コラム|船橋の歯医者・矯正歯科|かわせみデンタルクリニック

初診のみ
WEB予約
電話予約
初診のみ
WEB予約

コラム

コラムCOLUMN

技能五輪「歯科補綴」では何を競う?上海大会の結果と日本の参加への道

入れ歯や歯のかぶせ物を作る技能が、2026年の技能五輪国際大会に加わりました。「Dental Prosthetics(歯科補綴)」で問われるのは、精密に作る手作業の技術と、設計、デジタル技術、コミュニケーションを組み合わせる力です。1上海大会の結果から、愛知大会、国内外のコンテストまでをたどります。

目次
  1. 歯科補綴競技が厚生労働白書に載った経緯
  2. 技能五輪の歴史とスポーツの五輪との違い
  3. 上海大会の全64職種と日本代表の出場・成績
  4. 上海大会の歯科補綴は4か国4人が出場
  5. 出場した4人はどのような人たちか
  6. 競技中の写真とメダリストを紹介する現地報道
  7. 歯科補綴の職業能力基準は設計から修理まで
  8. 歯科補綴の競技で求められる手作業とデジタル技術
  9. 日本の歯科技工士が担う仕事と業務の範囲
  10. 口腔内スキャンと模型のスキャンを区別する
  11. 競技定義に示された4つの課題
  12. 業務範囲の見直しは進んでいるのか
  13. 次の国際大会は2028年11月の愛知大会
  14. 歯科医師・歯科技工士の免許は出場の必須条件か
  15. 日本の歯科医師・歯科技工士が技能五輪の代表を目指すには
  16. 歯科医師・歯科技工士になるまでの年数と出場できる時期
  17. 日常業務の経験は競技で有利になるのか
  18. 技能五輪以外にもある歯科技工の国際コンテスト
  19. 日本国内で技能を磨き発表するコンテスト
  20. 国際競技から見えてくる歯科技工の仕事

歯科補綴競技が厚生労働白書に載った経緯

『令和8年版 厚生労働白書』では、歯科補綴は技能振興施策の一環として、技能五輪国際大会の競技職種に掲載されています。2

掲載されているのは第2部第1章の「各種技能競技大会等の推進」で、図表1-4-3には上海大会の64職種が並びます。ここでの文脈は、若い技能者の目標づくりや技能の向上、技能者の社会的評価です。2

大会を主催するWorldSkills Internationalは、2025年10月7日、歯科補綴を含む7つの新職種を公表しました。職種の提案は加盟国・地域やグローバルパートナーから受け付け、産業の変化や人材需要、参加登録などを踏まえて検討される仕組みです。3デジタル機器メーカーのSHINING 3Dは、自社が2025年に歯科補綴の提案を主導したと説明しています。4

同社の日本語記事「WorldSkillsとの歩み」では、2024年にグローバル産業パートナーとなり、歯科補綴の競技や訓練に口腔内3Dスキャナーを提供すると説明しています。機器と訓練を支える企業としての関わりを知る資料です。4

日本でも中央職業能力開発協会(JAVADA)が、2025年4月の公募資料に歯科補綴を挙げていました。5これらの公表資料を照らし合わせると、国際大会への新職種採用が、白書の競技一覧への掲載につながったと考えられます。

日本開催を控え、こうした掲載が歯科補綴への関心や参加の機運を高めるきっかけになることは考えられます。2,5

技能五輪の歴史とスポーツの五輪との違い

技能五輪国際大会は1950年に始まり、1973年以降は原則として2年に1回開催される、職業技能の国際大会です。2

戦後の技能者不足を背景に、スペインとポルトガルの若い技能者が競い合ったのが始まりです。大会の英語名はWorldSkills Competitionで、日本では技能五輪国際大会と呼ばれます。主催団体はWorldSkills Internationalという国際組織です。日本は1962年から参加しています。2,6製造や建設、情報通信、サービスなど、仕事で使う技能を競う場です。

スポーツのオリンピックとは別の大会として運営されており、名前の印象から「4年に1回」と思われがちですが、国際大会は原則2年ごとです。6 日本代表の選考につながる技能五輪全国大会は、国内で毎年開かれています。2

