舌がん予防にHPVワクチン(子宮頸がんワクチン)は役立つ? —— 素朴な疑問をやさしく解説
目次
- はじめに:舌がんとHPVの関係
- 舌がんの原因としてのHPVはどれくらい?
- HPVワクチンはどれくらい効く?(口の中・のどのHPV感染)
- 「舌がん予防」という視点から見たHPVワクチンの位置づけ
- 舌がんを防ぐために日常生活でできること
- まとめ:HPVワクチンは「舌がん専用ワクチン」ではないが重要
1. はじめに:舌がんとHPVの関係
舌がんというと、「タバコやお酒」が原因というイメージが強い一方で、「HPV(ヒトパピローマウイルス)でも舌がんになるのでは?」という疑問を持つ方も増えています。
実際、HPVは子宮頸がんだけでなく、喉の奥の中咽頭がん(扁桃や舌の付け根)と強く関係しており、その一部はワクチンで予防できることが分かってきました。
ここでは、「舌がんのうちHPVが原因の割合」「HPVワクチンの効果」「舌がん予防との関係」を、一般の方向けにかみ砕いて解説します。
2. 舌がんの原因としてのHPVはどれくらい?
2-1. 口腔がん全体におけるHPVの割合
舌がんは、医学的には「口腔がん(口の中のがん)」の一部と考えられます。
口の中のがんをまとめて調べた大規模な解析では、口腔がん全体でHPVが見つかったのは、だいたい100人中6人くらいという結果でした。
研究ごとに「HPVが全く見つからない」ものから「約3割で見つかる」ものまで幅はありますが、全体として見ると、ほとんどの患者さんはHPVが陰性で、「HPVは口腔がんの主な原因とは言いにくい」とされています。
別の詳しい調査でも、口の中のがんのうち「HPVが実際にがんの原因として働いている」と判断できたのは、100人中4〜5人程度にとどまり、「HPVと口腔がんの関係は限定的」と結論づけられています。
2-2. 舌がん(舌前方)に限った場合
舌の中でも、前側の「動かせる部分(可動部舌)」と、奥の「舌の付け根(舌根)」では性質が異なります。
可動部舌がんだけを調べた研究では、HPVの感染自体は確認されるものの、「高リスク型HPVがはっきり主要な原因とは言えない」という結果が多く報告されています。
また、メタ解析では「舌は口腔の中では比較的HPVが見つかりやすい部位」とされていますが、それでも口腔がん全体としてのHPV陽性率が数%台であることから、舌がん全体のうちHPVが関わっているのは「おおよそ一部、数%程度」と考えるのが現実的です。
つまり、
- 舌がんの多くはタバコやお酒などが主な原因
- HPVが原因とみなせる舌がんは「少数派」
というイメージが、今わかっている医学的な知見に近いと考えられます。
3. HPVワクチンはどれくらい効く?(口の中・のどのHPV感染)
3-1. 口腔・中咽頭のHPV感染に対する効果
HPVワクチンは、もともと子宮頸がんなどを防ぐために作られたワクチンです。
しかし同じウイルスが、口の中や喉の奥にも感染して、がんの原因になることが分かってきました。
口の中や喉の奥のHPV感染に対するワクチンの効果をまとめた研究では、次のような結果が出ています。
- ワクチンでカバーされているタイプ(16型・18型など)のHPV感染は、ワクチンを打った人では、打っていない人に比べて「およそ10人中8人以上が防げている」というレベルまで減少していました。
- 多くの参加者で、唾液などの検査からHPV16に対する抗体が見つかり、ワクチンによって口の中や喉にも「ウイルスから守る力」がしっかりできていることが確認されています。
現在よく使われている9価HPVワクチン(ガーダシル9)は、口腔がん・中咽頭がんでも見つかることが多い高リスク型HPV(16・18・31・33・45・52など)の多くをカバーしています。
そのため、理論的には「口の中や喉の奥で、HPVが原因となるタイプのがんを減らす」ことが期待されています。
3-2. 実際の「がん」の発生に対する効果
「感染が減る」だけでなく、「実際にがんになる人の数が減っているか」も重要なポイントです。
アメリカの大規模な調査では、約170万人以上のカルテを解析し、HPVワクチンを打った人と打っていない人で、口の中・喉のがんがどれくらい起きているかを比較しました。
その結果、
- ワクチンを打った人では、口の中や喉の奥のがんになっている人の割合が、打っていない人に比べて「非常に少ない」という結果になりました。
- 喫煙や飲酒など、他の危険因子の影響を差し引いて計算し直しても、「ワクチンを打っている人は、打っていない人より、口の中・喉のがんになっている割合がかなり低い」という傾向は変わりませんでした。
