コラム|船橋の歯医者|かわせみデンタルクリニック

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食器を分けても、口移ししなくても子どもの虫歯予防に意味がない理由 -虫歯の新常識-

 子どもが離乳食を食べるようになると、親から子へ口の中の虫歯菌が感染しないように食器を共有しないようにしたり、介護者と子供の間で口移しで食事を与えたりしないようにすることがあります。

果たしてこれは有効な方法でしょうか?

食器を分けても効果的な虫歯予防にはならない

 口腔微生物の垂直感染を防ぐ対策と 3 歳児の虫歯経験との関連性を調査する研究1)があります。結論としては、垂直感染防止のための養育者の行動(母親が食器を共有したり、介護者と子供の間で口移しで食事を与えたりしないこと)は、小児う蝕のレベルを下げるのに有効でないとしています。

では、なぜ効果的な対策ではなかったのでしょうか?

乳幼児の口腔内細菌叢はいつ定着するのか

妊娠中(羊水・胎盤)

 母乳胎盤細菌叢は口腔細菌叢に最も似ている 2)

 母親の妊娠関連歯肉炎に存在した歯周病原菌(Fusobacterium nucleatum)による死産の報告3)

 切迫早産と診断された妊婦の羊水から歯周病原菌(P.gingivalis)の検出4)

母乳

 母乳に母親の唾液と同じ細菌株が存在(出産前で新生児が接触する可能性のない母親の乳汁と出産後に得られた唾液の中で、菌株レベルで共通する細菌が存在することが明らかとなった。出産前の母親の乳汁にも細菌叢は形成されており、少なくとも部分的には乳児口腔内への伝播が生じていると考えられる5)

乳児

 4か月児の口腔に母親由来の口腔細菌が定着している6)

 ということで、妊娠中には胎児が口腔内細菌に暴露しており、乳児の頃には母親と同じ菌が口の中に定着していることが分かっています。

まとめ

  離乳食を与える段階では既に口の中の状態(細菌叢)はある程度定着しているため、食器を分けたりしても効果的な虫歯予防にはならなかった、ということが分かりました。

 それでは、我が子を虫歯にしないために、他にできることはあるでしょうか?その話をこちらでしていますので興味のある方は読んでみてください。

 かわせみデンタルクリニックでは予防歯科にも力を入れています。気になることがありましたらお気軽にご相談下さい。

追記

[2023/09/01]

新たに日本口腔衛生学会から情報発信がありましたのでこちらで記事にしました

[2023/10/06]

乳児期の唾液接触で学齢期のアレルギー発症が減少するという内容についてこちらで記事にしました


参考文献

1) Wakaguri S. et al., Association between caregiver behaviours to prevent vertical transmission and dental caries in their 3-year-old children. Caries Res. 2011

2) The Placenta Harbors a Unique Microbiome 2014

3) Term Stillbirth Caused by Oral Fusobacterium nucleatum 2010

4) Detection of Porphyromonas gingivalis in the amniotic fluid in pregnant women with a diagnosis of threatened premature labor 2007

5) Lorena Ruiz, et al., Microbiota of human precolostrum and its potential role as a source of bacteria to the infant mouth. Scientific Reports 9(1):8435, 2019

6) ⺟⼦間の⼝腔細菌共有を⾼精度に検証 〜⺟乳栄養児と⽐べて、⼈⼯乳栄養児ではその共有量が多いことが明らかに〜 | 研究成果 | 九州大学(KYUSHU UNIVERSITY)2022.01.25