上海大会の全64職種と日本代表の出場・成績

第48回技能五輪国際大会は、2026年9月22日から27日まで中国・上海で開催5され、日本からは56職種62人が出場しました。7

厚生労働省が2026年9月29日に公表した結果によると、大会には65の国・地域から1,372人が参加しています。

その中で、日本が出場した56職種と、出場がなかった8職種を、表で確認できます。2,7

競技職種日本代表の成績出場規模
産業機械敢闘賞・6位15人
ICTネットワーク施工金14人
インテリジェントセキュリティ技術銀7人
メカトロニクス21位32チーム
機械工学CAD敢闘賞・4位33人
CNC旋盤銀21人
CNCフライス盤敢闘賞・7位23人
モバイルアプリケーション開発12位18人
ソフトウェアアプリケーション開発14位20人
溶接銅37人
ソフトウェアテスト敢闘賞・5位10人
タイル張り18位19人
自動車板金銀19人
航空機整備16位18人
配管・暖房27位32人
エレクトロニクス敢闘賞・7位19人
ウェブ技術敢闘賞・12位33人
電工敢闘賞・5位35人
産業用制御システム銀19人
れんが積み―23人
左官敢闘賞・5位14人
ペイント・装飾16位19人
自律移動ロボット敢闘賞・4位18チーム
家具敢闘賞・9位25人
建具18位20人
建築大工敢闘賞・8位16人
ジュエリー銅13人
フラワー装飾敢闘賞・7位16人
美容・理容敢闘賞・15位32人
ビューティーセラピー12位22人
服飾技術敢闘賞・13位31人
洋菓子製造敢闘賞・5位22人
自動車工敢闘賞・6位36人
クッキング敢闘賞・20位43人
レストランサービス敢闘賞・8位28人
車体塗装敢闘賞・8位24人
造園敢闘賞・9位18チーム
冷凍空調敢闘賞・10位27人
ITネットワークシステム管理敢闘賞・4位25人
グラフィックデザイン25位29人
ヘルス&ソーシャルケア15位19人
ビジュアルマーチャンダイジング敢闘賞・6位12人
コンクリート躯体工事8位9チーム
ベーカリー敢闘賞・4位22人
インダストリー4.011位16チーム
3Dデジタルゲームアート16位17人
化学実験技術6位10人
クラウドコンピューティング敢闘賞・4位16人
サイバーセキュリティ17位20チーム
水技術8位12人
ホテルレセプション17位21人
付加製造銀11人
工業デザイン技術10位12人
光電子技術7位9人
再生可能エネルギー金10人
ロボットシステムインテグレーション銅20チーム
歯科補綴―4人
小売販売―7人
デジタル・インタラクティブ・メディア・デザイン―7人
重機整備技術―18人
物流貨物輸送―6人
デジタルコンストラクション―17人
鉄道車両技術―9人
無人航空機システム敢闘賞・4位11人

「―」は、日本代表が出場していない職種です。メカトロニクスは代表選手の1人が欠場していますが、もう1人の成績が掲載されています。7

上海大会の歯科補綴は4か国4人が出場

公式結果には中国、インド、韓国、ブラジルの4人が掲載されています。金メダルは中国、銀メダルはインドの選手が獲得しました。8

歯科補綴の結果は次のとおりです。名前はWorldSkillsの公式表記に合わせています。8

国選手名得点メダル順位(4人中)
中国XIATING GUO740金1位
インドMOHAMMED SALAM701銀2位
韓国JUNKYU LEE699―3位
ブラジルRAFAEL ALVES SCOTTI636―4位

8中国・湖北省の公的サイトが掲載した大会後の報道では、4か国から各1人が出場したと紹介しています。同記事では、ワックスで形を作る工程や鋳造、陶材を使った仕上げなど、手作業の技能も取り上げました。9公開競技定義では、デジタル設計に加え、造形物の洗浄・研磨やジルコニアの着色・つや出しも挙げています。10現地報道が紹介したワックス・鋳造の手作業に対し、公開競技定義の「デジタルワックスアップ」はCADで歯の形を作る工程です。課題の構成は、後で紹介する競技定義に沿って整理しています。9,10大会の写真には、マネキンの口腔内スキャンが写っています。11鋳造や陶材の手作業が当日の課題だったかは、今回参照した競技定義と写真では確認できませんでした。

