
歯周病のQ&APERIODONTAL Q&A
歯周病に関する
よくあるQ&A

歯周病は、お口の中だけでなく、糖尿病をはじめとする全身の健康との関連が報告されている慢性疾患です。
当院では一時的な歯のクリーニングだけにとどまらず、医学的根拠に基づき原因に着目した治療と、再発予防を見据えた診療に取り組んでいます。
患者さんから寄せられる「歯周病に関するよくある質問」をQ&A形式でまとめましたので、受診の参考になさってください。
Q1.歯周病はさまざまな病気に
関係があるって本当ですか?
はい。
歯周病は、複数の全身疾患との関連が報告されています。ただし、歯周病が各疾患の直接の原因であると明らかになっていないものもあります。
歯周病と関連する主な全身疾患
| 関連する疾患 | 歯周病との関わり |
|---|---|
| 肺炎 (死亡) |
4mm以上の深い歯周ポケットがあると肺炎の死亡リスクが約3.9倍高まり、ケアなし群は死亡率が大幅上昇する報告あり。 |
| 脳梗塞 | 血管の炎症や動脈硬化により発症リスクが約2.52〜3.04倍に高まる。歯の喪失自体も独立して関連。 |
| 肝疾患 (NAFLD) |
非アルコール性脂肪肝のリスクが約1.5〜1.88倍高まり、歯周病の重症化に伴い肝線維化と相関あり。 |
| 慢性腎臓病 (CKD) |
腎機能の低下リスクが約1.60倍に高まるほか、歯周病菌への高い血清抗体価も発症の独立リスクとなる。 |
| 心疾患 (心筋梗塞等) |
発症リスクが約1.14倍高まる。動脈硬化巣(プラーク)から歯周病菌のDNA検出報告あり。 |
| アルツ ハイマー病 |
発症リスクが約1.7倍高まるほか、脳内から歯周病菌の毒素(ジンジパイン)が検出された報告あり。 |
| 関節リウマチ | 発症リスクが約1.69倍高まるほか、併発すると自己抗体の上昇や症状悪化を招く傾向あり。 |
| 早産 | 早産リスクが約1.61倍高まり、血液を介して子宮へ届く炎症物質が分娩を誘発する恐れあり。 |
| 低出生体重児 | 4mm以上の歯周ポケットがある妊婦さんは、リスクが約1.65〜6.6倍に高まる。 |
※倍率は特定の研究条件に基づく数値であり、すべての患者さんに当てはまるものではありません。また、関連性は必ずしも因果関係を意味しません。
Q2.歯周病菌はからだのどこで
検出されるのですか?
研究では、口腔内細菌やそのDNA・成分が、血液や全身の組織から検出された例が報告されています。
食事や歯みがきなどによって、口腔内細菌が一時的に血流へ入る現象を「菌血症」といいます。
| 口腔内細菌が 検出された場所 |
関連する疾患・状態 |
|---|---|
| 血液 | 菌血症 |
| 血管・血栓 | 動脈硬化、心筋梗塞など |
| 子宮・胎盤 ・羊水 |
胎盤不全や子宮収縮による、早産、低出生体重児など |
| 関節 (滑膜・滑液) |
関節リウマチの症状の促進 |
| 脳 (脳組織など) |
アルツハイマー病(認知症) |
| 肝臓 (組織) |
脂肪性肝疾患(NAFLDなど)の進行 |
| 消化管 (糞便など) |
炎症性腸疾患(IBDなど)の悪化 |
| がん組織 | 食道・肺・大腸がんなどの悪性化 |
※表に記載した検出部位や疾患は研究報告に基づくものであり、口腔内細菌が検出されたことだけで、その疾患の直接の原因であることを意味しません。
Q3.歯周病と糖尿病の関連性は?
糖尿病と歯周病には、互いに影響を及ぼす双方向の関連があります。
糖尿病があると歯周病が進行しやすくなり、歯周炎による炎症は血糖管理に影響することがあります。
重度歯周炎を伴う2型糖尿病患者では、歯周治療後にHbA1cが平均0.4〜0.5ポイント改善したとの報告があります。[1]
Q4.「クリーニング(歯石取り)だけ
では防げない」って本当ですか?
はい。クリーニングで歯石などを取り除いても、毎日のプラーク管理が不十分であれば、歯周病を防ぐことはできません。予防と再発防止には、毎日のセルフケアと歯科医院での継続的な管理が重要です。
長期間、専門的な歯科治療や口腔衛生管理を受けていなかった集団では、1回のみの歯石取りによる進行抑制効果は認められませんでした。[2]
Q5.「歯磨き指導」でこだわっている
ことは何ですか?
