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子どもの虫歯と「世帯年収・親の学歴」の関係:日本の大型コホートから見えた格差

「毎日きちんと歯みがきをしているのに、なぜ虫歯になってしまうのだろう」と感じたことはありませんか。

子どものむし歯(う蝕)は、歯みがきの習慣や甘いものの食べ方だけで決まるものではありません。近年の研究では、家庭を取り巻く社会的・経済的な環境も、子どもの虫歯リスクに影響することが明らかになってきています。

日本では、全国規模の出生コホート研究「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査、Japan Environment and Children’s Study)」のデータを用いて、世帯年収や親の学歴と子どもの早期う蝕(Early Childhood Caries:ECC)の関連を調べた研究が2026年に発表されました1。

この記事では、約6万8千組の親子を対象とした研究結果をもとに、「経済的な格差と子どもの虫歯リスク」の関係をわかりやすく解説します。また、仕上げ磨きやフッ化物の利用などの生活習慣だけでは説明できない格差があるという、注目すべき結果についても紹介します。

目次

  1. 早期う蝕(ECC)とは?
  2. エコチル調査でわかったこと
  3. 「生活習慣だけでは説明できない」格差とは?
  4. 家庭でできること・社会に期待されること

1. 早期う蝕(ECC)とは?

早期う蝕(ECC)とは、生後から6歳未満の乳幼児にみられるむし歯を指します。進行すると、食事や発育、栄養状態にも影響する可能性があり、小児期の重要な健康課題の一つです1。

日本では、この数十年で虫歯のある子どもの割合は減少しています。しかし、依然として公衆衛生上の重要な課題とされています1。

これまでの研究でも、家庭の社会経済的状況(Socioeconomic Status:SES)と子どもの虫歯リスクとの関連は報告されてきました。一方で、「世帯年収」と「親の学歴」がそれぞれどの程度影響しているのか、また仕上げ磨きなどの生活習慣でどこまでその差を説明できるのかは、十分には明らかになっていませんでした1。

2. エコチル調査でわかったこと

今回紹介する研究では、2011年から2014年にかけて日本全国で登録された6万8,312組の親子を対象に分析が行われました1。

世帯年収は家族人数を考慮した「OECD修正等価尺度」を用いて評価され、親の学歴とあわせて、子どもが4歳になるまでの虫歯の診断歴との関連が調べられました1。

その結果、4歳までに虫歯と診断された子どもの割合は23.0%でした。そして、おおよそ2歳頃から、世帯年収が低い家庭や親の学歴が低い家庭ほど、虫歯の割合が高くなる傾向が確認されました1。

特に、親の学歴が中等教育(日本では高校卒業程度)までのグループでは、高学歴のグループと比べて虫歯リスクが約1.5倍(調整後オッズ比1.52、95%信頼区間1.44〜1.59)高いことが示されています1。

また、世帯年収が低いほど虫歯リスクが高くなる傾向も確認されました。つまり、世帯年収と親の学歴は、それぞれ独立して子どもの虫歯リスクと関連していることが示されたのです。

3. 「生活習慣だけでは説明できない」格差とは?

この研究では、「なぜ社会経済的な格差が虫歯リスクにつながるのか」を明らかにするため、2歳時点での生活習慣にも着目しています1。

具体的には、以下の生活習慣が、社会経済的な格差と虫歯リスクとの関連をどの程度説明できるのかが統計的に分析されました1。

  • フッ化物の利用
  • 歯みがきの実施状況
  • 哺乳瓶の継続使用
  • 間食の頻度

分析の結果、これらの生活習慣は確かに社会経済的格差と虫歯リスクとの関連の一部を説明していました。しかし、それぞれが説明できた割合は、全体の効果の5%未満にとどまっていました1。

つまり、「仕上げ磨きをしているか」「フッ化物を使っているか」といった家庭での取り組みだけでは、世帯年収や親の学歴による虫歯リスクの差を十分には説明できなかったことになります1。

研究者らは、この結果から、幼児期の虫歯リスクには生活習慣だけでなく、より広い社会的・環境的な要因が関わっている可能性を示唆しています1。

なお、この研究では、具体的にどの要因が残りの格差を説明するのかまでは明らかになっていません。歯科医療へのアクセスのしやすさ、居住地域の環境、心理的ストレスなどが候補として考えられますが、これらは現時点では仮説の段階であり、今後の研究による検証が必要です。

4. 家庭でできること・社会に期待されること

この研究結果は、「世帯年収や学歴が低い家庭では子どものケアが十分に行われていない」ということを示すものではありません1。

むしろ、家庭での生活習慣の改善だけでは埋めることのできない格差が存在することを示しています。そのため、家庭への支援に加え、地域や社会全体で子どもの口腔健康を支える取り組みも重要であることが示唆されています1。

もちろん、フッ化物の活用や仕上げ磨き、間食の管理といった基本的なケアが、子どもの虫歯予防に有効であることは、多くの研究で支持されています。

今回の研究は、こうした家庭でのケアに加えて、定期的な歯科受診や乳幼児健診、フッ化物塗布などの専門的な予防処置を、経済的な事情にかかわらず受けやすい環境づくりの重要性をあらためて示したものといえるでしょう。

お子さんの虫歯予防では、ご家庭での毎日のケアと歯科医院での専門的なサポートを組み合わせることが大切です。

船橋市のかわせみデンタルクリニックでは、予防歯科として、フッ化物塗布や仕上げ磨きのアドバイスなど、お子さん一人ひとりに合わせた虫歯予防を行っています。気になることがあれば、お気軽にご相談ください。

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参考文献

  1. Associations of household income and parental education with early childhood caries: the Japan Environment and Children’s Study(2026)
    世帯収入と親の学歴が早期幼児う蝕に及ぼす影響:エコチル調査(子どもの健康と環境に関する全国調査)https://www.jstage.jst.go.jp/article/ehpm/31/0/31_25-00358/_article


執筆・監修 中村 瞬
かわせみデンタルクリニック 院長 / 歯学博士(歯科麻酔学)/ 日本歯科麻酔学会 認定医
医療記事を数多く執筆・TV取材多数
医学的根拠(エビデンス)に基づいた正確で分かりやすい情報を患者目線でお届けしています。


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