出場した4人はどのような人たちか

歯科技工の課程を学んだ卒業生や学生が出場しています。ブラジル代表は、技工を学んだあと歯学部へ進んだ学生です。12,13,14,15

学校や各国の公的機関は、4人を次のように紹介しています。

選手公開資料で紹介された学歴・職歴
中国・XIATING GUO湖北三峡職業技術大学で口腔医学技術を学び、同大学の口腔分野の実習指導教師に採用 12
インド・MOHAMMED SALAMSaveetha Dental Collegeの2026年1月ニュースレターで、Dental Lab Technicianの学部生として紹介 13
韓国・JUNKYU LEE新丘大学の歯科技工学科を2025年2月に卒業。就業先と大学で大会に向けて訓練 14
ブラジル・RAFAEL ALVES SCOTTISenacで歯科補綴の課程を学び、現在は歯学部の学生。大会訓練と大学を両立するため仕事を一時休止 15

この経歴から分かるのは、歯科補綴の教育や実務との接点です。各国の歯科医師免許・歯科技工士相当資格の保有までは、公表された選手紹介に記されていませんでした。12,13,14,15

競技中の写真とメダリストを紹介する現地報道

競技の写真と、金メダリストの授賞写真・レポートは公開されています。9,11,16

大会の様子は、上海市の公式英語サイトの記事「WorldSkills Competition through the lens」で見ることができます。記事内の2枚目が、韓国代表による歯科補綴の競技写真です。公開日は2026年9月24日、撮影日は9月23日です。写真からは模型をスキャンする作業や画面が確認でき、データを使った歯科技工の一場面を知ることができます。11

湖北省の公式サイトには、金メダリストXIATING GUO(郭夏亭)がメダルと国旗を持つ授賞写真があります。21歳の選手が、湖北三峡職業技術大学で学び、教員として仕事を始めた経歴も紹介されています。9 

WorldSkillsの公式Flickrにも「Dental Prosthetics」のアルバムがあります。競技の様子を詳しく見たい場合は、参考文献のアルバムや現地レポートから確認できます。16

歯科補綴の職業能力基準は設計から修理まで

職業能力基準では、相談と設計、補綴物の製作がそれぞれ30%を占めています。17

WorldSkills Internationalは、「WorldSkills Occupational Standards(WSOS、職業能力基準)」を公表しています。歯科補綴の職業能力も、この基準にまとめられています。技術・職業分野のWorldSkillsエキスパートが、世界の産業界や企業の意見を聞いて作成・更新する基準です。17

WSOSは技能五輪の準備と評価の基礎になる基準です。歯科補綴の2026年版は、WorldSkills公式サイトの「Dental Prosthetics」で公開されています。各分野の職業能力と、その比重が記されています。17

作成を担うのは、WorldSkillsの技術・職業分野のエキスパートです。世界の産業界や企業と協議し、2年ごとに更新します。歯科補綴の比重は、次のとおりです。17

職業能力の領域比重
作業の段取りと管理10%
コミュニケーションと対人技能5%
相談と設計30%
補綴物の製作30%
補綴物の適合確認と調整15%
補綴物の維持、改良、修理10%

これは職業能力基準の配分です。実際の競技課題や採点表そのものとは異なり、競技で扱える範囲に合わせた調整が認められています。17設計が製作と同じ比重を占めていることからも、何を、どんな条件で作るかを読み取る力が重視されていると分かります。さらに適合確認や修理まで含めると、完成させた後の仕事にも目を向けられるでしょう。

歯科補綴の競技で求められる手作業とデジタル技術

歯科補綴は、歯の形や材料を理解し、必要な装置を設計して製作する技能を競います。1

WorldSkillsは2026年9月21日の紹介で、製作する装置の例としてクラウン(かぶせ物)、ブリッジ、義歯(入れ歯)、ナイトガードを挙げています。これらは職業と技能の紹介であり、上海大会で全種類の製作が出題されたという意味ではありません。1

同じ紹介では、CADによる設計、積層造形、CNCによる切削加工を取り上げています。CADはコンピューターで形を設計する技術で、積層造形は材料を重ねて形にする方法です。CNCによる切削加工では、コンピューターの制御で材料を削ります。1デジタル化が進むほど、設計画面で決めた形と、加工後の仕上がりを結びつける判断が大切になるでしょう。

