電子タバコとあなたの口の健康:虫歯、歯周病、歯茎の変色など、知っておきたいこと
I. はじめに
電子タバコ(加熱式タバコを含む)は「紙巻きたばこより安全」というイメージで広まっていますが、口の健康への影響についてはまだ不明な点が多く、決して無害ではありません 1。この記事では、電子タバコが口の健康に与える具体的な影響を調べてまとめました。

II. 電子タバコの成分と口への影響の仕組み
電子タバコのリキッドには、ニコチン、香料、プロピレングリコール(PG)、植物性グリセリン(VG)などが含まれます 4。これらが熱せられると、口の中で以下のような悪影響を引き起こす可能性があります。
- ドライマウス(口が乾くこと): PGやVGは水分を吸収しやすく、唾液の減少を招き、虫歯や歯周病のリスクを高めます 2。
- pH変化と歯のエナメル質が溶けること: リキッドの甘味料や香料は、口の中の細菌が酸を作り出すのを促し、歯のエナメル質を溶かして虫歯の原因となります 2。
- 細胞への毒性: 加熱式タバコの煙の成分は、口の中の細胞に毒性を持つことが示されており、がん細胞の増殖を促す可能性も指摘されています 3。
- 血管が縮む作用: ニコチンは血管を縮め、歯茎への血流を減らすため、歯周病菌の活動を活発化させます 5。
- 細菌のバランスの変化: 電子タバコの使用は、口の中の健康な細菌のバランスを崩し、虫歯菌や歯周病菌が増えやすい環境を作ります 1。
III. 虫歯(むし歯)への影響
電子タバコを使うことは、虫歯になるリスクを上げることが示されています 5。リキッドの甘味料が酸を作り歯を溶かすこと、PGやVGによるドライマウスで唾液の保護作用が低下すること、そして口の中の細菌バランスが崩れて虫歯菌が増えることが、主な原因です 2。電子タバコを使っている人は、使っていない人に比べて虫歯リスクが高い傾向にあります 5。
IV. 歯周病への影響
電子タバコの使用は、歯周病のリスクを顕著に高め、その進行を早めることが複数の研究で報告されています。6
- 口の中の細菌のバランスの変化: 電子タバコを使っている人の口の中では、歯周病を悪化させる細菌の割合が高いことがわかっています。
- 免疫反応への影響: 電子タバコは免疫の働きを調整する物質(サイトカイン)のレベルに影響を与え、炎症を引き起こし歯周病を悪化させる可能性があります。
- 血管が縮む作用: ニコチンによる血管収縮作用で歯茎への血流が減り、歯周病が進行しやすくなります。
- 隠れた症状の表面化: 従来のタバコに含まれるタールには炎症を抑える作用があったため、電子タバコに切り替えることで、これまで隠れていた歯周病の症状が表面に出てくることがあります。
V. 歯茎の着色とその他の見た目の変化
電子タバコはタールが少ないため、歯の着色汚れが減ると期待されることがありますが、ニコチンが含まれているため、歯が黄ばんだり、歯茎が黒ずんだりする原因となります。また、電子タバコの化学物質は歯茎の組織を刺激し、炎症や腫れを引き起こす可能性も指摘されています 4。
VI. 従来のタバコとの比較
電子タバコは「従来のタバコより害が少ない」という認識が広まっていますが、CDC(アメリカ疾病予防管理センター)は「安全ではない」と明言しています 2。横浜市立大学の研究では、加熱式タバコの煙の成分が、従来のタバコと同様の細胞毒性を持つ可能性が示されています 1。特に、従来のタバコから電子タバコに切り替えることで、タールによる炎症抑制効果がなくなり、隠れていた歯周病の症状が表面化する可能性がある点に注意が必要です。
VII. その他の口の健康への影響
電子タバコは、虫歯や歯周病、着色以外にも、口の中に直接的な損傷や病変を引き起こす可能性があります。
- 口の粘膜への刺激と病変: 口の中がヒリヒリしたり、口内炎などの病変が見られることがあります。
- 歯科インプラントへの影響: ニコチンは骨とインプラントの結合を妨げ、インプラントの失敗リスクを高める可能性があります 7。ニコチンを含まない電子タバコでも、骨の再生を促す細胞の成長を妨げる可能性が示されています 7。
- 口腔がんリスクの可能性: 電子タバコの成分にがんの原因となる可能性があることが懸念されており、長期使用が口腔がんのリスクを高める可能性も指摘されています 2。
- 爆発による怪我や死亡リスク: バッテリーの爆発により、顔や口に怪我を負ったり、死亡したりする事例も報告されています 9。
- 2015年、アメリカのコロラド州で、29歳の男性の顔面でVAPEが爆発し、首の骨を折る、歯が粉々になるなどの重傷 10
- 2018年、アメリカのフロリダ州で、38歳の男性がVAPEを使い、爆発が原因で死亡する事故 11
VIII. まとめ
電子タバコは、従来のタバコに比べてタールが少ないという利点があるものの、口の健康に対して決して無害ではありません。虫歯、歯周病の進行、歯茎の着色に加え、口の粘膜の病変、歯科インプラントの失敗リスク、口腔がんの可能性、さらには物理的な外傷リスクなど、多岐にわたる悪影響が指摘されています。電子タバコが「安全」という誤解をなくし、科学的根拠に基づいた正確な情報を手に入れましょう。
電子タバコを使っている人は口の健康リスクが高いため、適切な歯磨きやフロスの使用といった口腔衛生習慣と、定期的な歯科検診が必要不可欠です。なにか気になることがありましたらお気軽にご予約ください。
引用文献
- 電子タバコの健康への影響 Health Effects of Vaping | Smoking and Tobacco Use – CDC(アメリカ疾病対策予防センター)
- 電子タバコの虫歯および炎症誘発マーカーへの影響:系統的レビューとメタアナリシス The effects of electronic smoking on dental caries and proinflammatory markers: a systematic review and meta-analysis – Frontiers | Front. Oral Health, 11 April 2025 Sec. Oral Epidemiology
- 加熱式たばこが引き起こす細胞毒性とがん増殖の可能性 横浜市立大学 YCU Research Portal
- 電子タバコが口腔の健康に与える影響と隠れた結果 The Impact and Hidden Consequences of Vaping on Oral Health – AAO(アメリカ矯正歯科学会)
- ベイプまたは電子タバコを使用する患者と使用しない患者の虫歯リスクの比較:横断研究 A comparison of the caries risk between patients who use vapes or electronic cigarettes and those who do not: A cross-sectional study JADA(アメリカ歯科医師会誌)
- 電子タバコ喫煙が歯周の健康に及ぼす影響: スコーピングレビュー Effects of e-cigarette smoking on periodontal health: A scoping review PMID: 38507403
- 喫煙と歯科インプラント Smoking and dental implants – PMID: 33952248
- 電子タバコとその蒸気成分が骨の健康に与える影響 The impact of E-cigarette vaping and vapour constituents on bone health PMID:33952248
- 加熱式タバコに「爆発発火」の危険性 (石田雅彦) – エキスパート – Yahoo!ニュース
- 電子タバコが爆発する死亡事故が発生!?悲劇を起こさないための原因と対策 – VAPE STUDIO公式サイト
- 電子たばこ爆発で男性死亡、破片が頭に 米フロリダ州 – BBCニュース
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