「ご自身の力でお口を守る習慣」を身につけていただくことです。
当院の歯磨き指導(OHI)では、歯並びやお口の形などを考慮した「歯磨きのコツ」をお伝えしています。わかりやすくお伝えするために動画や画像も使い、無理なく習慣化できるようサポートします。
Q6.歯周病安定期治療(SPT)と
メンテナンスの違いは?
再発を防ぎ良い状態を保つための「継続的な管理治療」です。
| SPT | 治療後に病状が安定した状態を維持する医療処置 |
| メンテナンス | 健康なお口環境を維持・予防する管理活動 |
BOP(プロービング時の出血)は、歯周組織の炎症を確認する指標の一つです。繰り返し出血する部位は、歯周病が進行する可能性があるため注意が必要です。[3]
BOPだけでなく、歯周ポケットの深さや歯を支える骨の状態なども確認し、炎症の少ない安定した状態を目指します。
Q7.クリーニングだけして
ほしいのですが可能ですか?
歯周病の症状がある場合は、医学的におすすめできません。
原因である細菌(プラーク)の管理が変わらなければ、歯石を取ってもすぐに細菌が再定着し、根本的な解決にならないからです。むしろ、中途半端な処置が病状を悪化させるリスクもあります。
Q8.何度も歯磨き指導を受ける
必要があるのですか?
歯磨きの方法は適宜見直しが必要なので、受けていただくことをおすすめします。歯磨きの癖による「見落としやすい場所(死角)」は、誰にでもあります。
また、「時間経過で自己流に戻りやすくなり磨き残しが出る」という研究データもあります。「磨いている時間」と「汚れが落ちているか(磨けている)」は別物です。
Q9.電動歯ブラシを使っていれば、
歯磨き指導は受けなくても
大丈夫ですか?
電動歯ブラシは、普通の歯ブラシで磨くよりもキレイになるイメージがあるかもしれませんが、使い方によっては磨き残しが見つかるケースもあります。そのため、指導は必要であると考えています。
歯に適切に当てる角度や電動歯ブラシの強さなど、性能を生かすコツもご案内します。
Q10.歯ぐきから血が出ますが、
痛みがなければ様子を見ても
大丈夫ですか?
歯ぐきからの出血は、歯肉炎や歯周炎などによる炎症のサインの一つです。
痛みがなくても歯周病が進行している場合があります。継続的な出血が見られる場所は、歯周病の進行リスクが20倍高くなるという研究もあるため[3]、出血が続くときは歯科医院で検査を受けることをおすすめします。
Q11.歯周病はどこまで治りますか?
溶けた骨は元に戻りますか?
進行を止めることはできますが、歯周病にかかる前の状態へ完全に元通り戻すことは非常に困難です。
臨床的な治癒
継続的な治療を行うことで、達成できる可能性が高いといえます。歯周ポケットの減少や出血の消失など、炎症が消え、進行が止まった状態を指します。
形態的な回復
歯周病は、歯ぐきが下がるだけではなく、重度になると支える骨も溶けます。
溶けた骨が20代の頃のように元通りに戻ることを「歯周病が治る」というのなら、これは現代医学でも非常に困難です。
再生療法の現実
垂直的骨欠損など、骨の失われ方や歯の状態によっては、歯周組織再生療法を検討できる場合があります。
参考文献一覧
-
日本歯周病学会 編:『歯周病と全身の健康 2025』(PDFの資料)
https://www.perio.jp/publication/upload_file/guideline_perio_body_2025.pdf -
Duong et al. (2022):スリランカ茶園コホート研究
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34405417/ -
Lang et al. (1986):BOP(出血)の予測因子研究
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/3489010/ -
日本歯周病学会 編:『歯周治療のガイドライン 2022』(PDFの資料)
https://www.perio.jp/publication/upload_file/guideline_perio_2022.pdf -
AAP/EFP:『新しい歯周病・インプラント周囲疾患分類(2018)』
https://aap.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/JPER.18-0157 -
Löe et al. (1965):実験的歯肉炎研究
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/14296927/ -
Axelsson et al. (2004):30年間にわたる長期メインテナンス研究
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15312097/ -
Cochrane Review (2018):Routine scale and polish for periodontal health in adults
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30590875/
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