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歯の詰め物で使われる「レジン」、マイクロプラスチックの原因になる?

歯の詰め物などに使われる「コンポジットレジン(複合レジン:CR)」。これが削れたりして、最近よく聞く「マイクロプラスチック」として体内に取り込まれてしまうのでは?と気になったので調べてみました。

そもそも「レジン」と「マイクロプラスチック」って?

  • レジン: 歯の治療で使うレジンは、プラスチックの一種です。虫歯を削った部分に詰めたり、欠けた歯を修復したりするのに使われます。
  • マイクロプラスチック: 5ミリ以下のとても小さなプラスチックの粒子のことです。環境中に多く存在していて、食べ物や飲み物を通じて私たちの体に入ることが指摘されています。

歯のレジンはマイクロプラスチックの原因になる?

ここが一番気になるところですよね。

歯の治療で使うコンポジットレジン(複合レジン)はセラミック粒子と合成樹脂を混ぜ合わせたものです。レジン、樹脂、プラスチックは、基本的には同じものを指す言葉ですが、微妙な違いがあります。レジンは樹脂全般を指す英語の表現で、プラスチックは日本語で、特に合成樹脂が成形・硬化したものを指すことが多いです。

口の中で噛んだり、歯ぎしりをしたり、あるいは歯磨きでこすれたりすることで、レジンが少しずつ摩耗していきます。その過程でマイクロプラスチックが生じる可能性は否定できません。

しかし、これまでの研究や公的機関の発表を見ると、歯のレジンが口の中で大量のマイクロプラスチックを発生させて、それが体に深刻な影響を与えるといった直接的な報告は、今のところ見当たりませんでした

では、他に心配なことは?

むしろ、これまで心配されてきたのは、レジンから溶け出す可能性のある化学物質(アレルギーの原因になる成分や、ごく微量のビスフェノールAなど)の影響でした。これらについては、適切に使えば健康へのリスクは低いとされています。

  1. 化学物質の溶け出し:
    • レジンを構成する化学物質(モノマーなど)が、唾液にごくわずかに溶け出すことがあります。これらがアレルギーの原因になったり、細胞に影響を与えたりする可能性が研究されてきました。
    • 例えば、ビスフェノールA(BPA)という環境ホルモンとして知られる物質についても、レジンからの溶出が心配されましたが、溶け出す量は非常に少なく、健康へのリスクは低いと考えられています。

マイクロプラスチックの一般的な問題点とは?

歯科用レジンに特化した話ではありませんが、一般的にマイクロプラスチックについては以下のような点が懸念されています。

  • 環境汚染:海や川、土壌など、自然界に広く存在しています。
  • 食物連鎖:小さな生物がマイクロプラスチックを取り込み、それを大きな生物が食べることで、私たちの食卓にものぼる可能性があります。
  • 健康への影響:体内に取り込まれたマイクロプラスチックが、長期的にどのような影響を及ぼすのか、まだ世界中で研究が進められており少しずつ解明が進んでいる段階です。

歯科用レジンとマイクロプラスチック:現時点(2025年5月)でのまとめ

  • 歯科用レジンもプラスチックなので、摩耗によって微小な粒子が生じる可能性はあります。
  • しかし、それが口の中で大量に発生し、マイクロプラスチックとして大きな健康問題を引き起こすという具体的な証拠や報告は、現時点では限られています
  • むしろ、これまでは化学物質の溶出による影響の方が注目されてきました。
  • とはいえ、プラスチックである以上、今後この点に関する研究が進む可能性はありますので、新しい情報に関心を持っておくことは大切かもしれません。

大切なこと

歯の治療は、虫歯の進行を止めたり、失った歯の機能を回復したりするために非常に重要です。レジン治療にも多くのメリットがあります。

  • 治療を受ける前には、歯科医師から治療法や材料についてよく説明を聞き、分からないことや心配なことは遠慮なく質問しましょう。
  • メディアの情報などに過度に不安になるのではなく、信頼できる情報源(公的機関の情報など)を参考にすることが大切です。

参考文献

  1. 急性顔面腫脹を伴うアレルギー反応の症例報告:歯科用アクリルレジンの稀な合併症 “A case report of allergic reaction with acute facial swelling: a rare complication of dental acrylic resin“- PMC (National Library of Medicine) 
  2. 歯科治療におけるビスフェノールA曝露に関するシステマティックレビュー “A Systematic Review of Exposure to Bisphenol A from Dental Treatment“- PMC (National Library of Medicine) 
  3. 歯科用コンポジット樹脂の有機マトリックスの基本モノマーであるBis-GMAの毒性 – ナラティブレビュー “The toxicity of Bis-GMA, a basic monomer of the dental composite’s organic matrix – a narrative review” – Pomeranian Journal of Life Sciences 
  4. ビスフェノールAの放出:歯科用コンポジット樹脂の組成に関する調査 “Bisphenol A Release: Survey of the Composition of Dental Composite Resins” – National Library of Medicine (Open Access) 
  5. 歯科用複合材料およびレジンボンディング剤に対する過敏症 “Hypersensitivity to dental composites and resin-bonding agents” – Nature (Dental Update) 
  6. レジンベース複合歯科材料の細胞毒性に関する考察:システマティックレビュー “Considerations about Cytotoxicity of Resin-Based Composite Dental Materials: A Systematic Review” – MDPI 
  7. 3Dプリント歯科用レジンの生体適合性:システマティックレビュー “Biocompatibility of 3D-Printed Dental Resins: A Systematic Review” – PMC (National Library of Medicine) 

参考資料 – 公的機関・学会

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