歯磨き後のうがいはしない方がいい?すすぎ・牛乳・寝る前の正しい仕上げ方
フッ化物配合の歯磨き粉で磨いたあとは、余分な歯磨き粉を吐き出すだけにして、水ではすすがないのが基本です。すすぐなら少量の水で1回にし、直後の牛乳は避けましょう。歯磨き後の「うがい」は、水を歯のまわりにくちゅくちゅと回す「すすぎ」のことで、のどの奥をがらがらと洗う「うがい」とは別の動作です。
目次
歯磨き後はすすがないのが基本、すすぐなら少量の水で1回
世界歯科連盟(FDI)は、歯磨きのあとは余分な歯磨き粉を吐き出し、水ですすがないように案内しています1。この案内は、専門家の合意に基づく望ましい方法です。口に残るフッ化物を濃い状態に保つための仕上げです1。
日本の4学会(日本口腔衛生学会・日本小児歯科学会・日本歯科保存学会・日本老年歯科医学会)は、「歯みがきの後は、歯磨剤を軽くはき出す。うがいをする場合は少量の水で1回のみとする。」と案内しています2。この案内では、歯磨きのあとに水ですすぐことも「うがい」と書かれています。水ですすがない方法を基本にして、すすぎたいときでも少量の水で1回にしましょう。
すすぐと唾液のフッ化物はどれだけ減る?研究の数値で見る
すすぐと、歯磨き粉のフッ化物は口の外へ流れ出ます。歯を磨いた直後に唾液に残るフッ化物を、すすぐ場合とすすがない場合で比べた研究は日本を含めていくつもあり、どの研究でもすすがないほうが高くなっています。

日本の研究では、成人10人が1450ppmの歯磨き粉で磨いた直後の唾液に残るフッ化物は、すすがない場合の73.2ppmに対し、25mLの水で30秒すすいだ場合は8.90ppmで、約8分の1でした3。成人120人を、歯磨き粉6種類とすすぎの有無で12グループ(各10人)に分けた試験もあります。フッ化ナトリウム1450ppmのグループでは、磨いて1分後に唾液に残るフッ化物が、すすがない人の35.5ppmに対し、10mLの水で5秒すすいだ人では15.1ppmと、半分以下に下がっています4。6歳児18人の試験では、1分後の値が19.5ppmと9.8ppmとなり、90分までに口に残ったフッ化物の合計は、すすがない子のほうが約1.6倍でした5。
すすぐ回数でも差が出ます。15mLの水で1回すすいだ場合と2回すすいだ場合を比べた国内の測定では、150分までに口に残ったフッ化物の量は、2回すすいだほうが1回より約27%少なくなりました6。

研究ごとの条件と結果は、次のとおりです。
| 研究 | 対象 | すすぎ方 | 結果 |
|---|---|---|---|
| 葛西ら 2022(日本)3 | 成人10人、1450ppm | 25mLで30秒、1回 | 直後の唾液:すすがない73.2ppm、すすぐ8.90ppm |
| 荒川ら(日本)6 | 成人4人、1450ppm | 15mLで5秒、1回と2回 | 150分までに口に残った量:2回は1回の約0.73倍(図の値は1回121.45、2回88.98。単位は図に記載なし) |
| Albahrani 20224 | 成人120人を12グループに分けた試験のうち、フッ化ナトリウム1450ppmのグループ(各10人) | 10mLで5秒、1回 | 1分後:すすがない35.5ppm、すすぐ15.1ppm |
| Sitthisettapong 20265 | 6歳児18人、1500ppm | 20mLで10秒、1回または2回 | 1分後:19.5ppmと9.8ppm。90分までの合計は約1.6倍 |
| Parakaw 20247 | 成人10人、1500ppm | 10mLで10秒、1回 | 直後と5分後のいずれも、すすがないほうが高い |
| Sjögren 19948 | 15人 | 水で1回と2回 | 直後の唾液:1回で下がり、2回で4〜5分の1 |
| Duckworth 19919 | 8人 | 量・時間・回数を変える | 量や回数が多く時間が長いほど低い |
