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タービンと5倍速コントラの違いとは?音・削る力・飛沫・皮下気腫で比べる使い分け

タービンと5倍速コントラは、どちらも歯を削る器具ですが、回り方と音、力のかかり方が違い、処置に合わせて使い分けます。5倍速コントラは、同じ条件で測るとタービンより音が小さく、水だけで冷やす設定では、遠くまで漂う細かい粒子も少ない器具です。

目次
  1. タービンと5倍速コントラの基本の違い
  2. 削る力と使い分け
  3. 音:5倍速コントラはタービンより静か
  4. 振動と手の負担
  5. 皮下気腫:空気が皮膚の下に入る合併症
  6. 飛沫・エアロゾルと吸い戻し(サックバック)
  7. まとめ:処置に合わせて使い分ける

タービンと5倍速コントラの基本の違い

タービンは圧縮空気で、5倍速コントラは電動モーターで回し、最高回転数はタービンのほうが高い器具です。タービンは、圧縮した空気で先端の羽根車を回します。最高回転数は、毎分およそ40万回です1。5倍速コントラは、電動モーターの回転を歯車で5倍に速めて先端に伝える器具で、モーターが毎分4万回なら、先端は最高で毎分20万回になります2。「5倍速」はモーターに対する増速の比率を表す名前で、最高回転数はタービンの約半分です1,2。

項目タービン5倍速コントラ
回す仕組み圧縮空気で羽根車を回す電動モーターの回転を歯車で5倍にする
最高回転数毎分約40万回毎分約20万回
削る力強く押し当てると回転が落ちやすい機種がある回転が低くても力が落ちにくい
音(30cm、歯を削っているとき)約84dB約74dB
重さ約56g約65g
得意な場面大まかな形づくり仕上げ、被せ物を外す場面

表の出典:回転数は製品仕様と論文1,2、力と得意な場面は臨床の解説と研究3,4、音と重さは1機種ずつを同じ条件で測った研究4。

削る力と使い分け

大まかな形はタービン、仕上げや被せ物を外す場面は力の落ちにくい5倍速コントラと使い分けます。5倍速コントラは電動モーターで回すため、回転が低くても力が落ちにくい器具です3。タービンは200g以上の力で押し当てると回転が止まり、高速コントラは500gでも削れたという測定結果があります4。

歯科医師8人が抜いた小臼歯を削った研究では、削るのにかかった時間はコントラ364.4秒、タービン367.9秒、削った量はどちらも0.36gで、差はありませんでした4。この研究では、大まかな形はタービンで作り、歯ぐきの境目を含む仕上げは高速コントラで行う方法を勧めています4。被せ物を外す場面でも、力の強い器具が選ばれます3。

音:5倍速コントラはタービンより静か

1機種ずつ同じ条件で測ると、削っているときの音は5倍速コントラがタービンより約10dB小さく、音の高さも低くなりました。毎分20万回転に増速する高速コントラとタービンを1機種ずつ、冷却水を出さない同じ条件で音を測った研究では、30cmの距離で、タービンは空回しで約85dB、歯を削っているときに約84dBでした。高速コントラは空回しで約66dB、削っているときに約74dBで、タービンより小さく、音の高さも低い結果でした4。

歯科医療者の聴力と削る音

削る音は、削る人の耳にも関わり、歯科医師の聴力を調べた研究の多くが聴力の低下との関連を示しています。歯科医療者60人の聴力を年齢や性別の基準と比べた米国の研究では、基準より聞こえにくい人が男性で15〜25%、女性で13〜18%みられ、40%が耳鳴りを自覚していました5。歯科医師と医師を比べた1980年の研究では、歯科医師のほうが4000Hz付近の高い音が聞き取りにくくなっていました6。

歯科医療者の聴力を調べた17件の研究をまとめたレビューでは、歯科医師を調べた11件のうち9件が、聴力の低下との関連を示しています7。臨床経験が長いほど聴力が下がりやすく、右利きの術者では器具に近い左耳の低下が多いという報告が目立ちます7。5倍速コントラは、1機種ずつ同じ条件で測ると、削っているときの音がタービンより約10dB小さい結果でした4。

