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子どもの歯並びは「自然と勝手に治る」ことがある? —— 自然改善のしくみと、おうちでできる生活習慣

目次

  1. 自然改善とは何か
  2. どんな歯並びが自然に治りやすい?
  3. どんな歯並びは自然に治りにくい?
  4. 自然改善を「後押しする」生活習慣
  5. いつまで様子を見てよい?受診のタイミングの目安

1. 自然改善とは何か

「この歯並びは自然に治ることもありますよ」と歯科で言われることがあります。
このときの「自然に治る」はなぜ起きるのでしょうか。

自然改善とは、矯正装置などで積極的に歯を動かさなくても、
・あごの成長
・歯の生え変わり
・舌やくちびる、ほっぺの力のバランスの変化
などによって、不正咬合(噛み合わせのズレ・歯並びの乱れ)が自然に弱まったり消えたりする現象を指します。

海外の縦断研究(同じ子どもを3歳→7歳→11.5歳と追いかけた研究)では、
不正咬合の割合は

  • 3歳:71%
  • 7歳:56%
  • 11.5歳:71%
    と報告されています。

数字だけ見ると「結局変わっていない」のですが、
中身をよく見ると

  • 一部の不正咬合は成長とともに自然に治る
  • 代わりに別のタイプの不正咬合が新たに出てくる
    という「入れ替わり」が起こっていることが分かっています。

つまり、不正咬合は
子どもの成長の中で、良くなったり悪くなったりを繰り返す“動きのある現象”
であり、全部が自然に治るわけでも、全部が放っておくと悪くなるわけでもありません。

2. どんな歯並びが自然に治りやすい?

縦断研究やシステマティックレビューから、「比較的自然に治りやすい」とされるのは、主に乳歯列〜混合歯列(3〜8歳ごろ)で見られるタイプです。

2-1. 自力矯正しやすい代表的なタイプ

表1 自然改善しやすいとされる不正咬合(目安)

不正咬合のタイプよく見られる時期自然改善のめやす特徴・ポイント
前歯部の開咬
(上下の前歯が噛み合わない)
乳歯列〜早期混合歯列(3〜8歳)多くの研究で8〜9割以上が小学生のうちに閉じると報告指しゃぶりや舌の癖がなくなると治りやすい。
乳歯列のClass II
(少し出っ歯ぎみ)
乳歯列(3〜6歳)約8割前後が正常なClass Iに移行したというデータあり顎の成長と生え変わりで改善することが多い。
乳歯列の一側性臼歯部交叉咬合乳歯列(3〜6歳)約8割前後が自然に改善したとの報告機能的な「ずれ噛み」が原因のことが多い。
軽い過大オーバージェット
(上の前歯がやや出ている)
乳歯列〜早期混合歯列(3〜8歳)研究により幅はあるが、半数以上で軽くなるという報告習癖と顎の成長次第で変わりやすい。
乳歯列の軽い反対咬合(受け口傾向)乳歯列(3〜5歳)約半数〜7割程度が自然に改善したとする報告もある真の骨格性かどうかで予後が大きく変わる。

※割合は複数研究のまとめからの概略で、すべての子に当てはまるわけではありません。

2-2. 前歯の「開咬」はかなり治りやすい

前歯が噛み合わず、すき間が空いている「前歯部開咬」は、
・指しゃぶり
・おしゃぶり
・舌で前歯を押す癖
などとセットで見られることが多いです。

縦断研究では、

  • 3歳時に開咬だった子どもの約87%が7歳までに自然に閉じ、
  • 11.5歳まで追うと、ほぼ全例で開咬が消えていた
    と報告されています。

ただしこれは

  • 習癖がだんだん減っていく
  • 顎や歯の成長がスムーズに進む
    といった条件がそろった場合の話で、癖が長く続いていると治りにくくなります。

3. どんな歯並びは自然に治りにくい?

