子どもの歯並びは「寝るとき口が開く」「あまり噛まない」と関係する?
黒石市の調査では、保護者が見た「寝るとき口が開く」「あまり噛まない」と、2年後の歯の重なりに関連がありました。歯並びが気になるときは、眠り方と食べ方も診察時に伝えましょう。
1. 寝るとき口が開く子やあまり噛まない子で、2年後の歯の重なりが多かった
眠り方や食べ方で気づいたことは、歯並びを相談するときの手がかりになります。
ライオン、弘前大学、青森県黒石市は2026年7月21日、共同調査の結果を公表しました。発表は弘前大学の研究トピックスに掲載され、三者連名の発表資料にも調査方法と結果が示されています。1
調査開始時に歯が重なっていなかった小学3・4年生272人を、2年後まで追いました。保護者が初めに「眠るとき口がよく開いている」または「時々開いている」と答えた子どもでは、そうでない子どもより、2年後に歯が重なった割合が高い結果でした。「食事の際にあまり噛んでいない」という回答についても、同じ傾向が見られました。1
ここで使われたのは、保護者の観察による回答です。鼻と口からの気流量や、実際に噛んだ回数を測定したわけではありません。今回の発表資料に年齢などほかの条件の違いを考慮した結果は示されておらず、口の開き方や食べ方が歯の重なりの原因だと確かめた調査でないことには注意しましょう。1
2. これまでの国内研究との違い
口呼吸と歯の重なりの関連は以前にも報告されています。今回の調査は、睡眠時の様子を先に聞き、2年後に新しく歯が重なるかを確かめました。
同じ黒石市の研究では、三者が2022年に歯の重なりと口呼吸に関する回答などとの関連を発表しました。2 そのデータを使った佐藤らの論文は、小学5・6年生194人を同じ時点で比べ、日中・夜間の呼吸に関する回答と歯の重なりの関連を報告しています。この研究では、複数の条件を考慮する方法でも関連を調べました。今回の2年追跡とは、対象も調べ方も異なります。3
口の働きを直接測った国内研究は、保護者の回答を使った黒石市の調査とは別の角度から歯並びを調べています。大野らが2020年に児童61人を調べたところ、舌で押す力が弱い子どもほど、下の前歯の重なりが大きい傾向がありました。一方、この研究では、噛む力や唇を閉じる力と歯の重なりに、直接の関連は見つかりませんでした。4 藤原らは2025年、児童66人を継続して調べ、噛むときの顎の動きや力と、歯列の幅などの変化との関連を報告しています。5
3. 海外研究が示す範囲
海外の研究では、口呼吸の子どもと鼻呼吸の子どもで、顎や前歯の傾きに違いが報告されています。別の研究では、歯が重なった子どもに軟らかい食事が多く見られました。
2021年には、子どもの口呼吸と顎の骨の形を比べた10件の研究をまとめた報告が出ています。口呼吸の子どもでは鼻呼吸の子どもより、上下の顎が後ろ・下向きに傾き、上の前歯が唇の方向へ傾く傾向が報告されました。顎や歯の傾きを比べた結果であり、2年後の歯の重なりを追った結果ではありません。6
食事については、ペナらが2008年、ブラジルの7~12歳の児童60人を調べ、歯が重なったグループには軟らかい食事が多く、重なりのないグループには硬い食事が多いと報告しました。7
米国小児歯科学会の診療指針は、口の習慣と歯や顔の発育の関連を、因果関係とは区別しています。また、噛む・飲み込むときに歯へ加わる短時間の力が、歯の位置を大きく変える証拠はないと述べています。8
4. 子どもの様子が気になったら
歯の重なりは歯科で相談し、眠り方や食べ方も伝えましょう。口を開けて眠ることが続き、鼻づまりやいびきもあるときは小児科・耳鼻咽喉科にも相談してください。
前歯が重なってきた、永久歯の生える場所が気になるときは、歯科で生え変わりと顎の状態を確認してもらうのがよいでしょう。食事で噛みにくそうにする、食べるのに時間がかかるといった困りごとも、診察時に伝えられます。息が止まる様子を見た場合は、早めに医療機関へ相談しましょう。米国小児歯科学会の指針は、いびき・無呼吸・鼻づまりを確認事項に挙げ、医療者との連携に言及しています。8
今回の調査では、保護者が見た眠り方・食べ方と、2年後の歯の重なりに関連がありました。歯科では、気になる様子と実際の歯の生え方を伝えてください。かわせみデンタルクリニックでも、お子さまの歯並びについて矯正歯科・小児矯正の相談を受け付けています。
参考文献
- 弘前大学・ライオン・青森県黒石市.「睡眠時の口呼吸」や「あまり噛まない」習慣が歯並び悪化に関与する可能性を確認.2026年7月21日.
- 弘前大学健康未来イノベーション研究機構.歯並びの状態と日常の生活習慣や癖が関係する可能性を確認.2022年10月31日.
- Sato K, et al. Relationship between crowded dentition and oral habits in Japanese children aged 10–12 years: A cross-sectional study from the Kuroishi Oral Health Study. Global Pediatrics. 2026;17:100345. doi:10.1016/j.gpeds.2026.100345.
- Ohno Y, et al. Relationship between oral function and mandibular anterior crowding in early mixed dentition. Clinical and Experimental Dental Research. 2020;6:529-536. doi:10.1002/cre2.306.
- Fujiwara Y, et al. Influence of oral function on the occurrence of crowding in Japanese children: an epidemiological study using longitudinal data from the general population. Clinical and Investigative Orthodontics. 2025;84:11-19. doi:10.1080/27705781.2024.2447681.
- Zhao Z, et al. Effects of mouth breathing on facial skeletal development in children: a systematic review and meta-analysis. BMC Oral Health. 2021;21:108. doi:10.1186/s12903-021-01458-7.
- Pena CR, et al. Características do tipo de alimentação e da fala de crianças com e sem apinhamento dentário. Revista CEFAC. 2008;10:58-67. doi:10.1590/S1516-18462008000100009.
- American Academy of Pediatric Dentistry. Management of the Developing Dentition and Occlusion in Pediatric Dentistry. The Reference Manual of Pediatric Dentistry. 2025:497-515.
執筆・監修 中村 瞬
かわせみデンタルクリニック 院長 / 歯学博士(歯科麻酔学)/ 日本歯科麻酔科学会 認定医
医療記事を数多く執筆。TV取材多数
医学的根拠(エビデンス)に基づく、正確で分かりやすい情報を患者目線でお届けします。
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