コラム|船橋の歯医者|かわせみデンタルクリニック

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住む場所や登山で変わる?標高と気候が口内細菌に与える影響

私たちは普段、自分の口の中にどんな細菌がいるか意識しませんよね。でも実は、住んでいる場所の標高や気候、さらには食文化や民族的背景によって、口の中の細菌たちの顔ぶれが大きく変わることが分かってきました。今回は、高地環境が私たちの口内細菌にどんな影響を与えるのか調べてみました。

高地ならではの環境が口内細菌を選別する!

富士山のような高い山に登ると、空気が薄く(低酸素)気温が低く乾燥していて紫外線が強い……といった環境になります。実はこれらの条件が、口の中に住む細菌たちにとっては「生き残りをかけたサバイバル」の場となるんです。

このような高地特有の環境に長くいると、口内細菌叢(口の中にいる細菌全体の集まり)には、以下のような変化が見られます。

個人差が大きくなる

同じ高地に住んでいても、人によって口の中の細菌の種類や割合が大きく異なります。これは、高地環境への適応の仕方が人それぞれ違うためと考えられます[1]

細菌の種類が減る

標高が高くなるにつれて、細菌の総数が減り、特定の環境に強い細菌だけが生き残るようになります[1]

特定の菌が増える

  • 低~中高度(<3650 m未満)の高地では、「ストレプトコッカス属(Streptococcus)」という菌が増える傾向があります[1]
  • 超高地(4000m以上)では、「プレボテラ属(Prevotella)」という菌が優勢になります[1]

機能的な適応

超高地(4000m以上)に住む人々の口内細菌は、アミノ酸の代謝やビタミンB6の合成といった機能が活発になることが示唆されています。これは、過酷な環境から体を守ったり、代謝能力を高めたりするための適応だと考えられています[1,2]

これらの変化によって、高地のストレスに耐えられる「耐環境菌」と呼ばれる細菌が口の中で増え、口の中の健康を保つ手助けをしているのです。

民族のルーツや食文化も影響大!

面白いことに、同じくらいの標高に住んでいても、民族によって口内細菌の構成が異なることが分かっています 。例えば、チベット族と漢民族を比較した研究[3]では、以下のような違いが見られました。

チベット族(高地)

  • ファーミキューテス門(Firmicutes)(特にストレプトコッカス属やベイオネラ属)が優勢です 。
  • また、真菌のゾフィエラ属(Zopfiella)という、高地でしか見られない種類も検出されることがあります 。
  • これは、チベット族が伝統的に高脂質・低食物繊維の食生活(ヤクの乳製品など)を送っていることや、長期間高地に住み続けたことによる遺伝的な適応が影響していると考えられます 。

漢民族(低地)

  • バクテロイデーテス門(Bacteroidetes)(特にポルフィロモナス属)や、その他の多様な共生菌が維持されています 。
  • 彼らの口内細菌叢は、比較的穏やかな低地の気候や、和食・中華料理といった食文化を反映していると考えられています 。

急な高地移動で口内環境が一時的に変化することも!

たとえ短期間でも、高地へ移動すると口の中の環境が変わることが報告されています[4]。例えば、標高4556mの場所へ一時的に滞在すると、歯周病の原因菌である「ジンジバリス菌(Porphyromonas gingivalis)」が大幅に減少し、炎症を引き起こす物質(TNF-α)が増加する例も報告されています 。

これは、高地環境下で歯周組織の防御機能が一時的に変化することを示唆しています 。旅行などで高地を訪れる際は、いつも以上に丁寧なオーラルケアを心がけるのが良いかもしれませんね。

気温や紫外線も口内細菌に影響する?

高地の環境要因として、低気温や乾燥も口内細菌に影響を与えます

  • 低気温・乾燥:唾液の量が減ったり、口の粘膜が乾燥したりすることで、酸に強い菌やバイオフィルム(歯垢の塊)を作る菌が増える可能性があります 。
  • 強紫外線:紫外線は主に皮膚に影響を与えますが、口呼吸中にわずかに口の中に入る紫外線が細菌叢にどのような影響を与えるかは、今後の研究課題とされています 。

これらの気候要素は、標高による影響と重なり合って、複雑に口内細菌の構成や機能に影響を与えていると考えられています

まとめ

このように、私たちの口の中の細菌たちは、住んでいる場所の標高や気候といった「環境要因」と、食文化や遺伝的な背景といった「民族要因」が複雑に絡み合いながら、その姿を変えています 。特に高地民族では、過酷な環境に耐える「耐環境菌」が増え、その機能も環境に適応していることが分かってきました

将来的には、これらの研究が進むことで、高地で暮らす人々のための新しいオーラルケア戦略や、高地を訪れる観光客、移住者のための予防策の開発が期待されています

引用文献

  1. ヒトの口腔微生物に対する高さの影響 Li Y et al. Effects of altitude on human oral microbes. AMB Expr. 2021;11:23.
  2. インド人男性集団における口腔マイクロバイオームの構成と機能プロファイリングに対する高地の影響 Manisha Kumari et al. Impact of high altitude on composition and functional profiling of oral microbiome in Indian male population. Sci Rep. 2023;13:4038.
  3. 標高の異なるチベット人と中国漢民族の口腔内細菌叢および真菌叢の比較研究Dong K et al. Comparative Study of Oral Bacteria and Fungi Microbiota in Tibetan and Han Population Living at Different Altitudes. Tohoku J Exp Med. 2021;254(2):129–139.
  4. 口腔病原性細菌および唾液酸化炎症マーカーに対する急性高地曝露の影響 Zhang Q et al. The Effect of Acute High-Altitude Exposure on Oral Pathogenic Bacteria and Inflammatory Indicators. J Periodontol Res. 2024; DOI:10.<…> (PMID:39458216)