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水泳で歯がしみる理由とは? – 酸蝕症・歯ぎしり・食いしばりの可能性を探る

水泳選手では、歯の酸蝕症がよく報告されています。競泳選手では、一般の水泳者や非水泳者より酸蝕が多いことを示す研究があり、長時間のプール曝露や水質の影響が関係すると考えられています1,2。日本ではプール酸蝕症やスイマー酸蝕症と呼ばれることもあるようです。

さらに、アスリート全体では歯ぎしりや食いしばりも少なくありません。最近のシステマティックレビューとメタアナリシスでは、アスリートのブラキシズムは一般人口より高い有病率を示しており、水泳選手を含む研究でも高い頻度が報告されています3,4

水泳選手の口の中で問題になるのは、酸蝕症だけではありません。虫歯、歯肉炎、歯周状態の変化、知覚過敏、歯の着色、顎関節まわりの不調なども報告されており、競技習慣とあわせて考える必要があります5,6

目次

  1. 水泳選手で多い歯科疾患
  2. 酸蝕症の研究結果
  3. 歯ぎしり・食いしばりとの関係
  4. 発生メカニズム
  5. 虫歯と歯周病
  6. 症状の見分け方
  7. 予防と管理
  8. まとめ

1. 水泳選手で多い歯科疾患:まず酸蝕症とブラキシズム

水泳選手で最も多く話題になるのは、歯の酸蝕症です1,2,7。特に競泳選手では、塩素処理されたプールに長時間入ることが多いため、歯が酸の影響を受けやすくなると考えられています1,2

ただし、問題は塩素そのものではありません。重要なのは、プール水が不適切に管理されて低pHになったり、歯の表面が溶けやすい状態になったりすることです1,7,8

加えて、アスリート全体では歯ぎしりや食いしばりも多く、競技中や日常で歯に強い力がかかる可能性があります3,4。水泳選手だけを独立して解析した大規模研究は限られますが、水泳を含む高レベルアスリート集団でブラキシズムが多いことは示されています3,4

2. 酸蝕症の研究結果:有病率は高め

研究ごとに対象者や評価方法が異なるため、数値には幅がありますが、競泳選手で酸蝕が多い傾向は共通しています1,2,9。2023年のエジプトの研究では、競泳選手の60%に酸蝕性歯摩耗があり、非水泳選手では25.6%でした1。2013年のポーランドの研究でも、競泳選手の26%以上に酸蝕が認められ、レクリエーション水泳者より高い結果でした2

1986年の古い報告でも、ガス塩素処理プールで競泳選手の歯のエナメル質酸蝕が確認されています7。また、2000年には極端に酸性に傾いたプール水によって、短期間で重い酸蝕が起きた症例も報告されています8

こうした研究から、競泳選手では酸蝕症が起こりやすいことがわかります。ただし、すべての選手に同じ程度の変化が出るわけではなく、プール管理や生活習慣によって差があります1,2

3. 歯ぎしり・食いしばりとの関係:アスリート全体で多い

ブラキシズムは、歯ぎしりや食いしばりの総称です。2025年のシステマティックレビューとメタアナリシスでは、アスリートのブラキシズム有病率は34%と推定され、一般人口より高い傾向が示されました3。別の2025年メタアナリシスでは、アスリートのブラキシズム有病率は38%で、一般人口の8〜20%より高いと報告されています4

競技別では、格闘技やウエイトリフティングで高率という報告がありますが、オリンピック競技全体でも高い有病率が示されています4。また、水泳を含む高レベル・エリートアスリート116名を対象とした研究では、臨床検査で47%にブラキシズムが認められました3

別の研究では、水泳を含むパラアスリート20名のうち21%にブラキシズムが認められ、さらにパラアスリート271名を対象とした研究では37.9%にブラキシズムが確認されました3。ただし、水泳競技だけの値として切り出せるわけではないため、水泳選手の正確な単独有病率は不明です3

4. 発生メカニズム:溶ける・削れる・割れるが重なる

歯の酸蝕は、歯の表面が酸によって少しずつ溶けることで起こります。競泳選手の場合、プール水のpHが低くなると、エナメル質の主成分であるヒドロキシアパタイトが溶けやすくなります1,2,8

一方で、歯ぎしりでは歯どうしがこすれ、歯の表面が機械的に削れていきます。食いしばりでは、強い力が歯や歯根、詰め物、被せ物に集中し、歯のクラックや破折が起こることがあります4,10

酸蝕症で歯が溶け、歯ぎしりで歯が削れ、食いしばりでクラックや破折が起こると、象牙質が露出しやすくなります。その結果、冷たいものがしみるなどの知覚過敏の原因になることがあります1,4

また、アスリートではトレーニング負荷、心理的プレッシャー、不安、睡眠の質の低下などがブラキシズムと関連すると考えられています4。覚醒時ブラキシズムは睡眠時ブラキシズムより高い有病率を示すとされ、競技中や日中の食いしばりも見逃せません3,4

5. 虫歯と歯周病:酸蝕以外の問題もある

水泳選手では、虫歯や歯周病も報告されています5,6。ただし、競泳選手で特に目立つのは酸蝕症で、虫歯だけが特別に多いとまでは言えません1,2,5

アスリート全体を調べた研究では、虫歯、歯肉炎、歯周状態の問題、口の痛みが少なくないことが示されています5,6。ある研究では、エリート・プロアスリートのう蝕が49.1%、酸蝕性歯摩耗が41.4%、歯肉出血や歯石が77.0%でした6