日本の歯科技工士が担う仕事と業務の範囲

日本の歯科技工士の業務範囲は、歯科技工士法で定められています。患者ごとの補綴物、充填物、矯正装置を作成、修理、加工する仕事です。18

同法第18条では、原則として歯科医師の指示書に基づいて歯科技工を行います。ただし、病院・診療所内で、治療を担当する歯科医師の直接の指示に基づく場合には、指示書についての例外があります。18

厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」では、入れ歯、クラウン、ブリッジなどの製作が紹介されています。患者ごとに異なる形や色に合わせ、細かな加工と調整を重ねる仕事です。使用する機材にはCAD/CAMや3Dプリンターも挙げられています。19

同法第20条では、歯科技工士による印象採得、咬合採得、試適、装着などを禁じています。患者の型取りやかみ合わせの記録、口の中での仮合わせや装着にあたります。歯科医師の指示があれば、これらも行えるという意味ではありません。18

国際的な能力基準には、日本の歯科技工士が患者に行うことが認められていない行為に関するものもあります。17,18

歯科補綴のWSOSには、従来型・デジタル型の印象採得の技法や、口の中にある補綴物を修理・改良する行為も含まれています。一方、「適合確認」の領域には、患者の印象や模型に装置を合わせる技能も明記されています。17

模型をスキャンしたり模型上で適合を確かめたりすることと、患者の口の中で型取りや試適をすることは区別して捉える必要があります。17

この基準は国際的な職業能力を示すもので、上海大会の競技課題そのものではありません。どの能力をどのような課題で評価したかは、別に確認が必要です。競技への採用や白書への掲載によって、日本の歯科技工士の法的な業務範囲が広がったわけではありません。17,18

口腔内スキャンと模型のスキャンを区別する

日本の歯科技工士が患者から印象を採ることと、競技でマネキンや模型をスキャンすることは、法令上の扱いが異なります。18

厚生労働省の診療報酬改定資料では、口腔内スキャナーを用いた患者の記録を「印象採得・咬合採得」と説明しています。20補綴物を作るために患者の口をスキャンして光学印象を採る行為は、歯科技工士法第20条が禁じる印象採得にあたると考えられます。デジタル機器を使うことや、歯科医師の指示を受けることだけで、この禁止が解除されるわけではありません。18,20

表のマネキン・模型の行は競技写真による確認です。ほかの行は、歯科補綴のWSOSに照らして日本法上の業務範囲を比べています。

手技技能五輪の資料・写真に示された内容日本の歯科技工士の業務
マネキン・模型のスキャン競技写真で模型をスキャンする場面を確認模型を使った補綴作成作業
患者の光学印象採得デジタル印象の技法を記載。上海大会で患者に実施したかは未確認第20条の印象採得の禁止にあたる
CAD設計・補綴物の製作設計・製作を記載第2条の作成・加工に関わる。第18条の指示に従う
模型上での適合確認・調整模型への適合を記載口腔外での製作・加工の工程
患者の咬合採得・試適・装着上海大会で患者に実施したかは確認できず第20条に明記された禁止行為
口の中にある補綴物の修理・改良WSOSに記載。上海大会で患者に実施したかは確認できず第20条の禁止範囲を踏まえる

競技定義に示された4つの課題

上海大会向けの競技定義は、スキャンから製作・仕上げまでを4モジュール、合計22時間で組み立てています。10

JAVADAが公開する「Technical Description」の第5章には、各モジュールの作業と時間が示されています。第4モジュールは設計・切削と仕上げの2部構成です。10第1モジュールで使う口腔内スキャナーについて、上海市の競技写真では、マネキンの口に入れてスキャンしている場面が写っています。11

モジュール時間作業
1 スキャンから装置の3Dプリント4時間口腔内スキャナーでデータを取り、CAD設計、3Dプリント用データの準備、造形物の洗浄・硬化・研磨まで行う
2 デジタルワックスアップ2時間CADで歯の形を設計し、実物の参考模型の形に合わせる
3 デジタル義歯6時間総義歯または部分義歯をCADで設計し、3Dプリント用データを準備して、造形後の洗浄・硬化・研磨を行う
4 前半 ジルコニア修復物の設計・切削6時間卓上スキャナーでスキャンし、クラウンまたはブリッジをCAD設計。切削用データを準備し、切削物の切り離し・連結部の除去・焼結を行う
4 後半 ジルコニア修復物の仕上げ4時間適合、隣接する歯との接触、かみ合わせを確認し、着色・つや出しで指定の色調に合わせる

