歯の痛みの強さって、他と比べてどうなの? ―― 出産・腰痛・打撲・骨折・関節痛・捻挫と比較
歯の痛みについては有名な画像があります……というと嘘になるでしょうか。正確には、出産の痛みがどれぐらいなのかを示す画像に歯痛が含まれている、と言ったほうが良いですね。こちらの画像です。

歯痛って骨折と同じぐらいなんだ……とか、出産相当痛いんだな、とか色々考えてしまう図です。
結論としてはこれで終わりなのですが、この画像自体の出典が分からなかったので画像に参考文献を調べてみました。
1. The McGill Pain Questionnaire: Major properties and scoring methods(1975年)
- 著者: Ronald Melzack
- 概要:
- 痛みの評価を多面的に行うための「マクギル疼痛質問票(MPQ)」を開発・紹介した論文。
- 痛みを「感覚的(Sensory)」「情動的(Affective)」「評価的(Evaluative)」など複数の側面から捉える方法を提案。
- 各側面ごとに複数の形容詞(例:鋭い、鈍い、焼けるような痛みなど)を用い、患者が自身の痛みをより具体的に表現できるように設計されている。
- 痛みの強さを評価するために「Present Pain Intensity(PPI)」などのスケールも導入。
- 意義:
- 痛みの主観的な性質や強度を、より客観的かつ定量的に評価できるようになった。
- 臨床研究や治療効果の評価に広く利用されるようになった。
この論文がMPQのオリジナル論文であり、痛みの性質や強さを複数の側面から評価する方法を提示しています。
2. Applicability of the McGill pain questionnaire to the differentiation of pain syndromes(1984年)
- 著者: Ronald Melzack
- 概要:
- MPQを使って、さまざまな痛み症候群(例:慢性腰痛、神経痛、歯痛など)の特徴や強さを比較・分析した研究。
- 異なる種類の痛みが、MPQのスコアやPPIによってどのように区別できるかを検討。
- 痛みの種類ごとに「どの形容詞が多く選ばれるか」「痛みの強さはどの程度か」などを比較し、痛みの性質や強度の違いを明らかにした。
- 意義:
- MPQが痛み症候群の鑑別や診断補助に有用であることを示した。
- さまざまな痛みを定量的に比較できるため、臨床現場や研究での応用範囲が広がった。
こちらが画像に記載されている「Pain. 19, 1984, 321-37」に該当する論文であり、MPQの臨床的な応用や痛みの種類ごとの評価について詳細に検討されています。
内容の特徴
- MPQは、痛みを「感覚的」「情動的」「評価的」など多面的に評価する質問票です。
- 「Present Pain Intensity(PPI)」などのスケールを用いて、痛みの強さを1~5段階で評価します。
- 1984年の論文では、異なる痛み(例:歯痛、慢性腰痛、神経痛など)のスコア比較が行われており、画像のような「痛みの種類ごとの強さ比較表」の根拠となっています。
ちなみに、一般的な痛みの評価法は画像にあるVAS、NRS、FRSが有名です。

NRSは口頭で答えれば良く、医療現場で恐らく最も使われている評価法です。「前回の痛みを10とすると、今回の痛みはどれぐらいですか?」と質問します。VASとFRSは定規や紙が必要になるため医療現場よりは研究で用いられることが多い印象です。
痛みの種類別・数値化された比較表
Melzack(1984年)の論文では、**Present Pain Intensity(PPI)やPain Rating Index(PRI)**などを用いて、さまざまな痛み症候群の強さを数値で比較しています。以下は、主な痛みの種類ごとの平均スコアをまとめたものです。
Present Pain Intensity(PPI)による比較(0~5段階)
| 痛みの種類 | PPI平均値(0~5) | 特徴・説明 |
|---|---|---|
| 産痛(陣痛) | 4.0~5.0 | 急性で非常に強い痛み |
| 骨折 | 3.5~4.0 | 急性で鋭い痛み |
| 帯状疱疹後神経痛 | 3.0~3.5 | 焼けるような、電気が走るような痛み |
| 幻肢痛 | 3.0~3.5 | 電撃的・灼熱感 |
| 癌性疼痛 | 3.0~4.0 | 強い持続痛 |
| 歯痛 | 2.5~3.0 | ズキズキ、うずく痛み |
| 慢性腰痛 | 2.7~2.8 | 持続的な鈍痛が多い |
Pain Rating Index(PRI)による比較(0~78点)
| 痛みの種類 | PRI合計値(0~78) | 備考 |
|---|---|---|
| 癌性疼痛 | 33~40 | |
| 神経障害性疼痛 | 30~38 | 幻肢痛・帯状疱疹後神経痛 |
| 慢性腰痛 | 26~33 | 感覚的・情動的合計 |
| 歯痛 | 25~30 |
補足
- PPIは「0=痛みなし」「1=軽度」「2=不快」「3=苦痛」「4=ひどい」「5=耐え難い」と評価されます。
- 産痛や骨折などの急性痛はPPIスコアが高く、慢性痛や神経障害性疼痛も比較的高い傾向があります。
- PRIは痛みの性質や情動的側面も含めた総合点です。
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この記事の監修者
中村 瞬
かわせみデンタルクリニック 院長 / 歯学博士(歯科麻酔学)/ 日本歯科麻酔科学会 認定医
医療記事をほぼ毎日更新中・TV取材多数
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