患者さんが感じる削る音

削る音が気になる患者さんは歯科不安の得点が高く、音の不快な印象は、音の大きさと高い音の成分の強さから予測できます。297人を調べたパキスタンの研究では、歯科治療を初めて受ける人は、経験のある人より不安が強く、治療中の心拍の変化も大きくなりました8。著者らは、ハンドピースの音を、この不安と心拍の上昇の一因に挙げています8。成人400人の調査では、ほかの要因をそろえても、削る音が気になると答えた人は、そうでない人より歯科不安の得点が1.35点高くなっていました11。

削る音の不快さは、音の大きさだけでなく、高い音の成分の強さでも予測できます。タービン12機種の音を比べた日本の研究では、不快な印象は、音の大きさと、高い音の成分の強さ(鋭さ)を合わせると予測できました9。30cm離れて測った研究では、タービンの音は5kHzから10kHz付近に周波数の山があり、歯科医院特有のいわゆるキーンと聞こえる高い音を含んでいました。高速コントラの周波数の山は3kHz付近で、タービンより低い周波数です4。

高い音は、若い人ほどよく聞こえます。12〜67歳の62人に、削る音を周波数ごとに分けて聞かせた研究では、8kHzを超える成分を含むかどうかで、10代と20〜30代の人は印象が変わりましたが、40歳以上の人はほとんど変わりませんでした10。

振動と手の負担

1機種ずつ比べた研究では、削っているときの手の振動と腕の負担は5倍速コントラのほうが大きくなりました。歯科医師4人が削ったときの手の振動を測った研究では、空回しではタービンのほうがわずかに大きく、最高回転のときや削っているときは高速コントラのほうが大きくなりました4。

同じ研究では、高速コントラはタービンより重く、削っているあいだは前腕の筋肉の活動も大きくなりました4。通常の作業中に22本のハンドピースの振動を測った研究では、1日に受ける振動の量は、欧州の基準で対策が求められる値を下回っていました12。長い時間削るときは、タービンで大まかな形を作り、仕上げを5倍速コントラで行うと、腕の負担も分散できます。

皮下気腫:空気が皮膚の下に入る合併症

報告された皮下気腫の約半数は空気で動くハンドピースに関連し、電動の器具でも起こります。皮下気腫は、治療中に口の傷から空気が入り込んで皮膚の下に広がり、顔や首が急に腫れる合併症です。1993〜2020年に報告された135例をまとめた研究では、54%が抜歯のあとに起き、51%が空気で動くハンドピースに関連していました13。この研究では、抜歯のときに空気で動くハンドピースを避けるよう勧めています13。

福井大学病院で親知らずの抜歯を受けた2,938人のうち、皮下気腫が起きたのは3人で、1人はタービン、2人は電動の器具(5倍速コントラとストレートハンドピース)でした1。電動の器具は回すための空気を使いませんが、先端を冷やす水に空気を混ぜる機種もあります1。この研究では器具ごとの使用数が分からないため、起こりやすさは比べられていません。著者らは、外科の処置に向く候補として、空気を使わない注水の器具を挙げています1。

飛沫・エアロゾルと吸い戻し(サックバック)

水だけで冷やす5倍速コントラは、タービンより遠くまで漂う細かい粒子が少ない器具です。削るときには、冷やすための水と削りくずが細かい粒子(エアロゾル)になって飛び散ります。電動の5倍速コントラを水だけで冷やす設定で使い、タービンと比べた実験では、1.5m以上離れた場所で空気中の粒子が増えたのはタービンだけでした14。頭部模型でウイルスの代わりの粒子を使った実験でも、電動の高速コントラはタービンに比べて、空気中の粒子を99%以上減らしました15。どちらの実験でも、空気中の細かい粒子が電動で減りました14,15。一方、口の近くに落ちる飛沫は、水だけで冷やす実験ではタービンと差がなく14、水を使って冷やす電動の器具では、汚染がタービンと同じくらいに増えたという報告もあります16。頭部模型の実験では口の周りの飛沫も電動で減っており、口の近くの飛沫については研究で結果が分かれています14,15。

タービンは、空気を止めたあとも羽根車がしばらく回り続けます。このとき生じる陰圧で口の中の液が器具の中へ吸い込まれる現象を、吸い戻し(サックバック)と呼びます17。各メーカーは吸い戻しを防ぐ仕組みを備えた製品をつくっており、5倍速コントラにも同様の仕組みを載せた製品があります2。器具は、タービンでも5倍速コントラでも、患者さんごとに洗浄して加熱滅菌します18。