デジタルワックスアップは、実物のワックスを盛る代わりに画面上で歯の形を作る工程です。義歯や修復物も、設計しただけでは終わりません。造形後の処理や模型上での確認まで含めて、製作の流れを評価します。10

ここに並べたのは公開された競技定義の全モジュールです。当日に渡された個別症例の指示書や採点表までを転載したものではありません。10

業務範囲の見直しは進んでいるのか

業務範囲の見直しは検討会で提案されています。21

厚生労働省の検討会は、2026年10月1日の中間報告(第二次)で、一部の歯科診療行為について教育・研修とともに、必要な法令の見直しを含めた検討を進める方向を示しました。口内にある補綴物の着脱などが挙げられています。21

次の国際大会は2028年11月の愛知大会

第49回技能五輪国際大会は、2028年11月15日から20日まで、愛知県で開催される予定です。22

主会場はAichi Sky Expo(愛知県国際展示場)。日本開催は、1970年の東京、1985年の大阪、2007年の静岡に続く4回目です。開催地は、2024年9月にフランス・リヨンで行われたWorldSkillsの総会で決まりました。2,22

公式案内では、15日が開会式、16日から19日が競技、20日が閉会式となっています。22日本で競技を間近に見られる機会としても、歯科技工を学ぶ人にとって注目したい大会です。一方、愛知大会での歯科補綴の実施と日本代表の選考方法は、今回確認したWorldSkills・JAVADAの公表資料の範囲では確定した情報が得られていません。開催地や日程が決まったことと、個別の職種で日本代表の募集が始まったこととは、区別して捉える必要があります。

歯科医師・歯科技工士の免許は出場の必須条件か

WorldSkillsの国際規則と歯科補綴の競技定義は、歯科医師免許や歯科技工士免許を選手の必須条件にしていません。10,23

国際規則の選手資格の項目は、参加資格の基準を年齢のみとしています。各国・地域は、その枠組みの中で代表を選びます。歯科補綴の競技定義で定められた上限は、大会開催年に25歳以下です。10,23,24

日本の2026年大会の統一選考方針には、日本国籍、過去の国際大会への出場歴がないこと、年齢の条件が示されています。ここにも歯科医師・歯科技工士免許の必須条件はありません。歯科補綴は、職種別の選考会を行う予定の職種に含まれていました。5

したがって、日本の歯科医師が出場候補になることも、国際規則の資格条件から排除されてはいません。次に必要なのは、年齢条件を満たし、日本代表の選考を通ることです。5,10,23

日本の歯科医師・歯科技工士が技能五輪の代表を目指すには

日本代表を目指す際は、JAVADAが公表する職種別の選考方針と募集情報が出発点です。5,24

WorldSkillsへの出場は、加盟国・地域の代表として行います。多くの職種は大会開催年に22歳以下ですが、上海大会の歯科補綴は25歳が上限で、代表枠は1人でした。5,24この年齢条件が2028年の募集条件に当てはまるかは分かりません。

2026年大会の日本代表選考方針では、日本国籍や過去の技能五輪国際大会への出場歴などの条件が定められています。原則として全国大会の成績から選考し、対応する国内職種がない場合には別の選考方法を設ける仕組みです。5

歯科補綴を含む2025年4月の公募では、教育機関、企業、業界団体などからの連絡を受け、代表選手と競技を支える専門家(エキスパート)の選考を検討するとしていました。締切は2025年6月27日で、当時の公募は終了しています。5これが愛知大会での参加を考える参考になります。

関心のある歯科技工士は、所属する学校や技工所、業界団体とともに、JAVADAへ歯科補綴の実施・代表派遣・選考予定を問い合わせるのが良いでしょう。これは2026年の公募が教育機関や企業などを窓口としていたことを踏まえた提案です。資格の取得に加え、年齢などの応募条件、代表選考、エキスパートや訓練を支える体制を確認することが、具体的な準備への足がかりになります。

歯科医師・歯科技工士になるまでの年数と出場できる時期

高校卒業後に進学する場合、歯科技工士の養成課程は最短2年、歯科医師の歯学部は6年です。25,26それぞれの課程を卒業し、国家試験に合格して免許を取得します。18,26,27

高校から浪人・留年をせず、18歳前後で入学して3月に卒業する場合の目安を表にまとめました。卒業時の年齢と、その年の12月31日までに迎える年齢を分けています。上海大会の「25歳以下」は、開催年中に迎える年齢で判定されます。10

