子どもの誤飲・誤食の事故例と受診の目安:洗口液・歯にはまる髪ゴム・薬・電池
子どもの誤飲で急ぐ物の代表は、少ない量で効く物、体の中で傷を作る物、口とのどを傷める物の3つです。電池や複数の磁石を飲み込んだときはすぐに受診し、薬やアルコールで迷ったときは中毒110番に相談します。髪ゴムが歯にはまった例も含め、日本小児科学会の報告から事故例と防ぎ方をまとめました。
目次
洗口液を飲んだ2歳の子が急性アルコール中毒に
歯みがきのあとに使う洗口液にも、アルコールを多く含む製品があります。日本小児科学会が子どもの事故を知らせる「傷害速報(Injury Alert)」に、洗口液を飲んで急性アルコール中毒になった2歳の男の子が載っています1。

男の子は2〜3か月前から洗口液が気に入っていて、歯みがきのときにも使っていたといいます1。ある晩、その容器を持って両親のところへ来たとき、中身は100mLほど減っていました1。いつもは洗面所の棚にしまってある容器が、その日に限って洗面台に出したままだったのです1。
飲んだのはアルコール濃度20%の製品で、男の子は顔が赤くなり、ろれつが回らず、足元もふらついていました1。受診したときには走り回るほど元気でしたが、ふらつきは翌日まで残り、症状が消えたのは2日後の再診のときです1。ラベルには「幼児の使用には適しません」と書かれていましたが、母親は気づいていませんでした1。
報告の見積もりでは、体重10kgの子なら、洗口液11〜66mLで中毒の症状が出る量に届きます1。幅があるのは、製品によってアルコール濃度が違うためです。さらに子どもでは、アルコールで低血糖が起こることもあります1。子どもに洗口液を使わせるときは、アルコールが入っているかや対象年齢をラベルで確かめ、使い終わったら手の届かない棚へ戻しましょう。
同じ洗面所にある歯磨き粉を食べてしまったときの量の目安と対応は、関連記事の早見表で紹介しています。
飲み込まずに歯にはまる:髪ゴム・ストロー・おもちゃの金具
口に入れた物が、飲み込まれずに歯にはまり、少しずつ歯ぐきへ食い込んでいく事故もあります。はじめは痛みも出血もなく、小さな子ほど自分から訴えにくいため、見つかるまでに時間がかかりやすいのが特徴です2。
髪ゴム:下の前歯6本を囲んで歯ぐきに食い込む
3歳11か月の女の子は、髪を留める輪ゴムが下の前歯6本をぐるりと囲むようにはまり、歯ぐきに食い込んでいました3。見つかるきっかけは、1週間ほど祖父母の家に預けられて戻った日に、母親が下の前歯の歯ぐきがめくれているのに気づいたことでした3。近くの歯科ではけがを疑って様子を見ましたが、1週間たっても治らず、病院の歯科へ紹介されました3。
病院の歯科で輪ゴムが見つかったとき、歯ぐきには深さ約3mmの裂け目ができて、歯の根が見え、歯も少しぐらついている状態でした3。麻酔をして輪ゴムを取り除くと歯ぐきは治りはじめ、母親が歯ぐきのめくれに気づいてから23日後には裂け目がふさがり、ぐらつきもおさまっていました3。
女の子はふだんから、髪から外した輪ゴムで遊んだり、口にくわえたりすることがあったそうです3。新しい輪ゴムは手の届かない所にしまっていても、一度使った物までは片づけていませんでした3。預けられていた祖父母の家にいたあいだも、口の中を気にしたり歯みがきを嫌がったりするそぶりはなかったといいます3。
ストロー:歯の根元にはまり、歯を支える骨が減る
3歳2か月の女の子は、3歳児健診の歯科診察で、下の前歯の根元にはまった白い筒のような物が見つかりました2。取り出してみると、飲み物のストローとみられる物でした。見えていたのは1.5mmほどでも、歯ぐきの奥まで入り込んでいて、全長は約5mmです2。実は保護者も、1歳4か月ごろに歯の見た目がおかしいと気づき、歯科を受診していました2。それから様子を見ているあいだに、歯を支える骨が大きく減り、歯がぐらつくようになっていたのです2。
透明や白のプラスチックは歯と見分けにくく、レントゲンにも写りません2。歯科医師でもすぐには気づきにくい一方、早く見つけて取り除けば特に害は残らない、と報告は述べています2。