| Sjögren 200110 | 21人 | 水の量と時間を変える | 水の量が多いほど低い |
| Nordström 200911 | 26人、5000ppm | 水ですすぐ | すすぐと唾液のフッ化物が2.4分の1 |
研究から読み取れること
すすぐ水の量と回数を減らすほど、すすがない状態に近づきます。この表から、3つのことが読み取れます。
少量の水で短くすすいでも、磨いた直後から1分後の唾液のフッ化物は半分前後になります。10〜20mLの水で5〜10秒すすいだ3つの研究では、すすがない場合と比べて約0.4〜0.5倍でした4,5,7。Albahraniの研究では0.43倍、Sitthisettapongの研究では0.50倍、Parakawの研究では図から読み取って約0.44倍です。
水の量や回数が増えるほど、残るフッ化物はさらに減ります。葛西らの研究では、25mLの水で30秒すすいだ直後に残るフッ化物は約8分の1でした3。すすぐ回数で見ても、2回すすいだ場合は口に残る量が1回より約27%少なくなりました6。Sjögrenらの研究でも、2回すすいだ直後の値がすすがない場合の4〜5分の1でした8。水の量を変えた研究でも、使う水が多いほど低くなっています9,10。すすぐ時間の影響は、研究によって結果が分かれています9,10。
差がはっきり出るのは、磨いた直後から数分のあいだです。葛西らの研究では、唾液のフッ化物が磨く前より統計的に差が確かめられる高さだったのは、すすがない場合は磨いて10分後まで、すすいだ場合は直後だけでした3。Parakawらの研究でも、差が確かめられたのは直後と5分後です7。
口の中にフッ化物が何ppmあればよいかという目標値は、ほとんど分かっていません12。エナメル質を溶かす液と再石灰化を促す液へ交互にひたす実験では、1ppm未満でも歯の表面が溶けるのを抑え、0.02〜0.06ppmという低い濃度でも効果が確かめられています13。すすぎの研究で比べているのは、口に残るフッ化物の量と、濃い状態が続く時間です。
虫歯の数で見た研究
虫歯の数を比べた研究でも、すすぎ方を含む歯磨きの仕方で差が報告されています。スコットランドでは、平均12.5歳の子ども3,005人の歯磨きの習慣を聞き取っています。歯磨きのあとにコップを使って口をすすいでいた子は、コップを使わない子よりも3年間の虫歯の増え方が一貫して多くなりました14。4歳の子ども369人を3年間追跡した試験では、すすがない方法を含めた歯磨き粉の使い方を、半数の子どもに指導しています。乳歯の奥歯で歯と歯の間にできた新しい虫歯は、最後まで参加した子の平均で、指導を受けたグループが1.14面、受けなかったグループが1.55面と、約26%少なくなりました15。この指導には、歯磨き粉を歯全体に広げることや、泡を一口の水と一緒に1分ほど口に含んで歯のあいだに行き渡らせること、2時間は飲食しないことといった手順も含まれています。
水ですすぐよりも、すすがないほうが口の中にフッ化物を多く残せます。すすぐ場合でも、水の量を減らして回数を1回にとどめるほど、すすがない状態に近づきます。4学会が示している「少量の水で1回のみ」という方法は、この結果に沿った案内です。
歯磨きの直後に牛乳を飲まない理由
牛乳に含まれるカルシウムには、フッ化物と結びつく性質があります。化学式で書くと、Ca²⁺ + 2F⁻ → CaF₂ です。歯磨き粉に含まれるフッ化ナトリウム(NaF)は、唾液に溶けてフッ化物イオン(F⁻)になります。そこへ牛乳のカルシウムイオン(Ca²⁺)が加わると、互いに結びついて水に溶けにくいフッ化カルシウム(CaF₂)に変わります16。