職種養成課程卒業時(3月)の年齢卒業年中に迎える年齢25歳になる年は卒後何年目か
歯科技工士2年制19〜20歳20〜21歳卒業年を1年目と数えて5〜6年目
歯科技工士3年制20〜21歳21〜22歳4〜5年目
歯科技工士4年制21〜22歳22〜23歳3〜4年目
歯科医師6年制23〜24歳24〜25歳1〜2年目

歯科医師の場合、25歳になるのは卒業年か翌年です。2年制の歯科技工士課程から進む場合の卒業4〜5年後と比べると、卒業後に準備できる期間は短くなります。診療に従事しようとする歯科医師には、免許取得後に1年以上の臨床研修も必要です。27

国際規則は免許を選手の必須条件にしていないため、在学中から競技に向けて準備することも選択肢になります。10,23大会は原則2年ごとなので、年齢条件を満たす期間に毎年出場機会があるわけではありません。2

日常業務の経験は競技で有利になるのか

スキャンとCAD/CAM設計を日常的に行う歯科医師は、経験の少ない出場者に比べ、これらの操作を評価する課題で有利になる可能性が高いと考えられます。

歯科医師も補綴物のCAD/CAM設計を行います。例えば、デンツプライシロナはCERECの院内製作で、歯科医師がスキャンから設計・製作へ進む流れを紹介しています。28「スキャンは歯科医師、設計は歯科技工士」という職種だけの分け方では、実際の経験を捉えきれません。

操作を繰り返していれば、スキャンの順序、データの欠落の見つけ方、設計画面での判断などを練習していることになります。そのため、普段から両方を行う歯科医師を、出場候補として検討する余地はあります。これは業務経験からの推論であり、職種別の競技成績を比較した結果ではありません。

日本の歯科技工士は、患者への印象採得を通常業務で経験できない一方、模型を使ってスキャン操作を練習できます。法的に患者へ行えないことと、競技に向けて技能を学べないことは同じではありません。18また、WSOSは設計・製作だけでなく、適合確認や修理までを含みます。17どちらの職種が競技全体で有利かは、課題と本人の経験によります。歯科医師を候補にする場合にも、年齢や日本代表選考などの条件の確認が必要です。次回の条件はJAVADAの発表で確認してください。5

技能五輪以外にもある歯科技工の国際コンテスト

歯科技工の国際コンテストには、義歯の製作、補綴症例、学生の歯形彫刻など、異なる技能を発表する場があります。29,30

大会・コンテスト主な対象競うもの
CANDULOR KunstZahnWerk(KZW)国際的に募集する歯科技工の参加者指定症例の上下顎総義歯
Ivoclar Smile Award歯科医師・歯科技工士セラミック補綴の症例・作品
国際歯科技工学術大会の学生コンテスト養成校の学生代表歯形彫刻

CANDULORのKZWは、指定された症例から総義歯を製作し、模型の分析や人工歯の排列、仕上げ、製作過程の記録を評価するコンテストです。2025年大会には、国際的に120人が参加登録したと主催者が公表しました。授賞式は同年3月のドイツ・ケルンの国際歯科展示会IDSで行うと案内されました。29

Ivoclar Smile Award 2026には、歯科医師と歯科技工士のチームによる「Proven Masters」と、個人の「Rising Talents」があります。前者は上顎の6ユニット以上、後者は前歯部の2〜4ユニットのセラミック補綴などを対象とし、指定材料を使う条件があります。ユニットは、補綴物を歯1本分として数える単位です。30同年8月の結果では、Rising Talentsの1位は日本の村上大志さん、3位は伴依美里さんでした。Proven Mastersのアジア部門でも、Yuji Hasegawa・Ryoji Ishii組が2位、Jun Iwata・Kenji Aoki組が3位に入りました。公式サイトで作品や症例集をたどれます。31

学生の国際コンテストは、国際歯科技工学術大会の一部として行われます。東京科学大学の活動記録には、2013年の韓国開催や、2025年1月の大阪開催での学生の出場が掲載されています。32国代表として競技する技能五輪、症例や作品を提出するメーカー主催のコンテスト、学校代表の学生競技では、参加の仕方も評価する範囲もそれぞれ異なります。

