歯科検診で見つかるがん

HPVと歯科の関係性とは

男性を対象としたHPV（ヒトパピローマウイルス）ワクチン接種に助成金を出す自治体が増え始めています。最近では子宮頸がん予防のHPVワクチン、男性にも　東京都も費用助成検討へ [2023/09/28] というニュースも聞こえ始めました。HPVは、実は歯科とも関わりが深いため、一度ここでまとめてみようと思います。

男性の罹患が急増中のがん

頭頸部がんの中でもっとも多いのは口腔がん（甲状腺がんを除いた全体の約27％）と言われています。

そのうちの約半数が舌がんです。歯科の定期検診で見つかることの多い病気で、口内炎だと思っていたけどなかなか治らず受診したら、といったことがあります。2019年に堀ちえみさん（歌手）が舌がん・食道がんと診断されてニュースとなり、一般へ広く認知されるようになりました。

頭頸部がんの中では4番目(17.1%)の中咽頭がんの患者数が増えています。 HPVウイルスで急増 ｢のど｣のがん 世界頭頸部がんの日 | NHK [2023/08/09]

喫煙が減少している一部の西側諸国でも、中咽頭扁平上皮がん、特に扁桃扁平上皮がんと舌底癌の発生率が流行的に増加していることが明らかになり、合わせて全中咽頭扁平上皮がんの80～90％を占め、主に男性が罹患しています。⁽¹

これら扁桃腺、舌、舌底部、中咽頭に含まれる舌根部もすべて歯科検診でチェック可能な部位です。

HPVウイルスについて

もちろん、すべての口腔がんがHPVウイルスによるものではなく、飲酒や喫煙が原因になったり、合わない詰め物が幾度となく舌を傷つけてしまう、咬合不良による度重なる咬傷などの度重なる外傷が原因になることもあります。

しかし、HPV16感染が口底がん、歯肉がん、舌がん、口蓋がんの発症リスクを高め⁽²、HPV関連がん患者の配偶者の間でHPV関連がんのリスクが若干増加する傾向⁽³があります。この論文内で述べられている研究では子宮頸部異形成または子宮頸がんを患う女性の夫では、舌がんまたは扁桃腺がんのリスクが高いことが示されています。

みんパピ！みんなで知ろうHPVプロジェクト

ヒトパピローマウイルス感染症～子宮頸がん（子宮けいがん）とHPVワクチン～｜厚生労働省

HPVワクチンの接種を逃した方へ～キャッチアップ接種のご案内～｜厚生労働省

ワクチン接種により予防できる病気として男性にも接種の流れ

こういった流れを受けて、冒頭でも取り上げたように男性のHPVワクチンワクチン接種に助成金を出す、出そうとする自治体が増え始めています。

当院は歯科医院なので歯科に関係するがんの話をしましたが、厚生労働省 によると2019年は、約1.1万人が子宮頸がんに、約5,700人が尖圭コンジローマに罹患したと推計されています。これらの病気がワクチンで予防できるのであれば是非接種したいところ。是非ご自身のお住まいの地域の情報を集めてみてください。

一番最初に述べた通り、口腔がんは歯科検診で見つかることの多いがんです。口内炎がなかなか治らない、白いできものができたなど、なにかお口のなかで気になることがありましたら気軽にご相談ください。ご予約お待ちしております。

引用論文

1) A global epidemic increase of an HPV-induced tonsil and tongue base cancer – potential benefit from a pan-gender use of HPV vaccine. J Intern Med. 2020 Feb;287(2):134-152. PMID: 31733108

2) Infection with Human Papilloma Virus (HPV) and risk of subsites within the oral cancer – Cancer Epidemiol. 2021 Epub 2021 Sep 9. PMID: 34509873

3) Is there an increased risk of cancer among spouses of patients with an HPV-related cancer: A systematic review Oral Oncol 2017 Apr:67:138-145. PMID: 28351568