水泳選手の口腔問題は、プールだけで説明できるわけではありません。食事の回数、スポーツドリンクの摂取、歯みがき習慣、歯周病の有無なども合わせて見る必要があります5,6

6. 症状の見分け方:しみる・すり減る・欠けるに注意

水泳選手の酸蝕は、前歯の表面に出やすいことがあります。前歯の唇側面や口蓋側面が、平らに削れたように見えることもあります2

症状としては、冷たいものがしみる、歯の表面がざらつく、歯が薄くなった感じがする、すき間が目立つようになる、といった変化がみられることがあります1,8。歯ぎしりや食いしばりが重なると、歯のすり減り、咬むと痛い、歯の先端が欠ける、詰め物が外れやすい、朝起きたときに顎がだるい、といった症状も起こりえます4,10

こうした変化は、本人が気づきにくいこともあります。定期的に歯科で確認すると、早い段階で対応しやすくなります1,2,5

7. 予防と管理:プール管理と歯科予防の両輪

予防の基本は、プール水を適切に管理することです1,7,8。pHが大きく下がらないように保つことが重要で、競泳選手の酸蝕予防には水質管理が欠かせません1,2

歯科側では、フッ化物入り歯みがき剤や洗口剤の活用が役立つ可能性があります1。ただし、研究によって効果の示し方には差があるため、これだけで完全に防げるとは言えません1,8

ブラキシズムや食いしばりが疑われる場合は、歯のすり減りやクラック、顎関節症状の確認が重要です。2025年のドイツの研究では、エリートアスリート337名の10%が自己申告のTMD症状を示し、26%が口腔内装置を使用していました10。スポーツ歯科では、必要に応じて口腔内装置や生活指導を検討しますが、競技特性に応じた対応が必要です10

また、トレーニング後の口の乾燥を放置しないことも大切です。水分補給を工夫し、酸性の飲み物をだらだら飲まないようにすると、歯への負担を減らしやすくなります1,9,6

8. まとめ:酸蝕症とブラキシズムの両方に注意

水泳選手では、歯の酸蝕症がよく報告されます。競泳選手では、一般の水泳者や非水泳者より高い頻度で見つかる研究があります1,2,7

さらに、アスリート全体では歯ぎしりや食いしばりも多く、水泳選手を含む研究でも高い有病率が報告されています3,4。酸蝕症で歯が溶け、歯ぎしりで歯が削れ、食いしばりでクラックや破折が起こると、知覚過敏や咬みにくさの原因になることがあります1,4

気になるしみ症状や、前歯の表面が薄くなった感じ、歯のすり減り、朝の顎のだるさがある場合は、早めに歯科で確認することが大切です。酸蝕症やブラキシズムは、初期に見つけるほど負担の少ない対応につながります。

船橋で水泳選手やスポーツをしている方の歯のしみ、酸蝕症、歯ぎしり、食いしばり、虫歯、歯周病について相談したい場合は、かわせみデンタルクリニックをご利用ください。競技習慣や食習慣、顎の使い方も含めて確認し、必要に応じて予防と治療の方針を一緒に考えます。

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参考文献

  1. Erosive tooth wear and salivary parameters among competitive swimmers and non-swimmers in Egypt: a cross-sectional study (2023)
    競泳選手と非水泳選手における侵食性歯摩耗と唾液パラメータ:横断研究
    https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10713671/
  2. Prevalence of dental erosion in adolescent competitive swimmers exposed to gas-chlorinated swimming pool water (2013)
    ガス塩素処理されたプール水に曝露された思春期競泳選手における歯の酸蝕の有病率
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22476450/
  3. Prevalence of Bruxism in Athletes: A Systematic Review and Meta-Analysis (2025)
    アスリートにおけるブラキシズムの有病率:システマティックレビューとメタアナリシス
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40457755/
  4. The Impact of Bruxism on Athletic Performance: a Systematic Review and Meta-analysis (2025)
    ブラキシズムがアスリートの競技パフォーマンスに及ぼす影響:システマティックレビューとメタアナリシス
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40233820/
  5. Orofacial conditions and oral health behavior of young athletes: A comparison of amateur and competitive sports (2022)
    若年アスリートの口腔顔面の状態と口腔保健行動:アマチュアスポーツと競技スポーツの比較
    https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/sms.14143
  6. Oral health and performance impacts in elite and professional athletes (2018)
    エリート・プロアスリートにおける口腔健康とパフォーマンスへの影響
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29938820/
  7. Erosion of dental enamel among competitive swimmers at a gas-chlorinated swimming pool (1986)
    ガス塩素処理プールにおける競泳選手の歯のエナメル質酸蝕
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/3953542/
  8. Rapid general dental erosion by gas-chlorinated swimming pool water. Review of the literature and case report (2000)
    ガス塩素処理プール水による急速な全般的歯の酸蝕:文献レビューと症例報告
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11764119/
  9. Effect of endurance training on dental erosion, caries, and saliva (2015)
    持久力トレーニングが歯の酸蝕、う蝕、唾液に及ぼす影響
    https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/sms.12266
  10. Temporomandibular disorders and the use of oral splints among elite sport athletes: a questionnaire-based cross-sectional study in Germany (2025)
    ドイツのエリートアスリートにおける顎関節症状と口腔内装置使用:質問票による横断研究
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40601085/


執筆・監修 中村 瞬
かわせみデンタルクリニック 院長 / 歯学博士(歯科麻酔学)/ 日本歯科麻酔科学会 認定医
t医療記事をほぼ毎日更新中・TV取材多数
医学的根拠(エビデンス)に基づいた正確で分かりやすい情報を患者目線でお届けしています。


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