コラム|船橋の歯医者|かわせみデンタルクリニック

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日本における各時代の食事と、咀嚼回数および食事時間の変化

日本の歴史的な咀嚼行動の変化について、東京都歯科医師会と齋藤滋博士による包括的な研究が行われました[1]。この研究では、各時代の食事を復元し、現代人に実際に食べてもらい咀嚼回数を測定しています。

1. 時代別データ一覧 

時代咀嚼回数(回)食事時間(分)エネルギー(kcal)主な背景・特徴
弥生(卑弥呼の時代)3,990511302未加工穀物や木の実中心の硬食。調理技術未発達。
平安(紫式部の時代)1,366311019米飯や味噌汁、干物など。調理法・食材の多様化開始。
鎌倉(源頼朝の時代)2,654291131麦飯・納豆・煮物・焼き物など、硬さと量で咀嚼増。
江戸前期(家康時代)1,465221450魚介類や漬物中心に。町民・武士の食生活安定化。
江戸後期(篤姫の時代)1,01215985麦飯・野菜・漬物が主流。食事時間の二極化始まる。
戦前(昭和初期)1,42022840洋食導入(パン・グリル等)。食文化の西洋化進行。
現代620112025軟食化・ファストフード普及。忙しさによる時短志向。

齋藤滋 著「よく噛んで食べる 忘れられた究極の健康法」(NHK出版、2005年)

咀嚼回数と食事時間は時代の進行とともに大幅に減少してきました。弥生時代から現代までの変化を見ると、弥生→平安→鎌倉→江戸前期→江戸後期→戦前→現代の順に、いずれも軟食化や調理技術の向上、生活・労働様式の変化によって、咀嚼回数は約4,000回強から600回へ、食事時間は約50分から10分程度へと急激に短縮されています。

2. 時代ごとの変化傾向

時代変化原因
弥生→平安咀嚼回数は約4,000回から1,300回程度へ急減(-66%)。 食事時間は51分から31分へ短縮。調理技術向上により硬い穀物や木の実を丸ごと食べず、精白米や煮炊きが普及したため。
平安→鎌倉咀嚼回数は再び増加(1,366回→2,654回)。 食事時間は31分→29分とほぼ横ばい。麦飯や納豆など硬めの食事が定着し、量的にも摂取増。戦乱期の労働・食糧事情影響。
鎌倉→江戸前期→江戸後期咀嚼回数は鎌倉期2,654回→江戸前期1,465回→江戸後期1,012回へ段階的減少。 食事時間も29分→22分→15分と短縮。江戸都市化に伴う飲食店・加工食品の増加、町人文化の成熟。
江戸後期→戦前→現代戦前は一時的に咀嚼回数が1,012回から1,420回に増加し(洋食化の影響)、食事時間も再び22分へ延長。 現代では620回・11分と最大の減少。戦後の経済成長による食品加工技術の飛躍的向上、ファストフードや簡便食の普及、労働時間の増大による時短志向。

平安時代の特異性

平安時代の咀嚼回数が他の時代と比較して著しく少ないのは、平安貴族が「姫飯」と呼ばれる軟らかく炊いた白米などの「グルメ食」を好んで食べていたためです。この食事パターンが平家の健康状態に影響を与え、粗食を食べていた源氏との戦いで敗北した一因とする説もあります。

3. 減少の要因と健康への影響

  • 食品加工技術の向上による軟食化は、咀嚼回数減少が最大要因
  • 生活リズムの変化(通勤時間増大・外食・宅配利用など)で食事に割く時間が減少
  • 健康への影響として、咀嚼回数減少は顎骨の発育不全や消化吸収効率の低下、唾液分泌減少による口腔内環境悪化を引き起こしやすいことが考えられます。

結論:
弥生時代の硬食から現代の軟食ファストフードまで、咀嚼回数と食事時間は約10分の1に短縮されてきました。減少要因は主に調理・加工技術の進歩と生活リズムの変化であり、健康維持のためには意識的に咀嚼回数を増やし、ゆっくり食べる習慣が望まれます。

引用文献

  1. 各時代の復元食の咀嚼回数と食事時間 – 東京都保健医療局 [PDF]