歯のホワイトニングやセラミック治療も規制対象に —— 2025年の美容医療法改正が歯科に与える影響
1. そもそも何が変わったの?「美容医療に関する取扱いについて」とは
2025年(令和7年)にかけて、国は美容医療のトラブル増加を受けて、医療法等の改正と合わせて「美容医療に関する取扱いについて」という厚労省の通知を出しました。
ポイントはざっくり言うと次の3つです。
- 「美容目的の医療行為」全般に対して、ルールと取り締まりを明確化
- 無資格者が医療行為をすること、過激な広告で患者をあおることに、全国一律で対応しやすくした
- この「美容医療」の中に、歯科のホワイトニングやセラミックなどの審美治療も含まれると明言されている
つまり、「美容医療=美容外科や美容皮膚科だけ」とは扱われず、「見た目を良くする目的の歯科医療」も同じ土俵で見られるようになった、というのが大きな変化です。
2. 歯のホワイトニングはもともとどういう位置づけ?
日本歯科審美学会などが整理している通り、
- 歯科医院のホワイトニングで使う過酸化水素・過酸化尿素などの高濃度薬剤は、薬機法上「医療機器・医薬品」にあたり、歯科医師・歯科衛生士しか扱えないものです。
- そのため、医師・歯科医師免許のない人がこれらの薬剤を使って歯に塗布すると、歯科医師法違反の医療行為になり得ます。
一方、
- ホワイトニングサロンなどで使われるのは、ポリリン酸などを主成分とした「着色落とし系」で、法律上は医薬部外品や化粧品レベルとして扱われます。
- これらは「歯を漂白する」というより、「表面の汚れ落とし」に近く、医療行為としてのホワイトニングとは区別されます。
もともとホワイトニングは、「歯科で行う医療行為」と「サロンなどで行うエステ的サービス」が混在しているグレーな領域で、その線引きがあいまいでした。
3. 2025年以降、「ホワイトニングにも」どう規制がかかるのか
3-1. 医療行為としてのホワイトニング(歯科医院)
歯科医院で行うホワイトニングは、今後ますます「美容医療」としての責任が問われます。
具体的には:
- 「白くなる」「後悔しない」などの過度な広告表現が、医療広告ガイドライン違反として指導対象になりやすくなる
- ビフォーアフター写真や患者体験談の掲載は、原則NG(限定解除の条件を満たす必要あり)
- 未承認薬剤・機器を使ったホワイトニングを宣伝する場合、
・未承認であること
・入手経路
・海外での安全性情報
などを明記しないと、違反扱いになる
また、「美容医療に関する取扱い」通知の中で、
- 美容目的の歯科治療も、美容外科同様に定期報告・安全管理体制・広告規制の対象である
- 無資格者への任せすぎ(カウンセラーのみが説明・勧誘を行う等)は不適切
といった考え方が示されており、ホワイトニングも含めた審美歯科全体に影響します。
3-2. サロンの「セルフホワイトニング」
セルフホワイトニングサロン側も、
- 高濃度過酸化水素など医療用ホワイトニング剤や機器を使っていないか
- 「医療行為ではないのに、あたかも医療レベルの効果があるような広告」をしていないか
といった点について、薬機法違反・医師法違反・景表法違反のチェックが強くなっていくとみられます。
4. 患者さん目線で「何が変わるのか?」
法律や通知の話は難しく感じますが、患者さん目線での変化は次のように整理できます。
4-1. 良い意味で変わること
- ホワイトニングの広告で、誇大表現やリスク無視の宣伝が減っていく
- 「歯科医院なのか、サロンなのか」「どんな薬剤を使っているのか」が、以前よりはっきり説明されるようになる
- トラブルが起きた場合、行政が動けるルールが整うことで、悪質な業者が淘汰されやすくなる
4-2. 気をつけたいポイント
- 「医療っぽい雰囲気だけど、実はサロンで医療行為はしていない」サービスもあるので、
・施術者が歯科医師・歯科衛生士か
・使用薬剤が医療用の過酸化物か、それとも表面洗浄タイプか
を確認することが大切です。 - 歯科のホワイトニングでも、「絶対にこうなる」「必ず白くなる」といった表現を過度に使っている場合は、ガイドライン違反の可能性が高い=注意した方が良いと考えてよいでしょう。
5. 歯科にとっての「ホワイトニング規制」の意味
歯科側にとっては、
- 「治療」と「美容」の境界がより厳密に問われる
- 説明と同意(インフォームド・コンセント)やリスク説明を、医科の美容医療並みにしっかり行う必要が出てくる
- ホワイトニングを含む審美治療の広告・情報発信を、医療広告ガイドライン+美容医療通知に沿って定期的に見直す必要がある
逆に言えば、
「きちんとルールを守って、安全性や限界も含めて説明している歯科医院」が、患者さんから見て選びやすくなる
環境が整いつつあるとも言えます。
6. まとめ:ホワイトニングを受ける前に見ておきたいチェックポイント
最後に、ホワイトニングを検討する方がチェックしておきたいポイントを簡単に挙げます。
- 施術場所は歯科医院かサロンか(ホームページ等で明記されているか)
- 施術者は歯科医師・歯科衛生士か
- 使用薬剤が「医療用過酸化物」なのか、「着色落とし系」なのかを説明しているか
- ホームページや広告に、リスク・副作用・限界・費用が具体的に書かれているか
- 「必ず」「絶対」「後悔しない」といった極端な言葉であおっていないか
2025年の美容医療法改正と厚労省通知によって、ホワイトニングも含めた審美歯科は、今後ますます 「医療」としての責任が問われる領域になります。
患者さん側も、少しだけ制度の背景を知っておくことで、より安全で納得できる選択がしやすくなるはずです。
参考文献
- 美容医療に関する取扱いについて (2025)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_65283.html - 歯のホワイトニングについて | 一般社団法人 日本歯科審美学会
https://www.jdshinbi.net/information/whitening.php - 歯のホワイトニング処置の患者への説明と同意に関する指針 (2020)
https://www.jdshinbi.net/pro/pdf/shishin_hp_20200403.pdf - 解説記事:美容医療規制 ― 変わりゆく地平 (2026)
https://businessandlaw.jp/articles/a20260116-1/ - 美容医療サービスの消費者トラブル サービスを受ける前に確認したいポイント | 政府広報オンライン (2023)
https://www.gov-online.go.jp/article/201307/entry-10619.html
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執筆・監修 中村 瞬
かわせみデンタルクリニック 院長 / 歯学博士(歯科麻酔学)/ 日本歯科麻酔科学会 認定医
医療記事を数多く執筆・TV取材多数
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