おもちゃの金具:前歯の隙間にはまって外れない
3歳3か月の女の子は、ネックレスのようなおもちゃで遊んでいて、金具が下の前歯のあいだにはまり、手では外せなくなりました4。報告の見立てでは、かんで遊ぶうちに金具の口が開き、歯のあいだに入り込んだようです4。病院で薬を使って眠らせ、金具を切ってようやく取り外しました4。
歯ぐきの異変に気づいたら:早めに歯科で確かめる
歯の根元に見慣れない輪や筒が見えたとき、歯ぐきがめくれたり腫れたりしているときは、早めに歯科で確かめてもらいましょう。輪ゴムの例では、母親が歯ぐきのめくれに気づいたことが発見につながりました3。仕上げみがきのときは、歯だけでなく根元の歯ぐきも見てあげてください。様子を見ても治らなければ、何かがはまっていないか、もう一度診てもらいましょう。
少ない量で重くなる:アルコールを含む物と大人の飲み薬
体の小さな子どもは、少ない量でも重い中毒を起こします5。最初に紹介した洗口液のほかにも、アルコールは手指の消毒液やお菓子に入っています。
消毒用エタノール:昼寝の時間になめ続けた
5歳7か月の女の子は、保育園の昼寝の時間に、消毒用エタノールを手につけてはなめることを10回ほど繰り返していました。呼びかけても目を覚まさない状態で運ばれ、後遺症なく退院できたのは2日後です5。報告によると、子どもは体重1kgあたり約0.5mLで重い中毒症状が出ると考えられています。この子の体重なら、4プッシュほどでその量に届いてしまいます5。
洋酒入りのゼリー:表示は小さく「洋酒入り」だけ
2歳3か月の子が洋酒入りのゼリーを食べたところ、5〜10分で顔が赤くなりました6。お菓子にはアルコールが入っていると表示する義務がなく、このゼリーのラベルにも、小さく「洋酒入り」と書かれていただけでした6。
大人の薬:血圧の薬を2錠分かじった
大人の薬には、1錠で子どもの命に関わるものがあります。1歳8か月の女の子が、父親の血圧の薬を2錠分かじりました。症状はありませんでしたが、集中治療室で血圧の経過を見守り、退院は3日目でした7。薬はシートのまま居間の棚に置かれ、棚の下には子ども用の椅子があったといいます7。報告では、大人用の薬について「わずか 1 錠の誤飲量であっても小児にとっては致死的になることがある」と注意を呼びかけています7。
飲み込んだあと体の中で傷が進む:ボタン電池と複数の磁石
ボタン電池や複数の磁石は、飲み込んだあと、症状が目立たないうちに体の中で粘膜や腸の傷が進みます。
ボタン電池:食道に穴が開いた
1歳2か月の男の子は、飲み込んだボタン電池が食道に引っかかり、食道に穴が開きました8。引き出しに入れていた電池が1個足りないことに母親が気づいたあと、男の子が吐いたので受診しています8。取り出した翌日には食道に穴が開いていることが分かり、集中治療室での治療と、胃に通した管から栄養をとることが必要になって、退院までに26日かかりました8。
報告で紹介されている動物実験では、ボタン電池が食道に4時間とどまると粘膜がただれます8。また報告では、飲み込む場面を保護者が見ていないことも多いため、2〜3歳以下の子が急に吐いたり、よだれを垂らしたりしたら電池を疑うよう呼びかけています8。時間がたつほど傷は深くなるので、飲み込んだと分かったら待たずに受診してください。
磁石と鉄の球:胃腸炎と思われていた
1歳11か月の男の子は、数日続く下痢と嘔吐があり、胃腸炎だと思われていました。腹膜炎の症状が出てようやく、おもちゃの磁石と鉄の球を飲み込んでいたことが分かりました。小腸の2か所に穴が開いていて、緊急手術が必要でした9。複数の磁石は腸の壁をはさんでくっつき、少しずつ腸を傷めます9。初めのうちは症状が少なく、しかも磁石を飲んだ13例のうち、飲む場面を見ていたのは2例だけでした9。
水で膨らむボール:お腹の中で膨らみ腸をふさぐ
水で膨らむボールも、飲み込むとお腹の中で膨らみます。浴室で遊んでいた0歳11か月の男の子は、飲み込んだボールで腸がふさがり、手術を受けました10。
洗剤や強いアルカリはのどを傷める:飲み物の容器に移し替えない