フッ化物洗口液を誤って飲み込んで中毒症状が出たときの応急処置には、牛乳やカルシウム剤が使われます17。歯磨き粉を誤飲してしまった場合も同様で、日本小児科学会の傷害速報は、たくさん食べた直後にカルシウムを多く含む牛乳かアイスクリームを与えるよう勧めています18。この速報では、1歳5か月の男の子がフッ化物950ppmの子ども用歯磨き粉を約30g(残りの量からの推定)食べて3回吐き、入院して2日目に退院した例が報告されました18。飲み込んだ量が多いときや、吐くなど具合が悪いときは、医療機関に相談してください。空腹時にフッ化物の錠剤を牛乳と一緒に飲んだ実験では、体に吸収されるフッ化物が約30%減りました。牛乳のカルシウムとフッ化物が結びつき、吸収されにくくなったことが理由の一つと考えられています19。
歯磨きのあとは、口の中にフッ化物を残しておきたい時間帯です。歯磨きの直後に飲食をすると、唾液に含まれるフッ化物が12〜15分の1まで下がったという研究があります8。牛乳もそうした飲み物のひとつなので、歯磨きの直後は避けて、歯磨きの前に飲むようにしましょう。
寝る前の歯磨きは、1日2回のうちの1回に
1日2回の歯磨きのうち、1回は寝る前に行います。日本の4学会は全年齢で「就寝前を含め1日2回」と示し、FDIも夜の最後か寝る前の歯磨きを勧めています1,2。寝ている間は唾液の量が減るため、寝る前に甘い飲み物を飲む習慣も見直したいところです20。
子どもや、歯磨き粉を吐き出しにくい方の仕上げ方
歯磨き粉は年齢に合った量を使い、吐き出せる人は余分な分を吐き出します。年齢ごとの量とフッ化物の濃さは、4学会の表のとおりです2。ppmFは、歯磨き粉に含まれるフッ化物の濃さを表す単位です。

自分で吐き出すのが難しい方には、介助する人が適量の歯磨き粉を使い、口のまわりについた余分な分を取り除きます1。飲み込みにくさ(嚥下障害)があり介護を受けている方の場合は、唾液や歯磨き粉が気管に入ることがあるため、ガーゼで吸い取ったり、吸引器をあわせて使ったりするのもよい方法です2。ご本人に合った方法は、歯科医院で一緒に決めましょう。
歯磨き後に洗口液(マウスウォッシュ)を使うときは
FDIは、洗口液を歯磨きとは別のタイミングで使うよう勧めています1。歯科医院で指示されたフッ化物洗口や、使う時間が説明書に書かれている洗口剤は、その指示に従ってください。フッ化物洗口液の添付文書には、口をゆすいだあと30分は飲食を控えるよう書かれています17。日本の4学会は、歯磨き粉を使うことに加えて、フッ化物洗口(フッ化物入りの液で口をゆすぐ方法)やフッ化物歯面塗布(歯科で歯に塗る処置)を組み合わせることも勧めています2。
まとめ:吐き出して、すすがない
歯磨きのあとは余分な歯磨き粉を吐き出すだけにして、水ですすがないのが基本です。
- 歯磨きのあとは余分な歯磨き粉を吐き出し、水ではすすがない。すすぐなら少量の水で1回。
- 歯磨きの直後に牛乳は飲まない。飲む場合は牛乳は歯磨きの前に飲み、まず口をゆすいで牛乳が口の中に残ってない状態で磨くこと。
- 寝る前を含めて、1日2回磨く。
歯磨き粉の量や仕上げ方、介助の方法で迷う方は、かわせみデンタルクリニックへご相談ください。普段の歯磨きの様子に合わせて、一緒に最適な方法を探していきましょう。
関連記事
- 子どもが歯磨き粉を食べた・飲み込んだときは?何gで危ないかの早見表と受診の目安
- その歯磨き、損してるかも?歯磨き粉の効果を最大化する4つのルール
- 虫歯予防にフッ素!年齢別のフッ素濃度と、当院お勧めの歯磨き剤をご紹介
- FDI(世界歯科連盟)による歯みがきのコンセンサス
- 初期の虫歯を元に戻すはたらき『再石灰化』について
- 食後すぐに歯を磨いた方がいいのか?
- 乳歯列期からとり入れましょう!虫歯予防に効果的なフッ化物洗口について
参考文献
- FDI World Dental Federation. FDI Consensus on Toothbrushing Chairside Guide.
- 日本口腔衛生学会・日本小児歯科学会・日本歯科保存学会・日本老年歯科医学会. フッ化物配合歯磨剤の推奨される利用方法について(普及版). 2023年4月19日.
