歯に関する古典的な文献や、それにまつわる編纂について
以下では、歯や口腔に関する古代から近世に至る主要な古典文献や、それにまつわる編纂について、著者・成立年代・主な内容の観点からまとめました。
| 文献名 | 著者・編者 | 成立年代(西暦) | 主な内容 |
|---|---|---|---|
| Epidemics(『疫論』) | ヒポクラテス | 紀元前5世紀 | 顔面形態と歯の不正咬合への言及。「歯は口蓋の形状と関連し、乱れやすい」などを記載[1]。 |
| De Medicina(『医学論』) | アウルス・コルネリウス・ケルスス | 紀元前1世紀 | 小児の混合歯列への対処法(過剰萌出歯の抜去と指圧による誘導)を初めて体系的に記述[1]。 |
| 医師の誓い | ヒポクラテス | 紀元前5世紀頃 | 歯形成・萌出・歯痛時の抜歯・焼灼療法などを含む口腔ケアの基本原則を示す(乳歯の脱落と永久歯の形成など)[2]。 |
| De Morbis Acutis(『急病論』) | ガレノス | 2世紀 | 金属やファイルを用いた歯冠修正(過長歯の研磨)を推奨。痛みを軽減するための分割的実施についても言及[1]。 |
| Le Chirurgien Dentiste(『歯科外科医』) | ピエール・フォシャール | 1728年 | 近代歯科・矯正歯科の創始書。抜歯器具の改良、歯列矯正装置の原型、術後予後に関する古典引用を多数掲載[3]。 |
| “Traité des Dents”(『歯科論』) | ルイ・ブルデ | 1754年 | 小臼歯抜去による咬合改善法を初めて提唱。抜歯と歯列矯正の関係を体系化し、近代矯正学の基礎を築く[3]。 |
| 養生訓 | 貝原益軒 | 1712年 | 口中洗浄法、楊枝・紺子(歯間清掃具)の使用法、歯茎研磨・歯石除去など、江戸期の口腔衛生法を詳細に記述[4]。 |
| 小児必用養育草 | 山脇東洋 | 1703年 | 乳幼児の歯磨き法、口腔の観察・清掃習慣を示す。楊枝使用や口中洗浄の具体例を収録[4]。 |
| 延寿撮要 | 賀茂真淵ほか | 1599年 | 医学・養生書。口腔洗浄や歯の強化法を論じ、歯石防止の観点から早期の口腔ケアを推奨[5]。 |
| 中国に於ける欠歯の風習について | 不詳(中国史料集成) | 唐代頃 | 部族ごとの欠歯(装飾・通過儀礼)慣習を概説。歯牙変工と社会風習の関係を史料から考察[5]。 |
| 古代ローマ帝国の歯科医学(その1) | 不詳(日本歯科医史学会収録) | 近現代編纂 | ケルスス・ガレノス以来の文献をまとめ、古代ローマ期の歯科知識と器具使用を俯瞰的に紹介[6]。 |
主なポイント
- 古代ギリシャ・ローマ期では、歯の萌出・形成、歯痛への外科的対処、小児歯列管理に関する記述が散見されます[1,2]。
- 中世以降のヨーロッパでは、フォシャールやブルデらが抜歯・矯正を体系化し、近代歯科・矯正学の礎を築きました[3]。
- 東アジア圏では、日本の養生書(『養生訓』『小児必用養育草』『延寿撮要』)や中国史料に口腔衛生・儀礼的歯牙変工が詳述され、早期の口腔ケア習慣がうかがえます[4,5]。
参考文献
- Early Orthodontics – British Orthodontic Society (BOS)
- ヒポクラテス– 長崎県歯科医師会
- ピエール・フォシャール著「歯科外科医」:初版と第2版との相違について [PDF]
- 江戸時代における口腔衛生の認識と方法 [PDF]
- 中国に於ける欠歯の風習について[PDF]
- 古代ローマ帝国の歯科医学(その1)[PDF]
- 古代ローマ帝国の歯科医学(その2)
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この記事の監修者
中村 瞬
かわせみデンタルクリニック 院長 / 歯学博士(歯科麻酔学)/ 日本歯科麻酔科学会 認定医
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