洗剤などアルカリ性の製品は、少し口に入っただけでのどが腫れ、息が苦しくなった例があります。
ワックス剥離剤:お茶のペットボトルに移し替えていた
祖父母と出かけた公園で、2歳8か月の男の子がペットボトルの「お茶」を一口飲み、すぐに吐き出しました。飲んだのは、ワックス剥離剤でした。緑茶のペットボトルに移し替えて冷蔵庫に入れてあった物で、持ってきた祖父もお茶だと思っていたのです11。この子は3時間半後から声がかすれ、のどの奥が腫れて、6日間は気管に管を入れて呼吸を助けることになりました。食道もただれていて、退院まで17日かかっています11。
食器洗い機用の洗剤:移し替えた容器から顔にかぶる
1歳3か月の男の子が、粉末洗剤を顔からかぶりました。台所で別の容器に移し替えてあった、食器洗い機用の洗剤です。父親が口の中の洗剤をかき出したものの、数分後には意識が遠のき、呼吸が苦しくなりました12。脳が酸素不足になるほど悪化し、退院まで16日かかっています12。報告では、洗剤の誤飲はふだん軽く済むことが多い一方で、まれに1時間以内に急に呼吸が悪化すると注意を呼びかけています12。
口に入れてしまったら:吐かせず、中毒110番か医療機関に相談する
口に残っている物を取り除き、吐かせずに、何をどれだけ口にしたかを確かめます。口をすすがせ、まだ小さくてうまくすすげない子どもは、濡らしたガーゼで口の中を拭き取ってください13。日本中毒情報センターは、吐いた物が気管に入る危険があるため、家庭で吐かせることを勧めておらず、酸性やアルカリ性と書かれた製品は、食道の傷がひどくなるので絶対に吐かせないよう呼びかけています13。意識がない、けいれんしているといった重い症状があれば、すぐに救急車を呼んでください13。
報告された子どもの事故の3つの型と、口に入れてしまったときの対応の流れを、図1にまとめました。

水や牛乳を飲ませてよいかどうかは、飲ませる前に中毒110番で確認します。たばこや防虫剤のように、飲ませると吸収が早まる物もあるためです。痛みや吐き気があるときは、何も飲ませません13,14。
ボタン電池・複数の磁石・釘や画鋲のような鋭い物は、飲み込んだら、すぐに受診しましょう14。水で膨らむボールも、飲み込んだと気づいたら受診が必要です10。灯油やマニキュアの除光液のように、気管に入ると肺炎を起こす物も、吐かせずにすぐ受診します14。
何かを飲み込んだあと、次のような様子が見られるときも、すぐに医療機関を受診してください15。
- よだれが多い、口を開けたまま苦しそうに息をする
- 咳き込みが多い
- 吐いた(とくに血が混じっていた)
- お腹を痛がる、うんちに血が混じっている
薬や洗剤・アルコール・たばこ・化粧品・殺虫剤などの毒で受診するか迷うときは、日本中毒情報センターの「中毒110番」に電話で相談できます16。一般の方からの相談は無料で、365日24時間受け付けています16。ただし、磁石のような異物は中毒110番の対象ではないので、受診してください14,16。
- 大阪中毒110番:072-727-2499
- つくば中毒110番:029-852-9999
電話では、子どもの年齢と体重、製品の正確な名前、飲んだ量と時刻、今の様子を聞かれます16。何を飲んだかは、受診するときにも必要な情報なので、製品の容器や残りは捨てずに手元に置きましょう13,16。夜間や休日に子どもの様子が心配なときは、こども医療電話相談(#8000)も利用できます17。
防ぎ方:使ったら手の届かない高い場所へ戻す
誤飲を防ぐ基本は、使ったらすぐに、子どもの手が届かない高さへ戻すことです。洗剤の報告では、「低い位置ではなく,手の届かない高さの棚の上など」に保管するよう求めています12。日本中毒情報センターによると、子どもは「まだ手が届かない」と思っていた高さでも、よじ登ったり工夫したりして手に入れてしまいます18。
- 足場になる物を棚の近くに置かないでください。2歳9か月の子は、70cmの足台に乗って、高さ150cmの棚にある薬に手を伸ばしていました19。
- 洗口液は、使ったら出したままにしないようにしましょう。洗口液の事故も、ふだんの棚から洗面台の上に出ていた1本で起きました1。