反対に、「様子を見ているだけでは治りにくい」「むしろ年齢とともに増えたり悪化しやすい」とされる不正咬合もあります。

3-1. 自然改善が期待しにくいタイプ

表2 自然に治りにくい/悪化しやすい不正咬合

不正咬合のタイプ成長とともにどうなりやすいか注意ポイント
叢生
(デコボコ・スペース不足)
永久歯が生えてくる時期に新たに増えやすい顎の幅が小さい・歯が大きいと、自然には並びにくい。
ディープバイト
(噛み込みが深い)
3歳→11.5歳で有病率が約3倍に増えたという報告縦方向の噛み込みは自然に浅くなるより、深くなるケースが目立つ。
永久歯列のClass II
(はっきりした出っ歯)
成長完了後は自然改善しづらい骨格の問題が絡むと、装置がないと変えにくい。
骨格性の反対咬合
(受け口)
下顎の成長期に悪化することが多い早期に見極め・介入しないと手術が必要になることも。
永久歯列の臼歯部交叉咬合顎のねじれ・顎関節症状につながることも上顎の幅が狭いタイプは自然改善はほぼ期待できず、拡大が必要。

3-2. 「放っておくと増える」側の代表例

先ほどの縦断研究では、乳歯列から早期永久歯列にかけて

  • ディープバイト(深い噛み込み)が
    3歳で約6% → 11.5歳で約18%に増加していた
    と報告されています。

また、デコボコ(叢生)やスペースの問題も、

  • 永久歯が生えてくる時期に新たに出てくることが多く、
  • 「勝手に並んでいく」より「スペース不足が目立ってくる」ことの方が多い
    とされています。

このため、
「小さいうちだからそのうち全部治るだろう」
という期待は危険で、
「治りやすいタイプ」と「悪化しやすいタイプ」を見極めることがとても大切になります。

4. 自然改善を「後押しする」生活習慣

生活習慣でできることは、
「歯を自分の力で動かす」ことではなく、
「本来持っている自然な改善力を邪魔しない・支える」ことです。

4-1. 口呼吸から鼻呼吸へ

  • 口でポカンと呼吸する癖が続くと、下あごが後ろ・下に下がりやすく、
    上顎前突(出っ歯)や開咬、上顎の幅の不足につながりやすいと考えられています。
  • 鼻呼吸に近づくほど、舌が上顎に当たりやすくなり、上顎の横幅の発育や、前歯部開咬の自然改善を後押ししやすくなります。

できること

  • 普段から「くちびるを軽く閉じて鼻で呼吸する」ことを親子で意識する
  • アレルギー性鼻炎やアデノイドなどで鼻が通らない場合は、耳鼻科での治療や相談も検討する

4-2. 舌の位置と飲み込み方(舌癖の改善)

  • 何もしていないとき、舌先は「上の前歯の少し後ろ(スポット)」に触れているのが理想的とされています。
  • 飲み込むたびに舌が前歯を押していると、開咬や出っ歯が治りにくく、せっかくの自然改善を妨げます。

意識のポイント

  • 「お口を閉じているとき、舌はどこにある?」と時々子どもに聞いてみる
  • 飲み込みのとき、舌で前歯を強く押していないかチェックする
  • 気になる場合は、歯科でMFT(口腔筋機能療法)の指導を受ける

4-3. よく噛んで食べる・左右バランスよく噛む

  • よく噛む習慣は、咀嚼筋や顎骨への適切な刺激となり、顎の幅や長さの発育を助けます。
  • やわらかいもの中心・片側だけで噛む習慣は、顎の成長不足や左右差、叢生・交叉咬合のリスクを高める要因と考えられます。

生活で意識したいこと

  • 一口あたりよく噛む(目安20〜30回)
  • 「いつも同じ側ばかり」で噛んでいないか気にしてみる
  • 年齢に応じて、少し噛みごたえのある食材(根菜、繊維のある野菜、適度な硬さの肉や魚)を取り入れる

4-4. 姿勢・頬杖・寝方

  • 長時間の猫背やスマホ前傾姿勢、片側だけの頬杖、うつ伏せ寝・片側だけの横向き寝などは、
    顎の位置のズレや顔面の左右差、交叉咬合の一因になりうると考えられています。

気をつけたいポイント

  • 勉強やタブレット使用のとき、頭が前に出すぎないようにイスと机の高さを調整する
  • 頬杖をしているときに家族が声をかけてやめさせる
  • できる範囲で仰向け寝を基本にし、うつ伏せ・同じ側ばかりの横向きは減らす

