかを確認します。BSと判断され、見た目が気になる場合は、歯面清掃や研磨で落とせることがあります。1

歯科医院で行う対応は、主に次のとおりです。

  • 歯面清掃:歯の表面についた汚れや着色を確認しながら清掃します。
  • 研磨:必要な範囲で、歯の表面を磨いて着色を落とします。
  • 定期的な確認:BSは再びつくことがあるため、虫歯や歯ぐきの状態も一緒に見ていきます。

ただし、強い処置を何度も繰り返せばよいわけではありません。超音波器具や研磨をやりすぎると歯の表面を傷つける可能性があるため、着色の範囲、歯の状態、本人の希望を確認しながら、必要な方法と間隔を選ぶことが大切です。1

重度で繰り返し出てくる着色に対して、光線力学療法を試してみた症例報告もあります。これは10歳の子ども1人に行われた報告で、処置後7か月は再発しなかった一方、処置中に脱灰(歯の表面が少し溶けた所見)と知覚過敏がありました。6 こうした報告は「特殊な方法が試された例」として参考にはなりますが、一般的に勧められる標準治療や、再着色を防げる治療として受け止める段階ではありません。

6. 受診の目安

黒い着色だけで痛みや腫れがない場合、急いで受診が必要とは限りません。それでも、初めて気づいた黒い部分や、広がっているように見える変色は、一度歯科医院で確認すると安心です。

次のような場合は、BSと決めつけず早めに相談してください。

  • 歯が痛い、しみる
  • 黒い部分に穴や欠けがあるように見える
  • 黒い部分が急に広がってきた
  • 歯ぐきの腫れ、出血、膿がある
  • 顔の腫れや発熱を伴う
  • 見た目が気になり、本人が口元を隠すなど心理的な負担がある

お子さんの黒い着色や虫歯との見分け方については、小児歯科でご相談いただけます。毎日の歯磨きや定期的な確認については、予防歯科もご参照ください。

7. まとめ

BSは、歯の表面に黒い点や線として現れる着色です。色素を作る細菌を含むプラーク、唾液や歯ぐきの溝の成分、鉄を含む成分などが関係すると考えられています。

BSがある子どもでは、虫歯が少ない傾向も報告されています。たとえば、虫歯がある子どもの割合が約30%少なく見える、虫歯になった歯の本数が平均で約1本少ない、といった結果です。

ただし、BSが虫歯を防ぐと証明されたわけではなく、黒い着色がBSなのか虫歯なのかも見た目だけでは判断できないことがあります。無理にこすって落とそうとせず、気になる場合は歯科医院で確認しましょう。

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参考文献

参考文献を表示する
1.
黒色着色:一般歯科医向け概説
Janjua U, Bahia G, Barry S. Black staining: an overview for the general dental practitioner. Br Dent J. 2022;232(12):857–860.
2.
未就学児のブラックステインに関する疫学およびマイクロバイオーム解析
Zhang Y, Yu R, Zhan JY, et al. Epidemiological and Microbiome Characterization of Black Tooth Stain in Preschool Children. Front Pediatr. 2022;10:751361.
3.
小児の色素性ブラックステインと虫歯の関連:系統的レビューとメタ解析
Borrell-Garcia C, Boo-Gordillo P, Guinot-Barona C, et al. Association Between Chromogenic Black Stain and Dental Caries in Children: A Systematic Review and Meta-Analysis. Children (Basel). 2025;12(12):1624.
4.
小児のブラックステインと虫歯の少なさとの関連:系統的レビューとメタ解析
Mousa HRF, Radwan MZ, Wassif GOM, et al. The association between black stain and lower risk of dental caries in children: a systematic review and meta-analysis. J Egypt Public Health Assoc. 2022;97(1):13.
5.
フッ化物配合歯磨剤の推奨される利用方法について(普及版)
日本口腔衛生学会、日本小児歯科学会、日本歯科保存学会、日本老年歯科医学会. 学会資料. 2023.
6.
光線力学療法による歯の黒色着色除去:臨床および微生物学的解析
Pessoa L, Galvão V, Damante C, et al. Removal of black stains from teeth by photodynamic therapy: clinical and microbiological analysis. BMJ Case Rep. 2015;2015:bcr2015212276.


執筆・監修
中村 瞬
かわせみデンタルクリニック 院長 / 歯学博士(歯科麻酔学)/ 日本歯科麻酔科学会 認定医
医療記事をほぼ毎日更新中・TV取材多数
医学的根拠(エビデンス)に基づいた正確で分かりやすい情報を患者目線でお届けしています。


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