コラム|船橋の歯医者・矯正歯科|かわせみデンタルクリニック

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歯科診療報酬の国際比較 [1976年-2023年]

みんな大好き、歯科診療報酬と国際比較のはなし

1958年の国民健康保険法の制定により 1961年から全国の市町村で健康保険事業が開始、国民皆保険導入となりました。1959年の時点では、補綴給付をしていなかった保険組合は53.3%にも達していたようです。(『社会保険歯科医療小史』榊原悠紀田郎)

公的保険診療による日本の歯科治療費は、1970年代以降、長期にわたって諸外国と大きな差が続いてきました。以下では、各年代のデータを項目ごとに掘り下げ、国内外の治療費水準の違いと時間的推移をみていきます。(※すべての表の単位は円)

1976年

表1: 1977年5月11日号『日本歯科新聞』に掲載された歯科診療報酬国際比較

項目日本
(1976年)
スウェーデン
(1974年)
オーストラリア
(1974年)
アメリカ
(1973年)
初診9003,7002,6001,500
緊急処置1608003,000
歯内療法2,00028,80033,80038,700
抜歯1,1004,21011,500
鋳造冠4,92032,00043,00032,000
総義歯10,48039,20041,50062,900
局部義歯6,97053,60029,00055,400

– 保険診療適用 vs 自由価格制

  • 日本の初診料900円に対し、スウェーデン3,700円、オーストラリア2,600円、米国1,500円と開業医・専門医の自由価格制国でも日本が最低水準。

– 歯内療法・補綴

  • 日本の歯内療法2,000円は各国の10分の1以下(米国38,700円、豪33,800円)。
  • 総義歯10,480円も米国62,900円、豪41,500円の約1/4以下。

当時の背景

1976年(昭和51年)3月に中医協は「歯科差額徴収は材料費に限定する」との答申を行い、同年8月に差額徴収制度は全面廃止となっています。詳細は 歯科における差額徴収制度の歴史と背景 を参照して下さい。

1970年代の日本では、国民皆保険制度が定着して間もなく、広く安価な医療アクセスが実現しました。その一方で、保険診療単価が抑えられすぎたため、当時から歯科医療従事者の収益性や治療技術評価の低さが問題視されていました。

2000年

表2: 日本と海外の歯科治療費比較(2000年 東京医科歯科大 大川渕孝一教授データ)

項目日本イギリスフランスドイツスイスアメリカカナダ
根管治療¹5,83992,22043,92014,14636,601108,01152,764
歯石除去73213,6303,1441,7794,62612,5666,366
アマルガム充填2,4085,0401,60616,01517,190
複合レジン充填2,85111,8806,21814,65825,72410,567
インレー5,79525,66123,9935,700108,101
再合着²7743,6983,8635,7003,8633,417
金属冠9,139109,330108,00066,27666,276111,73250,536
陶材冠79,689210,60094,44094,440143,33957,123
支台築造1,70712,18024,84021,16821,16841,1387,703
抜歯³2,4675,22049,22518,52218,52238,993
麻酔3215,2201,6062,8072,8072,030
エックス線標準⁴4513,6811,1321,4261,42612,660868
エックス線パノラマ3,2026,96018,2525,5745,57412,6603,273

¹ 抜髄、感染根管処置、根管充填を含む。
² インレー、クラウンの脱離再合着。
³ 歯冠切除を含む。
⁴ 咬翼型を含む。
⁵ 為替レート(2002年1月1日~6月30日適用):
 1ポンド=174円/1ユーロ=106円/1スイス・フラン=72円/1ドル=122円/1カナダ・ドル=79円

※ わが国の料金は、陶材冠は寺岡ら調べ。陶材冠以外は、厚生労働省「2000年社会医療診療行為別調査」を基に、各治療に関連する診療行為を集計した加重平均値である。


– 多国間での通貨換算比較

  • 歯石除去や抜歯などベーシック処置でさえ、日本は米英仏独の約1/10~1/20。
  • 金属冠(9,139円)も各国(米111,732円、豪143,339円、仏210,600円)の1/10以下。

– 治療種別の格差の拡大

  • インレーや根管治療など、より専門的・技術的な処置ほど価格差が大きい。
    → 保険診療下での単価引き上げが進まず、高度治療の国際競争力が低迷。

ポイント

保険外調査による陶材冠79,689円を除くと、日本保険診療の単価は世界基準の1/10前後にとどまり、保険制度下での平均単価は上昇が限定的であったことが確認できます。

2006年

表3: 日本、アメリカ、スウェーデン、ドイツの主な歯科医療費(『日本と世界の歯科医療』国際比較から見た日本の歯科医療の姿)

項目日本アメリカスウェーデンドイツ
歯周治療27,540161,40059,500~76,500112,746
根管治療(前歯)4,680100,00030,600~34,00031,900
根管治療(臼歯)8,700150,000~200,00051,000~59,500
インレー(臼歯)6,47050,000~100,00071,400~85,00053,700
補綴治療
(クラウン 前歯)
25,000150,000~200,00095,200~122,400
補綴治療
(クラウン 臼歯)
12,450150,000~200,000110,500~127,50065,900
欠損補綴
(ブリッジ)
37,690450,000~600,000178,500~197,200128,000~181,000
メインテナンス5,05012,000~33,00010,000~56,100