4-5. 指しゃぶり・おしゃぶり・その他の癖

  • 指しゃぶり・長期のおしゃぶり・舌で前歯を押す癖は、前歯部開咬や出っ歯の最大の妨げです。
  • 一方で、これらの癖がやめられると、前歯部開咬が「かなりの割合で自然に閉じる」ことが縦断研究で示されています。

目安として

  • 3〜4歳を過ぎても日中も頻繁にしゃぶっている
  • 歯並びや噛み合わせに明らかな影響が出ている
    ような場合は、小児歯科や矯正歯科で相談しつつ、遊びやごほうびなどを活用して少しずつ減らすことがすすめられます。

5. いつまで様子を見てよい?受診のタイミングの目安

「このまま自然に治るのか、それとも早めに矯正相談に行った方がいいのか」は、
・不正咬合のタイプ
・年齢(歯の生え変わりの段階)
によって変わります。

5-1. 歯の生え変わり段階ごとの考え方

表3 歯の時期別・“様子見”の目安

歯の時期・年齢の目安自然改善を期待しやすいケース早めの相談を勧めたいケース
乳歯列期(3〜5歳)軽い前歯の開咬、軽い乳歯列Class II、一時的なずれ噛みはっきりした受け口、顔の左右差が目立つ
早期混合歯列(6〜8歳)開咬が少しずつ閉じてきている、習癖が減ってきている叢生・受け口・臼歯部交叉咬合がはっきり出ている
中〜後期混合歯列(9〜11歳)軽い出っ歯・開咬で改善傾向がはっきりしているもの叢生、ディープバイト、骨格性の受け口、交叉咬合
永久歯列(12歳以降)ごく軽いズレ・小さなスペース程度中等度以上のズレの多く(様子見での改善は期待薄)

あくまで「一般的な目安」ですが、

  • 6〜7歳時点で前歯の開咬がまったく改善していない
  • 早くから明らかな受け口・出っ歯・デコボコやガタガタがある
  • 顎が横にずれて噛んでいる
  • 見た目や噛みにくさが、本人のコンプレックスや日常生活に影響している
    といった場合は、一度かかりつけの歯科で評価してもらうことをおすすめします。

5-2. 「自分で無理やり治そうとする自力矯正」はNG

最後に重要なポイントとして、

  • 指で歯を押す
  • 市販の器具やゴムなどで独自に力をかける
    といった「自己流の歯の移動」は、
    歯根吸収・歯の揺れ・咬み合わせの悪化などのリスクが高く、絶対におすすめできません。

生活習慣でできるのはあくまで
「自然な成長と自力矯正を支える土台づくり」
であり、歯そのものを動かすのは、専門的な矯正治療の役割です。

参考文献

  1. Prevalence and change of malocclusions from primary to early permanent dentition: A longitudinal study (2015)
    乳歯列から早期永久歯列への不正咬合の有病率と変化:縦断研究
    https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8610411/
  2. The Changes in Orthodontic Treatment Need in Children Over Time: A Longitudinal Evaluation of Self-Correcting Malocclusions (2025)
    子どもの矯正治療必要度の経時的変化:自己修正する不正咬合の縦断的評価(システマティックレビュー)
    https://saudijournals.com/media/articles/SJODR_1012_503-510_BDc.pdf
  3. Orthodontic treatment for posterior crossbites (2021)
    臼歯部交叉咬合に対する矯正治療
    https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8709729/
  4. Orthodontic Intervention: Pediatric Class II Malocclusion (2025)
    小児のClass II不正咬合に対する早期矯正介入
    https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC12651552/
  5. Development of Jaw and Deciduous Teeth in Japanese Children —Comparing Size of Crown and Alveolar Area between Today and 40 Years Ago— (2018)
    日本人小児の顎および乳歯の発育:40年前との比較による歯冠と歯槽部の大きさの変化
    https://www.jstage.jst.go.jp/article/tdcpublication/59/3/59_2017-0033/_pdf

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執筆・監修 中村 瞬
かわせみデンタルクリニック 院長 / 歯学博士(歯科麻酔学)/ 日本歯科麻酔科学会 認定医
医療記事をほぼ毎日更新中・TV取材多数
医学的根拠(エビデンス)に基づいた正確で分かりやすい情報を患者目線でお届けしています。


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