低気圧で歯が痛む……。台風や飛行機で歯が痛む仕組みとは?
飛行機に乗っているときや台風などで急激に気圧が変化すると、「なんだか歯がキーンと痛む…」という経験はありませんか?これは専門的には 気圧変化性歯痛(バロドンタルギア) と呼ばれる現象で、歯の内部に閉じ込められた気体が体積を変化させることで起こります。以下では、原因から予防方法までを分かりやすく解説します。
目次
- 台風で歯が痛くなる現象の名前
- なぜ低気圧で歯が痛むのか
- 痛みが出やすい歯の特徴
- 台風だけが原因とは言い切れない理由
- 受診したほうがよい症状
- 自宅での応急対応
- 予防の考え方
- 受診前に知っておきたいこと
1. 台風で歯が痛くなる現象の名前
気圧の変化で歯が痛む現象は、医学的には「気圧性歯痛」や「barodontalgia(バロドンタルギア)」と呼ばれます。2,5 もともとは飛行機の上昇・下降時やダイビングの浮上・潜降時に起こる歯痛として知られ、「flyer’s toothache」と呼ばれることもあります。4,6
台風を直接扱った大規模研究は多くありませんが、外気圧の変化が歯痛の引き金になるという考え方自体は、既存のレビュー論文で広く支持されています。2,3,4 そのため、台風時の歯痛は、飛行機や潜水でみられる気圧性歯痛と近い現象として理解するのが自然です。1,4
2. なぜ低気圧で歯が痛むのか
歯の内部には歯髄腔という空間があり、その中に神経や血管が入っています。1,2 また、虫歯による空洞、根の先の病変、詰め物や被せ物の不適合、治療後の微小なすき間などがあると、圧力変化の影響を受けやすい環境が生じます。1,4,5
気圧が下がると、歯の内部や周囲の閉鎖的な空間との間に圧力差が生まれ、神経や周囲組織が刺激されて痛みとして感じられることがあります。1,2 これはボイルの法則で説明される現象と同じで、気圧が低くなるほど閉じ込められた気体は相対的に膨張しやすくなります。1
ただし、痛みの仕組みは「空気が膨らむ」だけで単純に説明できるわけではありません。2,4 実際には、歯髄炎や根尖性歯周炎などの炎症がある歯で、圧力変化によって症状が増幅されると考えられています。4,5,6
3. 痛みが出やすい歯の特徴
気圧性歯痛の報告では、痛みが出た歯に何らかの病変が見つかることが少なくありません。4,5,6 とくに関連が指摘されているのは、深い虫歯、歯髄炎、根尖性歯周炎、歯髄壊死、治療途中の歯、不適合な修復物、歯根のう胞などです。1,4,5
上の奥歯の痛みでは、副鼻腔炎が歯の痛みとして感じられている場合もあります。2,6 この場合、本人は「歯が痛い」と感じても、原因が歯そのものではなく上顎洞などの炎症であることがあります。2,6
つまり、台風で歯が痛くなる人は、台風に弱い体質というより、気圧変化で反応しやすい歯や周囲組織の問題を抱えている可能性があります。2,4,5
4. 台風だけが原因とは言い切れない理由
ここは誤解しやすい点ですが、「台風の日にだけ痛い=放置してよい」という意味ではありません。2,5 気圧性歯痛は、潜んでいた虫歯や炎症の存在を知らせるサインとして現れることがあるためです。1,5,6
また、台風時の歯痛については、飛行機やダイビングほど直接的な研究蓄積が多いわけではありません。2,3,4 そのため、「台風で必ず歯痛が起こる」「台風だけで歯が悪くなる」といった断定はできず、この点は未確認部分を含みます。3,4
現時点で医学的に言えるのは、気圧変化が歯痛の引き金になることはあり得るが、実際に痛む場合は歯や周囲に別の原因が隠れていないか確認することが重要、ということです。2,4,5
5. 受診したほうがよい症状
次のような症状がある場合は、台風が過ぎるのを待つより歯科受診を優先したほうが安心です。
- 痛みが半日から1日以上続く。4,5
- 冷たい物や温かい物で強くしみる。5,6
- 噛むと痛い、歯が浮く感じがする。4,5
- 歯ぐきが腫れている、膿のような味がする。1,5
- 顔の腫れや発熱がある。1,2
これらは、単なる一時的な違和感ではなく、歯髄炎や根尖性歯周炎、歯周膿瘍など治療が必要な状態の可能性があります。4,5,6
6. 自宅での応急対応
痛みが強いときは、まず安静にして、必要に応じて市販の鎮痛薬を用法・用量を守って使用します。これは症状を一時的に抑える対症療法であり、原因治療ではありません。2,5
強く噛む、患部を何度も触る、極端に熱い物や冷たい物を試すと、痛みが悪化することがあります。4,5 一時的に痛みが引いても、次の低気圧や飛行機搭乗時に再発することがあるため、症状が出た歯は後日きちんと調べてもらうことが大切です。2,4,6
7. 予防の考え方
予防で最も重要なのは、圧力変化に反応しやすい病変を放置しないことです。2,4,5 虫歯を早めに治すこと、古い詰め物や被せ物の適合を確認すること、根管治療を途中で中断しないことは、気圧性歯痛の予防として理にかなっています。3,5,4
飛行機によく乗る人、ダイビングをする人、高所に行く機会が多い人では、こうした点検の重要性がとくに高いとされています。4,7 台風のたびに同じ歯が痛む場合も、同じ考え方で歯科検査を受ける価値があります。2,5
8. 受診前に知っておきたいこと
歯科医院では、症状の出るタイミング、しみるかどうか、噛んだときの痛み、過去の治療歴などを確認し、必要に応じてレントゲン検査を行って原因を探ります。2,4,5 とくに「台風のたびに同じ歯が痛む」「飛行機でも似た痛みが出る」という場合は、歯の神経や根の先に問題がないか重点的に調べることが一般的です。5,4,6
原因が虫歯なら虫歯治療、神経の炎症や根の先の炎症なら根管治療、修復物の不適合ならやり替え、副鼻腔炎が疑わしい場合は耳鼻科との連携が必要になることがあります。2,5,6 つまり、治療は「台風対策」ではなく、「台風で反応している本当の原因を治す」ことが中心になります。2,4
かわせみデンタルクリニックからのご案内
台風や低気圧のたびに同じ歯が痛む場合は、虫歯や根の病気が隠れていることがあります。かわせみデンタルクリニックでは、レントゲンやCTを活用しながら原因を丁寧に確認し、必要な治療につなげています。気になることがありましたらお気軽にご相談ください。
参考文献
- Pathophysiology of Barodontalgia: A Case Report and Review of the Literature (2012)
気圧性歯痛の病態生理:症例報告と文献レビュー
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3518957/ - Barodontalgia (2009)
気圧性歯痛
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19345791/ - Barodontalgia: a review, and the influence of simulated diving on microleakage and on the retention of full cast crowns (1999)
気圧性歯痛:総説、および模擬潜水がマイクロリーケージと全部鋳造冠の維持力に与える影響
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10091498/ - Barodontalgia: what have we learned in the past decade? (2010)
気圧性歯痛:この10年でわかったこと
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20303049/ - Barodontalgia as a differential diagnosis: symptoms and findings (2005)
鑑別診断としての気圧性歯痛:症状と所見
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15649340/ - Barodontalgia among flyers: a review of seven cases (1996)
航空搭乗者にみられた気圧性歯痛:7症例のレビュー
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/8764677/ - Aviation Dentistry (2014)
航空歯科学
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4003671/
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治療後も再発予防に努め、安心して通える歯科医院をめざしています。