1. 根管治療における格差の顕著性

  • 前歯: 日本4,680円 vs アメリカ100,000円(約21倍の差)
  • 臼歯: 日本8,700円 vs アメリカ150,000~200,000円(約17-23倍の差)

2. 補綴治療の価格差

  • クラウン(前歯): 日本25,000円 vs アメリカ150,000~200,000円(約6-8倍の差)
  • クラウン(臼歯): 日本12,450円 vs アメリカ150,000~200,000円(約12-16倍の差)

3. 欠損補綴(ブリッジ)での極端な価格差

  • 日本37,690円 vs アメリカ450,000~600,000円(約12-16倍の差)
  • 最も価格差が大きい治療項目

2006年の歴史的背景

WHOとFDI(国際歯科連盟)の1985年レポートの影響が本格化

  • 「歯科疾患は予防可能な疾患」というコンセンサスの浸透
  • 治療中心から予防中心への政策転換

各国の制度改革

  • イギリス: 2006年にNHS歯科制度の大改革(3バンド制導入)
  • ドイツ: 2005年に義歯付加保険制度導入
  • スウェーデン: 1999年改革の効果が定着

2023年

表4: 日本、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、韓国の歯科治療費(2023年レート換算)(日本歯科医師会)

項目日本アメリカイギリスフランスドイツ韓国
歯石除去1,48031,2004,8004,7004,5004,500
抜歯2,70048,50013,2006,5002,9002,900
CR充填3,15028,50013,2004,800 ~ 11,3002,900 ~ 15,80011,200
総義歯35,700286,60057,300178,600 ~ 357,200224,000

海外の歯科治療費について各国歯科医師会(FDI2023参加国)の協力を得て調査

– ベーシック処置のアップ

  • 歯石除去1,480円、抜歯2,700円に上昇したが、米31,200円・英4,800円の1/10以下。
    – 総義歯35,700円 vs 米286,600円
    → インレーや補綴治療で米英独との差は巨大。日本の保険制度が依然として低額報酬を維持する一方、他国の自由市場はインフレや専門技術評価を反映。

改善の動き

基本処置の日本単価は1970年代以来上昇傾向にありますが、諸外国の「自由市場ベースの価格」には依然遠く及びません。特に補綴や高度処置の格差が根強く残っています。

経時的変化

  1. 長期にわたる低水準
    1970年代から2020年代まで、日本の保険診療単価は一貫して諸外国の1/10~1/5程度にとどまる状態が続いています。
  2. 高度処置ほど差が拡大
    根管治療や補綴治療など、技術・材料費のかかる処置ほど国際格差が顕著です。
  3. 上昇率の鈍化
    保険診療単価の改定は数年ごとの少額改定にとどまり、物価や技術進歩を反映しにくい構造的課題があるといえます。

考察

  1. 日本の低価格政策は患者負担軽減に寄与する一方、歯科医療提供体制の収益性を圧迫し、高度治療へのインセンティブを低下させています。
  2. 他国と比較すると、技術・材料コストを大きく下回るため、海外技術の導入や最新機器投資を進めづらい構造的課題があります。
  3. 今後の政策課題として、医療機関の持続可能性と患者アクセスのバランスを見据え、特に根管治療や補綴分野の報酬改善が必須です。

最後に:今後の課題と展望

  • 治療提供体制の維持
    低単価が続くと、歯科医院経営の圧迫につながり、過疎地では歯科医師不足を招く恐れがあります。
  • 技術革新への対応
    新素材やデジタル機器の導入にはコストがかかるため、保険報酬の見直しが急務です。
  • 患者負担と医療の質のバランス
    患者負担軽減を維持しつつ、適正な報酬によって医療の質を担保する改革が求められます。

日本の歯科医療が将来にわたって持続可能であるためには、「適切な報酬設定」と「市場動向への柔軟な対応」が鍵となるでしょう。

ちなみに、医科でも同じ様な比較資料がありました。日本医師会「日本と諸外国の医療水準と医療費」

日本歯科医師会もこういったデータをきちんとまとめて分かりやすくホームページに公開してくれるといいのですが、期待しすぎでしょうか。


参考文献・資料資料

  • 参考資料 医療・介護給付費推計について(川渕孝一氏) 社会保障国民会議 サービス保障(医療・介護・福祉)分科会(第6回)平成20年7月31日(木) 全国老人福祉施設協議会 国立国会図書館が保存した2019年11月21日時点のページ 福祉・保健・医療情報 – WAM NET(ワムネット) ※官邸ホームページからアーカイブに移動されています。

  • 『日本と世界の歯科医療』国際比較から見た日本の歯科医療の姿』 [PDF]

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この記事の監修者
中村 瞬
かわせみデンタルクリニック 院長 / 歯学博士(歯科麻酔学)/ 日本歯科麻酔科学会 認定医
医療記事をほぼ毎日更新中・TV取材多数
医学的根拠(エビデンス)に基づいた正確で分かりやすい情報を患者目線でお届けしています。


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