また、主に男性を対象にしたレビューでは、
- HPVワクチンを打った男性は、喉の奥の中咽頭がんの原因となるHPV感染や、その前段階の異常が少ない
という結果が複数の研究で示されており、「男性・女性どちらにもワクチンを打つことが、中咽頭がんの予防にとって望ましい」とまとめられています。
ただし、中咽頭がんが実際に発症するまでには長い年月がかかるため、
- 「ワクチン導入から何十年も経ったときに、がんがどれくらい減っているか」
を正確に評価するには、今後も長期の追跡が必要とされています。
4. 「舌がん予防」という視点から見たHPVワクチンの位置づけ
4-1. 舌がんへの直接的な効果は「限定的」
ここまでの内容を、「舌がん」という視点で整理すると次のようになります。
- 舌がんのうち、HPVが原因と考えられるのは全体の一部(おおよそ数%程度)にとどまる。
- そのため、「舌がん全体」をHPVワクチンだけで大きく減らす、というイメージにはなりません。
- 現時点では、舌がん予防の主役はHPVワクチンではなく、「タバコ・お酒などの生活習慣の見直し」と考えるのが自然です。
ただし、
- HPVワクチンによって口の中や喉のHPV感染が大きく減ること、
- HPVが関係しているタイプの口腔・中咽頭がんが少なくなること、
が示されているため、舌がんの中でも「HPVが関わっている一部のタイプ」に対しては、ワクチンによる予防効果がある程度期待できると考えられます。
4-2. 中咽頭がん予防という意味では重要
一方で、舌の付け根を含む「中咽頭」と呼ばれる領域では、HPVが原因のがんが増えており、ここではHPVが非常に重要なリスク因子になっています。
- 欧米の一部の国では、HPVが原因の中咽頭がんが、タバコが主な原因の中咽頭がんを上回りつつあると報告されています。
- この領域のがんに対しては、HPVワクチンが将来的に大きな予防効果を持つと期待されており、「男女ともに若いうちに接種すること」が推奨されています。
そのため、HPVワクチンは
- 「舌がんだけを防ぐワクチン」ではありませんが、
- 中咽頭がん(舌の付け根を含む)や、子宮頸がん・肛門がん・陰茎がんなど、さまざまなHPV関連がん全体を減らす中で、
- 舌を含む口腔のHPV関連がんも一部減らしている
という位置づけで考えると理解しやすいと思います。
5. 舌がんを防ぐために日常生活でできること
HPVワクチンだけに頼らず、舌がん全体のリスクを下げるには、生活習慣と口腔ケアが非常に大切です。
禁煙
- タバコ(紙巻き・加熱式・葉巻などの種類を問わず)は、舌がんを含め、口の中のがんの最大の原因のひとつです。
節酒
- アルコールも舌がんの大きな危険因子です。タバコとお酒を両方とると、リスクがさらに高くなります。
口の中の慢性的な刺激を減らす
- 合わない入れ歯、尖った歯、欠けたまま放置された歯などが舌に長くあたると、長期的な刺激となり、がんのリスクを高める可能性が指摘されています。
- 「同じ場所の口内炎がなかなか治らない」「舌がいつも同じところで擦れて痛い」などの症状がある場合は、早めに歯科や口腔外科を受診してください。
定期的な歯科受診
- 初期の舌がんは、小さな白い斑点や赤い斑点、治りにくい口内炎のような形で現れることがあります。
- 自分では見えにくい場所もあるため、定期検診で専門家にチェックしてもらうことが、早期発見と早期治療につながります。
6. まとめ:HPVワクチンは「舌がん専用ワクチン」ではないが重要
最後に、よくある疑問を整理しておきます。
Q. 舌がんのうち、HPVが原因のものはどれくらい?
- 口の中のがん全体で見ると、HPVが原因と考えられるのはおよそ数%程度にとどまります。
- 舌前方のがんでは、今のところ「多くはHPV以外の原因による」と考えるのが妥当です。
Q. HPVワクチンは舌がん予防に役立つ?
- 舌がん全体を大きく減らすという意味では、HPVワクチンの影響は限定的です。
- ただし、HPVが関わる一部の舌がんや、口腔・中咽頭のHPV関連がんを減らすことは期待できます。特に中咽頭がん予防という点では重要な役割を持ちます。
Q. HPVワクチンはどれくらい効果がある?
- 口の中や喉の奥の、ワクチンが対象とするタイプのHPV感染は、ワクチン接種によっておよそ「10人中8人以上」で防げている、という結果が出ています。
- 実際のがんの発生についても、「ワクチンを打った人のほうが、口の中や喉のがんになる人が明らかに少ない」という大規模なデータが出てきています。
HPVワクチンは、「舌がんをピンポイントで防ぐワクチン」というより、
- 子宮頸がん
- 中咽頭がん
- 肛門がん・陰茎がん など
さまざまなHPV関連がんのリスクをまとめて下げ、その中の一部として舌を含む口腔のがんも減らす「広い意味でのがん予防ワクチン」として位置づけるとイメージしやすいと思います。