まとめ:処置に合わせて使い分ける

タービンと5倍速コントラは、どちらが優れているかではなく、処置に合わせて使い分ける器具です。

  • タービンは毎分約40万回、5倍速コントラは毎分約20万回で回り、抜いた歯を削った実験では削る時間に差はなかった。
  • 5倍速コントラは力が落ちにくく、仕上げや被せ物を外す場面に向く。
  • 5倍速コントラは、1機種ずつ測るとタービンより音が小さく、水だけで冷やす設定では遠くまで漂う細かい粒子も少ない。
  • 振動と腕の負担は、5倍速コントラのほうが大きいこともある。大まかな形はタービン、仕上げは5倍速コントラと使い分ける。
  • 皮下気腫は空気で動く器具に多く報告されているが、電動でも起きることがある。

削る音や治療中の器具が気になる方は、かわせみデンタルクリニックへご相談ください。処置の目的と使う器具をご説明しながら進めます。

関連記事

参考文献

  1. Ohta K, Yoshimura H, Ryoke T, et al. Investigation of the Electric Handpiece-related Pneumomediastinum and Cervicofacial Subcutaneous Emphysema in Third Molar Surgery. J Hard Tissue Biol. 2019;28(1):79-86.
  2. ナカニシ. Ti-Max Z99L 製品仕様.
  3. 植松厚夫. あまり知られていない日本の歯科用回転切削器具の素晴らしさ―歯科用エアータービンと5倍速コントラの臨床使用ポイント. NSK Clinical Report 02.
  4. 福原隆久, 岩堀正俊, 渡邊諒, ほか. マイクロモーター用高速コントラアングルハンドピースによる切削の人間工学的評価. 岐阜歯科学会雑誌. 2021;48(2):91-99.
  5. Zhang C, Young A, Rodriguez S, et al. Impacts of hazardous noise levels on hearing loss and tinnitus in dental professionals. J Occup Med Toxicol. 2025;20:1.
  6. Zubick HH, Tolentino AT, Boffa J. Hearing loss and the high speed dental handpiece. Am J Public Health. 1980;70(6):633-635.
  7. Hartland JC, Tejada G, Riedel EJ, et al. Systematic review of hearing loss in dental professionals. Occup Med (Lond). 2023;73(7):391-397.
  8. Ghaffar RSA, Sheikh M, Kidwai M, et al. Impact of high-speed handpiece noise-induced dental anxiety on heart rate: analyzing experienced and non-experienced patients – a comparative study. BMC Oral Health. 2024;24:265.
  9. Yamada T, Kuwano S, Ebisu S, et al. Statistical Analysis for Subjective and Objective Evaluations of Dental Drill Sounds. PLoS One. 2016;11(7):e0159926.
  10. Yamada T, Kuwano S, Ebisu S, et al. Effect of age-related extended high frequency hearing loss on the subjective impressions of dental drill noise. Sci Rep. 2024;14(1):15655.
  11. Nauman AM, Altaf Y, Mohiuddin S, et al. Determinants of dental anxiety in adults attending tertiary care dental centres in Karachi, Pakistan. BMC Oral Health. 2026;26(1):1196.
  12. Rytkönen E, Sorainen E, Leino-Arjas P, ほか. Hand-arm vibration exposure of dentists. Int Arch Occup Environ Health. 2006;79(6):521-527.
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  14. Allison JR, Edwards DC, Bowes C, et al. The effect of high-speed dental handpiece coolant delivery and design on aerosol and droplet production. J Dent. 2021;112:103746.
  15. Vernon JJ, Black EVI, Dennis T, et al. Dental Mitigation Strategies to Reduce Aerosolization of SARS-CoV-2. J Dent Res. 2021;100(13):1461-1467.
  16. Al-yaseen W, Jones R, McGregor S, et al. Aerosol and splatter generation with rotary handpieces used in restorative and orthodontic dentistry: a systematic review. BDJ Open. 2022;8:26.
  17. Park D, Kim KB, Kim YS, et al. Extra Positive Air Pressure to Prevent Microbial Contamination in Dental Handpieces: An Experimental Study. Int Dent J. 2025;75(5):100917.
  18. Centers for Disease Control and Prevention. Best Practices for Dental Handpieces.


執筆・監修 中村 瞬
かわせみデンタルクリニック 院長 / 歯学博士(歯科麻酔学)/ 日本歯科麻酔科学会 認定医
医療記事を数多く執筆。TV取材多数
医学的根拠(エビデンス)に基づく、正確で分かりやすい情報を患者目線でお届けします。


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