甘いもの好き必見!むし歯リスクで見る糖質ランキング
最もむし歯を引き起こしやすい糖質はショ糖であり、次いでグルコースやフルクトースが続きます。一方、オリゴ糖(例:フラクトオリゴ糖)は唾液や口腔内細菌による分解を受けにくく、むし歯のリスクが低いと考えられています。
この記事では、人工甘味料を除く主要な糖類それぞれの化学的特徴、口腔内での代謝、むし歯原性をまとめました。
1. ショ糖(お砂糖)
ショ糖は、一般的に「お砂糖」と呼ばれている糖質です。お菓子や清涼飲料水など、私たちの身の回りにある多くの食品に含まれています 。
ショ糖が他の糖質に比べて最もむし歯になりやすいのは、単に酸を作りやすいというだけではありません。むし歯の主な原因菌であるミュータンス菌は、ショ糖を分解する際に、**「不溶性グルカン」**というネバネバした物質を作り出します 。
このグルカンは、まるで接着剤のようにミュータンス菌や食べかすを歯に強くくっつけ、**分厚いプラーク(歯垢)**を形成する骨格となります。このプラークの中に酸が閉じ込められるため、歯は長時間にわたって溶けやすい状態にさらされてしまうのです 。
フィンランドで行われた有名な研究では、お砂糖をたくさん摂取したグループは、他の甘味料を摂取したグループに比べて、むし歯になるリスクが明らかに高かったことが報告されています 。これは、ショ糖が持つ、この特別なプラーク形成能力が大きく影響しているためと考えられています。
2. グルコース(ブドウ糖)とフルクトース(果糖)
グルコース(ブドウ糖)は穀物やデンプンに、フルクトース(果糖)は果物やはちみつに多く含まれる糖質です 。これらはショ糖を構成する単糖類でもあり、むし歯菌のエネルギー源となって酸を作り出します 。
しかし、これらの糖質は、ショ糖のようにネバネバした不溶性グルカンを効率よく作る能力はありません 。そのため、単体で摂取したときのむし歯リスクは、ショ糖より低いと考えられています 。
興味深いことに、米国の疫学データでは、トウモロコシ由来の甘味料(フルクトースを多く含むコーンシロップなど)の消費量が増加し、一方でショ糖の使用が減少した時期に、むし歯になる人が減ったというデータも示されています 。これは、ショ糖を他の甘味料に置き換えることが、むし歯予防に役立つ可能性を示唆しています。
3. マルトース(麦芽糖)
マルトースは、グルコースが2つ結合した糖質で、デンプンが唾液の酵素で分解されることでできます 。むし歯菌はこのマルトースも効率よく利用して酸を作り出します 。
デンプンそのものは、分子が大きいためむし歯になりにくいとされていますが、唾液によってマルトースに分解されると、むし歯の原因になる可能性があります 。特に、お砂糖とデンプンが両方含まれるお菓子(ビスケットやクラッカーなど)は、単体で摂取するよりもむし歯リスクが高まると言われています 。これは、食品の形が「歯に残りやすいかどうか」もむし歯に大きく影響していることを示しています。
4. ラクトース(乳糖)
ラクトースは、牛乳や乳製品に含まれる糖質です 。むし歯菌によって酸が作られることもありますが 、多くの研究でショ糖に比べてむし歯になりにくく、母乳育児期以外ではむし歯リスクは比較的低いと結論付けられています 。
この理由は、ラクトースが単体で摂取されることがほとんどなく、牛乳や乳製品という「複合体」として摂取されることにあります 。牛乳には、ラクトースのむし歯リスクを打ち消す、次のような「 保護成分」が含まれているのです 。
- 酸を中和する働き: 牛乳に含まれるタンパク質(カゼイン)やカルシウム、リン酸が、むし歯菌が作った酸を和らげ、お口の中のpHを急激に下げないように守ってくれます 。
- 溶けかけた歯を修復する働き: 牛乳のカルシウムとリン酸は、酸で溶け出した歯の成分を補い、歯を元の状態に戻す「再石灰化」を助けてくれます 。
- 細菌の付着を邪魔する働き: 牛乳のタンパク質からできる成分が、むし歯菌が歯の表面に付着するのを物理的に防ぐ役割を果たします 。
これらの働きがあるため、牛乳や乳製品はむし歯になりにくいだけでなく、むしろむし歯予防に役立つ可能性があります。
5. オリゴ糖
オリゴ糖は、複数の糖が連なった糖質の総称です。特に「難消化性オリゴ糖」は、人間の消化酵素でほとんど分解されないため、むし歯菌のエネルギー源にもなりにくいことが分かっています 。このことから、むし歯になりにくい甘味料として注目されています 。
