【眼科と歯科】小学生の「お口の力」が視力に影響する!?
近年、子どもたちの視力低下が社会問題となっていますが、その原因として「お口の力」が関係している可能性があることをご存じでしょうか。
岡山大学などの研究グループが2011年に発表した研究により、口唇閉鎖力(唇を閉じる力)が強い小学生ほど視力が良いという驚きの関係が明らかになりました。

研究の概要
この研究では、岡山市内の2つの小学校に通う7~12歳の児童396名(男子197名、女子199名)を対象に、口唇閉鎖力と裸眼視力の関係を詳しく調査しました。
測定方法
- 口唇閉鎖力:専用の測定器「LIP DE CUM」を使用して、唇だけで器具を挟む最大の力を測定
- 視力:標準的なランドルト環チャートを使用した学校健診と同じ方法で測定
主な研究結果
研究の結果、以下のことが明らかになりました:
1. 口唇閉鎖力と視力の明確な関連
- 高視力群(裸眼視力1.0以上):口唇閉鎖力の平均が7.8N
- 低視力群(裸眼視力1.0未満):口唇閉鎖力の平均が7.1N
- この差は統計的に有意で、偶然ではないことが確認されました
2. 視力不良児童の割合に大きな差
口唇閉鎖力の強さによって、視力不良の児童の割合に以下のような違いが見られました:
口唇閉鎖力の強さと視力不良児童の割合
- 口唇閉鎖力が弱い児童(下位25%):視力不良の割合が41.1%
- 口唇閉鎖力が強い児童(上位75%):視力不良の割合が27.0%
つまり、口唇閉鎖力が弱い児童は、強い児童と比べて約1.5倍も視力が悪くなりやすいということになります。
なぜ口唇閉鎖力が視力に影響するのか?
研究者たちは、この興味深い関係について以下のような仕組みを推測しています:
1. 筋肉のつながり
- 口輪筋(唇を閉じる筋肉)と眼輪筋(目の周りの筋肉)は、頬の筋肉を通じて機械的につながっている
- どちらも顔面神経によって制御されており、協調して働く関係にある
- 口輪筋が弱いということは、眼輪筋も弱い可能性がある
2. 眼球の形への影響
- 眼輪筋が弱いと眼球が大きくなりやすく、眼軸長(目の奥行き)が伸びる
- 眼軸長が伸びると近視になりやすい
3. 神経系を通じた影響
- 口の動きは顔面神経から三叉神経に刺激を伝える
- この刺激が副交感神経を通じて、目のピント調節機能に影響を与える可能性がある
日常生活への応用
この研究結果は、子どもの視力維持において以下のような実践的な意味を持ちます:
1. 口呼吸の改善
- 普段から鼻呼吸を心がけ、口をしっかり閉じる習慣をつける
- 口呼吸は口唇閉鎖力を弱める原因となる
2. 口の周りの筋肉トレーニング
- 風船を膨らませる
- ストローで飲み物を飲む
- 口笛を吹く練習
- 「あいうえお」の口の形を大きくはっきりと作る
3. よく噛むことの重要性
- 大きめ、硬めの食べ物を意識的に取り入れる
- 一口につき30回以上噛む習慣をつける
- 口の周りの筋肉全体を鍛える
今後の期待と限界
この研究は世界初の口唇閉鎖力と視力の関係を明らかにした貴重な研究ですが、横断研究(一時点での調査)のため、因果関係の完全な証明には至っていません。今後、長期間にわたる追跡調査や介入研究により、口の筋肉トレーニングが実際に視力改善に効果があるかどうかの検証が期待されます。
まとめ
「目は口ほどにものを言う」という言葉がありますが、科学的にも目と口には深いつながりがあることが示されました。子どもの視力を守るためには、従来のスクリーンタイムの制限や適度な外遊びに加えて、お口の健康と機能にも注目することが重要かもしれません。
普段何気なく使っている口の筋肉が、実は目の健康にも影響している可能性があるというこの発見は、子どもの健康管理において新しい視点を提供してくれる画期的な研究といえるでしょう。
参考文献
- Yamanaka R, Akhter R, Furuta M, et al. 小学生における視力と口唇閉鎖力の関係 J Dent Hlth 61: 288-294, 2011.
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