- 葛西礼衣、福井誠、栁沢志津子、片岡宏介. 1,450 ppmフッ化物配合歯磨剤によるブラッシング後の安静時唾液中フッ化物イオンの残存状況に関する報告. 口腔衛生会誌. 2022;72(3):173-177.
- Albahrani MM, Alyahya A, Qudeimat MA, et al. Salivary fluoride concentration following toothbrushing with and without rinsing: a randomised controlled trial. BMC Oral Health. 2022;22(1):53.
- Sitthisettapong T, Thaisiam N, Phooamornrat T, et al. Salivary Fluoride Concentrations and Fluoride Intake After Toothbrushing With and Without Rinsing Using Sodium Fluoride Toothpaste: A Crossover Trial in 6-Year-Old Children. Int J Paediatr Dent. 2026;36(5):657-666.
- 荒川浩久, 宋文群, 藤川晴彦, et al. 高濃度フッ化物配合歯磨剤時代のう蝕予防. デンタルマガジン 163号(モリタ).
- Parakaw T, Srihirun S, Dararat P, et al. Kinetics of fluoride after brushing with the no-rinse method. BMC Oral Health. 2024;24(1):1050.
- Sjögren K, Birkhed D. Effect of various post-brushing activities on salivary fluoride concentration after toothbrushing with a sodium fluoride dentifrice. Caries Res. 1994;28(2):127-31.
- Duckworth RM, Knoop DT, Stephen KW. Effect of mouthrinsing after toothbrushing with a fluoride dentifrice on human salivary fluoride levels. Caries Res. 1991;25(4):287-91.
- Sjögren K, Melin NH. The influence of rinsing routines on fluoride retention after toothbrushing. Gerodontology. 2001;18(1):15-20.
- Nordström A, Birkhed D. Fluoride retention in proximal plaque and saliva using two NaF dentifrices containing 5,000 and 1,450 ppm F with and without water rinsing. Caries Res. 2009;43(1):64-9.
- Ekstrand J, Oliveby A. Fluoride in the oral environment. Acta Odontol Scand. 1999;57(6):330-333.
- ten Cate JM. Current concepts on the theories of the mechanism of action of fluoride. Acta Odontol Scand. 1999;57(6):325-329.
- Chesters RK, Huntington E, Burchell CK, et al. Effect of oral care habits on caries in adolescents. Caries Res. 1992;26(4):299-304.
- Sjögren K, Birkhed D, Rangmar B. Effect of a modified toothpaste technique on approximal caries in preschool children. Caries Res. 1995;29(6):435-441.
- PubChem. Calcium Fluoride (CID 84512). National Center for Biotechnology Information.
- フッ化ナトリウム洗口液0.1%【ライオン】 添付文書(2024年3月改訂).
- 日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会. Injury Alert(傷害速報)No.113 フッ素入り子ども用歯磨剤の誤食による急性フッ素中毒疑い. 日本小児科学会雑誌. 2022;126(7):1098-1100.
- Trautner K, Einwag J. Influence of milk and food on fluoride bioavailability from NaF and Na2FPO3 in man. J Dent Res. 1989;68(1):72-7.
- Department of Health and Social Care ほか. Delivering better oral health: an evidence-based toolkit for prevention, Chapter 10: healthier eating.
執筆・監修 中村 瞬
かわせみデンタルクリニック 院長 / 歯学博士(歯科麻酔学)/ 日本歯科麻酔科学会 認定医
医療記事を数多く執筆。TV取材多数
医学的根拠(エビデンス)に基づく、正確で分かりやすい情報を患者目線でお届けします。
かわせみデンタルクリニック|船橋の歯医者・矯正歯科
所在地:〒273-0005 千葉県船橋市本町6丁目3−20 ベルヴィル船橋本町 1階B号室
電話番号:047-409-2988
JR・東武鉄道「船橋」駅 徒歩4分
平日 9:00 ~ 13:00 14:30 ~ 18:00
土曜 9:00 ~ 13:00 14:00 ~ 17:00
(休診:日曜・月曜・祝日)

当院は、初診時にしっかりと検査を行い、歯周病・虫歯・根管治療から矯正歯科・小児矯正まで、丁寧にご説明のうえで治療を進める方針です。
治療後も再発予防に努め、安心して通える歯科医院を目指します。