- ペットボトルなど飲み物の容器に、洗剤や薬品を移し替えないでください12,20。
- ボタン電池の交換は、子どものいない場所でしてください。電池の蓋はねじまでしっかり留め、使い終わった電池は両端にテープを貼って捨てましょう21。
- 一度使った髪ゴムも、出しっぱなしにしないことが大切です。歯にはまった輪ゴムの例では、髪から外した輪ゴムで遊んだり、口にくわえたりすることがありました3。
- 祖父母の家の置き場所も見直してください。祖母宅のテレビ台に置いたホウ酸団子を、1歳2か月の子が口に入れた例があります22。
日本小児科学会は、子どもが開けにくい容器や、少しずつしか出ない構造を製品に求めています1,7。家庭でも、選べるときはそうした容器の製品を選ぶのがひとつの方法です。
製品の側では、販売の規制も始まっています。マグネットセットと水で膨らむボールは、2023年から国の基準を満たした製品しか売れなくなっています。ただし、すでに家にある物は回収されず、模型などの材料として売られる強力な磁石も対象外です23。
まとめ:急ぐ誤飲を知り、使ったら手の届かない高さへ
子どもの誤飲で急ぐ物の代表は、少ない量で効く物、体の中で傷を作る物、口とのどを傷める物の3つです。
- 少ない量で効く物は、アルコールを含む洗口液や消毒液、大人の薬です。洗口液は濃度で量が変わりますが、体重10kgの子では11〜66mLで中毒の症状が出る量に届くと見積もられています。大人の薬には、1錠でも危ないものがあります。
- 体の中で傷を作る物は、ボタン電池、複数の磁石、水で膨らむボールです。飲み込んだら、すぐに受診しましょう。
- 口とのどを傷める物は、洗剤や、飲み物の容器に移し替えた強いアルカリです。意識がない、けいれんしているなどの重い症状があれば、救急車を呼びます。
- 髪ゴムが歯にはまって歯ぐきへ入り込んだ例や、おもちゃの金具が歯のあいだにはまった例も報告されています。歯の根元に見慣れない物が見えたら、歯科で確かめてもらいましょう。
- 吐かせずに物と量を確かめ、アルコールや薬、洗剤で迷ったら中毒110番に相談します。使った物は、手の届かない高さへ戻しましょう。
歯みがき用品の置き場所や、歯ぐきに見慣れない物が見えるなど、お子さんのお口のことで気になることがあれば、当院でもご相談いただけます。
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参考文献
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- 日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会. Injury Alert(傷害速報)No.96 ストロー様異物による乳歯への嵌入. 日本小児科学会雑誌. 2020;124(11):1682-1684.
- 日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会. Injury Alert(傷害速報)類似事例 髪留め用輪ゴムによる歯肉への迷入(No.96 ストロー様異物による乳歯への嵌入の類似事例1). 2023年11月21日.
- 日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会. Injury Alert(傷害速報)類似事例 板ナスカンによる歯間嵌入(No.30 蛇口による乳臼歯脱臼の類似事例1). 2020年7月22日.
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執筆・監修 中村 瞬
かわせみデンタルクリニック 院長 / 歯学博士(歯科麻酔学)/ 日本歯科麻酔科学会 認定医
医療記事を数多く執筆。TV取材多数
医学的根拠(エビデンス)に基づく、正確で分かりやすい情報を患者目線でお届けします。
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