さらに、近年の研究では、オリゴ糖が単にむし歯になりにくいだけでなく、積極的にむし歯を防いでくれる機能も示唆されています 。
- プラーク形成を邪魔する: むし歯の原因であるプラークが作られるのを、物理的・化学的に邪魔する働きがあります 。
- 菌が付着するのを防ぐ: オリゴ糖が、むし歯菌が歯に付着する際に使う「受け皿」の代わりとなり、菌の付着を妨げます 。
- お口の中の良い菌を増やす: お口の中の善玉菌(乳酸菌やビフィズス菌など)の成長を助け、むし歯菌の増殖を抑えてくれる効果も期待されています 。
オリゴ糖の持つこれらの働きは、今後の食品開発やむし歯予防において非常に重要な役割を果たすかもしれません。
糖質の種類とむし歯のなりやすさ比較表
| 糖質の種類 | 分類 | むし歯菌による代謝 | プラーク形成能 | う蝕誘発性 | 主な食品源 |
| ショ糖 / スクロース(Sucrose) | 二糖類 | 代謝され酸を産生 | 不溶性グルカンを合成し、プラークの骨格を形成する | 高 | 砂糖、菓子、清涼飲料水 |
| ブドウ糖 / グルコース(Glucose) | 単糖類 | 代謝され酸を産生 | 不溶性グルカンを合成する能力は低い | 中 | 穀物、デンプン分解物 |
| 果糖 / フルクトース(Fructose) | 単糖類 | 代謝され酸を産生 | 不溶性グルカンを合成する能力は低い | 中 | 果物、蜂蜜、果汁 |
| 麦芽糖 / マルトース(Maltose) | 二糖類 | 代謝され酸を産生 | – | 中 | デンプン分解物、穀物 |
| 乳糖 / ラクトース(Lactose) | 二糖類 | 代謝され酸を産生 | プラーク形成能は低い | 低(複合体として摂取した場合) | 牛乳、乳製品 |
| オリゴ糖(Oligosaccharides) | オリゴ糖類 | 難消化性オリゴ糖は代謝されにくい | バイオフィルム形成を阻害する機能を持つ | 非常に低い | 難消化性オリゴ糖製品 |
まとめ
糖質の種類によって、むし歯になりやすさは大きく異なります。一番良いのはオリゴ糖でしょう。
- ショ糖(お砂糖)は、ネバネバしたプラークを作るため、最もむし歯になりやすい糖質です。
- グルコース(ブドウ糖)とフルクトース(果糖)は、酸は作りますが、ショ糖よりはむし歯リスクが低いとされています。
- ラクトース(乳糖)は、牛乳という他の成分に守られているため、むし歯になりにくい糖質です。
- オリゴ糖は、酸を作り出すことがほとんどなく、積極的にむし歯を予防する働きも持っているため、非常にむし歯になりにくいと言えます。
この知識を参考に、日々の食生活を見直してみてください。
参考文献
- Non-digestible oligosaccharides: A review.(難消化性オリゴ糖:レビュー) https://www.mdpi.com/2072-6643/12/6/1789
- Dietary sugars and dental caries: A review of the evidence.(食事中の糖質とむし歯:エビデンスのレビュー) https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/14522753/
- Lactose cariogenicity with an emphasis on childhood dental caries.(乳糖のう蝕誘発性、特に小児う蝕に焦点を当てて) https://www.researchgate.net/publication/257406290_Lactose_cariogenicity_with_an_emphasis_on_childhood-dental-caries
- Real Milk, Plant-Based Alternatives, and the Promotion of Healthy Teeth.(本物の牛乳、植物性代替品、そして健康な歯の促進) https://www.milkgenomics.org/?splash=real-milk-plant-based-alternatives-and-the-promotion-of-healthy-teeth
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