東京2020オリンピックに学ぶ、熱中症になりやすいスポーツは何か?
夏のスポーツで最も注意すべきは、長時間にわたる持久系競技や高負荷の野外競技です。日常でも行われるランニングやサイクリング、マリンスポーツでも油断は禁物。この記事では、主な研究結果をもとに「熱中症になりやすいスポーツ」とその予防策をわかりやすく解説します。
熱中症になりやすいスポーツベスト3
- マラソン/競歩(持久系ランニング)
- 東京2020オリンピックでは参加368名中50名(13.6%)が発症し、1000人あたり136件という極めて高い発生率を示しました¹。長時間の持続運動により体温が上昇しやすく、脱水との相互作用でリスクが高まります。
- サイクリング(ロード・マウンテンバイク)
- マウンテンバイク大会では選手の0.5~23%が体調不良を訴え、脱水や消化器症状を伴うことが多くありました⁴。舗装路で行うロードレースでも同様にリスクがあります。
- マラソンスイミング・トライアスロン
- 水泳後に自転車やランニングを行う複合競技では、汗による発汗機能低下と水分補給不足が重なり、過熱状態で陸上パートに移行する際に症状が出やすいです⁵。
野外競技(テニス、サッカー、ビーチバレーなど)や夏山登山、長時間のウォーキングイベントなども、気温と湿度が高いと熱中症リスクが上がります²。
東京オリンピック2020における熱中症発生率
| 競技 | 事例数 (人) | 参加者数 (人) | 発生率 (%) | 1000人あたり発生数 |
|---|---|---|---|---|
| マラソン/競歩 | 50 | 368 | 13.59 | 135.9 |
| 自転車競技 | 1 | 18 | 2.78 | 55.6 |
| マラソンスイミング | 2 | 51 | 1.96 | 39.2 |
| テニス | 5 | 190 | 0.29 | 26.3 |
| スポーツクライミング | 1 | 40 | 0.63 | 25.0 |
| アーチェリー | 3 | 128 | 0.26 | 23.4 |
| ボート(ローイング) | 10 | 528 | 0.32 | 18.9 |
| トライアスロン | 2 | 109 | 0.61 | 18.3 |
| 陸上競技(短距離・障害物) | 20 | 1670 | 0.13 | 12.0 |
| ビーチバレーボール | 1 | 96 | 0.07 | 10.4 |
| 乗馬 | 2 | 235 | 0.07 | 8.5 |
| ゴルフ | 1 | 120 | 0.10 | 8.3 |
| カヌースプリント | 1 | 249 | 0.07 | 4.0 |
| ホッケー | 1 | 432 | 0.02 | 2.3 |
| 計(運動競技計) | 100 | 3866 | 2.59 | 25.9 |
東京パラリンピック2020における熱中症発生率
| 競技 | 事例数 (人) | 参加者数 (人) | 発生率 (%) | 1000人あたり発生数 |
|---|---|---|---|---|
| トライアスロン | 3 | 102 | 2.94 | 29.4 |
| 射撃 | 4 | 154 | 0.32 | 26.0 |
| 車いすテニス | 2 | 104 | 0.21 | 19.2 |
| ボート(ローイング) | 2 | 108 | 0.62 | 18.5 |
| 陸上競技(マラソン/トラック) | 19 | 1144 | 1.66 | 16.6 |
| 5人制サッカー | 1 | 78 | 1.28 | 12.8 |
| 自転車競技 | 2 | 233 | 0.86 | 8.6 |
| 座位バレーボール | 1 | 187 | 0.05 | 5.3 |
| 卓球 | 1 | 278 | 0.04 | 3.6 |
| 水泳 | 1 | 605 | 0.17 | 1.7 |
| 計(運動競技計) | 36 | 2993 | 1.20 | 12.0 |
なぜ持久系競技でリスクが高いのか?
- 脱水による体温上昇促進
体重の1%失水ごとに体温は約0.15~0.2℃上昇²。マラソンでは5%近い脱水が起こることもあるため、体温調節機構が追いつかなくなります。 - 長時間の高強度運動
長時間にわたる筋運動で内部発熱量が増大し、冷却(発汗・血流再分配)が追いつかず、熱負荷が蓄積します。
環境・個人要因
- 高WBGT(湿球黒球温度)
28℃以上になると、運動開始から短時間で熱中症リスクが急増¹。 - 年齢・性別
若年アスリートに多いが、女性はBMIや体力差から若干リスクが高いとの報告もあります³。 - 装備・服装
通気性の悪いウェアや過度の保温対策は避け、吸湿速乾素材やライトカラーを選ぶ。
予防策と応急処置
- 事前の水分補給と体重管理
運動前に500mL以上、運動中は15~20分ごとに200~300mL摂取。運動後は体重減少を2%以下に抑える。 - クーリング戦略
冷却タオルやアイスパック、速やかな冷水浴(CWI)が効果的。競技中や休憩時に首‐脇‐脇の下を中心に冷却する。 - 気象情報の活用
WBGTを確認し、基準値以上なら運動強度を下げるか、時間帯を変更(早朝・夕方にずらす)。 - 無理をしない
過去に熱中症経験がある場合は特に警戒。体調不良やめまいを感じたら即座に運動を中止し、日陰で休む。
考察
- マラソン/競歩 は、運動強度が長時間継続するため最も高い熱中症リスクを示しました。
- 自転車競技 や マラソンスイミング も高い発生率を示し、有酸素持続運動種目は特に注意が必要です。
- 短時間高強度種目(テニス、スポーツクライミング等)は比較的低い発生率だが、競技中の環境管理(WBGT、日中開催の回避等)が重要。
- パラリンピックでは、運動時間が長い トライアスロン が突出して高く、車いすでの放熱制御が難しい 射撃 や 車いすテニス でもリスクが高まる傾向があります。
参考文献
- Inoue H, Tanaka H, Sakanashi S, et al. Incidence and factor analysis for the heat-related illness on the Tokyo 2020 Olympic and Paralympic Games(東京2020オリンピック・パラリンピックにおける熱中症発生率と要因分析)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC10083866/ - Coris EE, Ramirez AM, Van Durme DJ. Heat illness in athletes: the dangerous combination of heat, humidity and exercise(アスリートの熱中症:高温・高湿・運動の危険な組み合わせ)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/14715036/ - Kolka MA, Cheuvront SN, Sawka MN. Systematic review of gender differences in the epidemiology and risk factors of exertional heat illness and heat tolerance in the armed forces(軍隊おける熱中症疫学と耐熱性の性差に関する系統的レビュー)
https://bmjopen.bmj.com/lookup/doi/10.1136/bmjopen-2019-031825 - Morris NR, Bhattacharya A, McSweeney JM, et al. Sport-related exertional heat illness hospitalisations in Victoria, Australia: Incidence and trend over 11 years(オーストラリア・ビクトリア州におけるスポーツ関連熱中症入院:11年間の発生率と傾向)
https://linkinghub.elsevier.com/retrieve/pii/S1440244019311788 - Verhagen EALM, van Middelkoop M, Maffiuletti NA, et al. Racing in Rising Global Temperatures: A Scoping Review of Heat-related Illnesses in Endurance Running(気温上昇下のレース:持久系ランにおける熱中症レビュー)
https://www.cambridge.org/core/product/identifier/S1935789325101353/type/journal_article
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