日本国内で技能を磨き発表するコンテスト

国内にも、学生の彫刻競技からデジタル技工の作品発表まで、複数の機会があります。32,33,34,35

大会・コンテスト主な対象技能・作品
日本歯科技工学会の学生テクニカルコンテスト養成校の学生代表歯形彫刻
歯科技工G-1グランプリ歯科技工士養成校の学生石膏彫刻
日本デジタル歯科学会の歯科技工作品コンペティション条件を満たす学会員デジタル技術を使った修復物
モリタ歯科技工登竜門応募条件を満たす歯科技工士陶材、ジルコニア、CAD、3Dプリント義歯
歯型彫刻大会「ほるほる」学生・有資格者石膏棒からの歯形彫刻

日本歯科技工学会の学生テクニカルコンテストでは、各養成校の代表が歯形を彫刻します。大学の記録では、2025年1月の大阪、同年11月の名古屋での出場を確認できます。「ほるほる」は首都圏歯科技工士会連合会の大会で、学生と有資格者の部門を設け、当日に示された歯を資料なしで彫刻する形式です。32

和田精密歯研の歯科技工G-1グランプリは、学校を通じて応募する学生の石膏彫刻競技です。2026年は第17回で、本科と専攻科・研修科の部門があります。作品の提出締切は同年9月14日で、結果発表は10月下旬の予定です。33

日本デジタル歯科学会のコンペティションは、会員資格、学術大会への参加、模型の提出などの条件を設けています。2026年5月の大会では、福井優人さんの「アバター」のナヴィ族の頭蓋と歯列をデジタルで再現した作品が最優秀賞となりました。名倉花乃さんの「Characterized vs Monolithic」が優秀賞で、公式レポートに作品が紹介されています。34造形や表現の成果を知る資料として読むと、デジタル技工の広がりが分かるでしょう。

モリタ歯科技工登竜門2026は、約10年ぶりに開催されました。ポーセレンビルドアップ、ジルコニアモノリシック、CADデザイン、3Dプリントデンチャーの4部門です。歯科技工士資格のほか、過去の技工コンテスト受賞歴がないことなどの応募条件を設けています。35紹介した2026年大会の募集は終了しています。次回の開催や募集は各主催者の案内で確認する必要があり、これらを技能五輪の日本代表選考会とみなすことはできません。

国際競技から見えてくる歯科技工の仕事

技能五輪の歯科補綴は、形を作る手技と設計を重視し、デジタル技術や品質確認、連携までを含む仕事を見せています。1,17

上海大会では4か国の選手が競い、日本からの出場はありませんでした。一方で、日本の歯科技工士が入賞した国際コンテストや、学生・有資格者が技能を発表する国内の場は存在します。8,31,32,33,34,35それぞれの競技が何を評価しているかを知ると、結果の数字だけでなく、口の中に入れる被せ物などの歯科補綴物がどのようにして完成に至るのかを読み取れるでしょう。

歯科技工の仕事に関心がある方は、写真や作品と、設計から製作・確認までの基準を合わせて見てみてください。出場を目指す方は、学校や勤務先とともに、愛知大会の職種別情報と代表選考の動きを追うところから準備を始めるのがよいでしょう。