舌がんを含めた口腔がん全体の予防を考えるときは、
- 禁煙
- 節酒
- 口の中の慢性刺激の改善
- 定期的な歯科・口腔外科受診
とあわせて、年齢・性別や生活状況に応じたHPVワクチン接種を検討する、という考え方がおすすめです。
歯を抜いたままで噛めない、2週間以上治らない口内炎やしこりがある場合は、気軽に船橋駅のかわせみデンタルクリニックまでご相談ください。
参考文献
- The Prevalence of HPV in Oral Cavity Squamous Cell Carcinoma (2023)
口腔扁平上皮がんにおけるHPV陽性率のメタ解析
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9964223/ - The Prevalence of Human Papilloma Virus in Squamous Cell Carcinoma of Oral Tongue (2017)
口腔舌扁平上皮がんにおけるHPV感染の頻度と意義
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5831070/ - Human papillomavirus infection and oral squamous cell carcinoma (2020)
口腔扁平上皮がんとHPV感染の関連に関するシステマティックレビュー
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9422740/ - Association of HPV with Oral and Oropharyngeal Cancer (2020)
HPVと口腔・中咽頭がんの関連に関する総説
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11834829/ - The Effect of Prophylactic HPV Vaccines on Oral and Oropharyngeal HPV Infection (2021)
予防的HPVワクチンの口腔・中咽頭HPV感染に対する効果のシステマティックレビュー
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8310210/ - HPV-Vaccine and Reduced Odds Ratio for Oral and Oropharyngeal Cancer (2025)
HPVワクチン接種と口腔・中咽頭がんの発生割合の低下を示した大規模疫学研究
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40836317/ - The effectiveness of HPV vaccination on the incidence of oropharyngeal cancer in men (2023)
男性におけるHPVワクチンと中咽頭がん関連指標の変化に関するレビュー
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10127083/ - Epidemiology of HPV-associated oropharyngeal cancer (2014)
HPV関連中咽頭がんの疫学的特徴
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4444216/
関連記事|船橋の歯医者・矯正歯科|かわせみデンタルクリニック
- 歯周病になると、どんな病気に何倍かかりやすくなるのか —— 歯周病で高まる全身疾患リスク
- 若い世代に増えている舌がん:歯並びとの意外な関係 —— 狭い歯並びと舌側へ傾いた臼歯が関係
- 甘い飲み物が女性の口腔がんリスクを急増させている
- 臓器・腫瘍など全身いたるところで見つかる歯周病菌P.gingivalisの悪性と健康リスク
- 口腔がんについて -HPVワクチンで予防、検診でがんの早期発見を-
- 口腔がんの早期発見でADA2026年ガイドラインが変わった理由とは?
かわせみデンタルクリニック
所在地:〒273-0005 千葉県船橋市本町6丁目3−20 ベルヴィル船橋本町 1階B号室
電話番号:047-409-2988
JR・東武鉄道「船橋」駅 徒歩4分
平日 9:00 ~ 13:00 14:30 ~ 18:00
土曜 9:00 ~ 13:00 14:00 ~ 17:00
(休診:日曜・月曜・祝日)

当院は、初診時にしっかりと検査を行い、虫歯・根管治療から矯正歯科・小児矯正まで、丁寧にご説明のうえで治療を進めています。
治療後も再発予防に努め、安心して通える歯科医院をめざしています。