参考文献

  1. WorldSkills International. Revealing the mastery behind the magic. 2026年9月21日。
  2. 厚生労働省. 令和8年版 厚生労働白書. 第2部第1章「各種技能競技大会等の推進」、148〜150ページ、図表1-4-3。
  3. WorldSkills International. Seven new skills confirmed for WorldSkills Competition 2026. 2025年10月7日。
  4. SHINING 3D. Dental Prosthetics joins WorldSkills 2026. 2025年10月16日。WorldSkillsとの歩み(日本語)。
  5. 中央職業能力開発協会. 第48回技能五輪国際大会 最新情報. 公募資料、職種概要、日本代表選手の選考方針。
  6. WorldSkills International. About us. 歴史の紹介。
  7. 厚生労働省. 第48回技能五輪国際大会の日本選手団の成績を公表します. 2026年9月29日。添付の日本代表選手成績表。
  8. WorldSkills International. WorldSkills Shanghai 2026. 掲載資料「Official Results for all skills」。歯科補綴は67ページ、出場規模は各職種の成績表から集計。
  9. 湖北省人力資源和社会保障庁. 郭夏亭選手の金メダルと競技を紹介する記事. 湖北日報、2026年9月28日。
  10. WorldSkills International. Technical Description — Dental Prosthetics, WSC2026_TD42_en. JAVADA掲載の英語原文。2025年11月6日更新。4ページ、17〜19ページ。
  11. Shanghai Municipal Government. WorldSkills Shanghai 2026競技写真. 2026年9月24日。歯科補綴の韓国代表、撮影9月23日。
  12. 湖北省教育庁. 湖北职校女孩郭夏亭斩获世界技能大赛金牌. 湖北日報、2026年9月28日。
  13. Saveetha Dental College. January Newsletter 2026. 23ページ。
  14. 新丘大学学内報. 자랑스러운 신구의 건아들, 제48회 국제기능올림픽대회 출전. 歯科技工学科卒業生の紹介。
  15. ブラジル全国工業連盟(CNI). Veja quem vai representar o Brasil na WorldSkills Shanghai 2026. 大会訓練と大学の両立を紹介する記事.
  16. WorldSkills International. Flickr「Dental Prosthetics」公式アルバム.
  17. WorldSkills International. WorldSkills Occupational Standards — Dental Prosthetics, Shanghai 2026. 2026年版。WSOSの作成・更新の説明。
  18. 厚生労働省. 歯科技工士法. 第2条、第18条、第20条。
  19. 厚生労働省. 職業情報提供サイト job tag「歯科技工士」.
  20. 厚生労働省. 中央社会保険医療協議会総会(第616回)議事次第. 2025年9月10日。総-1参考「歯科医療(その1)参考資料1:歯科医療を取り巻く現状及び歯科医療提供体制」、33ページ「光学印象の新設(令和6年度診療報酬改定)」。
  21. 厚生労働省. 歯科技工士の業務のあり方等に関する検討会中間報告(第二次). 2026年10月1日。報告本文、6〜7ページ。
  22. WorldSkills Japan. WorldSkills Aichi 2028. 日程、会場、開催概要。
  23. WorldSkills International. Competition Rules v11.1. 掲載資料競技規則(英語)、3.1.11 Competitor’s eligibility、11ページ。
  24. WorldSkills International. How to compete.
  25. 厚生労働省. 歯科技工士学校養成所指定規則. 第2条。
  26. 厚生労働省. 医道審議会歯科医師分科会歯科医師臨床研修部会(令和6年度第2回)資料. 2024年7月30日。参考資料1「歯科医師臨床研修を取りまく状況」、3ページ。
  27. 厚生労働省. 歯科医師法. 第2条、第11条、第16条の2。
  28. デンツプライシロナ. CEREC:デジタルチェアサイド歯科治療. スキャン、設計、製作の院内ワークフロー。
  29. CANDULOR. KunstZahnWerk Competition 2025.
  30. Ivoclar. Smile Award 2026 — Terms and Conditions.
  31. Ivoclar. Smile Award 2026 受賞者.
  32. 東京科学大学. 口腔保健工学専攻「イベント」. 国内・国際学生コンテストと「ほるほる」の活動記録。
  33. 和田精密歯研. 歯科技工G-1グランプリ. 第17回、2026年。
  34. 日本デジタル歯科学会. 第17回学術大会・歯科技工作品コンペティション報告. 2026年。応募条件を記載した募集資料。
  35. モリタ. モリタ歯科技工登竜門2026.


執筆・監修 中村 瞬
かわせみデンタルクリニック 院長 / 歯学博士(歯科麻酔学)/ 日本歯科麻酔科学会 認定医
医療記事を数多く執筆。TV取材多数
医学的根拠(エビデンス)に基づく、正確で分かりやすい情報を患者目線でお届けします。


かわせみデンタルクリニック|船橋の歯医者・矯正歯科

所在地:〒273-0005 千葉県船橋市本町6丁目3−20 ベルヴィル船橋本町 1階B号室
電話番号:047-409-2988
JR・東武鉄道「船橋」駅 徒歩4分
平日 9:00 ~ 13:00 14:30 ~ 18:00
土曜 9:00 ~ 13:00 14:00 ~ 17:00
(休診:日曜・月曜・祝日)

当院は、初診時にしっかりと検査を行い、歯周病・虫歯・根管治療から矯正歯科・小児矯正まで、丁寧にご説明のうえで治療を進める方針です。
治療後も再発予防に努め、安心して通える歯科医院を目指します。