【続】歯医者の「局所麻酔薬が足りない」問題:2026年6月シタネスト出荷停止による患者さんへの影響と代替薬の考え方

シタネスト(歯科用シタネスト-オクタプレシンカートリッジ)の出荷停止で歯科治療はどう変わるのか。キシロカイン、スキャンドネスト、セプトカインとの違い、使い分け、注意点をわかりやすく解説します。
この記事は 歯医者の「局所麻酔薬が足りない」問題、今いったい何が起きているのか?── 2026年3月現在も続く深刻な供給不足 の関連記事になります。これまでの経緯を知りたい方はこちらもご覧下さい。
目次
- はじめに
- シタネストとはどんな歯科麻酔薬か
- 今回の出荷停止で何が起きているのか
- 代替薬の選択が単純ではない理由
- 主要な歯科用局所麻酔薬の特徴と使い分け
- セプトカインの伝達麻酔はどう考えるべきか
- 「個別判断」を求めた理由 ── メーカー通知に込められた意味
- シタネストがなくなると「診療に制限がかかる」患者とは
- なぜシタネストは供給不足に陥ったのか ── 構造的背景の考察
- 患者さんに知っておいてほしいこと
1. はじめに
歯科治療で使われる局所麻酔薬のひとつである「歯科用シタネスト-オクタプレシンカートリッジ」は、アドレナリンを含まない麻酔薬として、心血管系への配慮が必要な患者さんなどに重要な役割を果たしてきました1。しかし近年、この製剤は複数回にわたって出荷調整や出荷停止を繰り返しており、2026年には再び供給停止が大きな問題となっています2,3,4,5,6,7,8。
この問題は、単に「いつもの麻酔薬が手に入りにくい」という話ではありません。シタネストが使えないことで、代わりにどの局所麻酔薬を選ぶか、患者さんの持病や妊娠の有無、治療内容に応じて、これまで以上に丁寧な判断が必要になります7,8,9。
2. シタネストとはどんな歯科麻酔薬か
歯科用シタネスト-オクタプレシンカートリッジは、有効成分としてプロピトカイン塩酸塩を含み、血管収縮薬としてフェリプレシンを配合した歯科用局所麻酔薬です1。効能・効果は、歯科・口腔外科領域の手術・処置における浸潤麻酔および伝達麻酔であり、1管1.8mL中にプロピトカイン塩酸塩54mgとフェリプレシン0.054単位を含有します1。
大きな特徴は、アドレナリンではなくフェリプレシンを使っている点です。アドレナリン含有製剤は止血効果や麻酔持続時間の面で有利ですが、動悸や血圧上昇などが問題になる患者さんでは使いにくいことがあります10,11。シタネストはその代替として位置づけられてきましたが、一方でフェリプレシンにも血圧や子宮平滑筋への作用があり、誰にでも無条件に安全というわけではありません10,11。
3. 今回の出荷停止で何が起きているのか
歯科用シタネスト-オクタプレシンカートリッジ 供給状況の推移
シタネストの供給問題は今回が初めてではありません。2019年以降、複数回にわたって出荷調整・販売一時中止・出荷停止・再開が繰り返されてきました。以下の表は、デンツプライシロナの公式通知にもとづく供給状況の推移です。
| 年月日 | 供給状況 | 内容および原因の詳細 |
|---|---|---|
| 2019年12月18日 | 出荷量調整(制限) | 日本薬局方(日局17 第1追補)に伴う海外調達原薬の試験法の見直しが必要となり、変更手続き等に時間を要したため。2 |
| 2021年4月5日 | 販売一時中止 | 海外調達原薬(プロピトカイン塩酸塩)の純度試験において規格逸脱が生じ、適合する原薬の調達および製造が困難となったため。3 |
| 2021年10月29日 | 出荷再開遅延 | 当初10月を予定していた供給再開に遅れが生じたため。11月8日より順次出荷を再開したが、入荷数量は限定的であった。4 |
| 2022年9月30日 | 出荷停止解除(10月3日より再開) | 検証が完了し、出荷試験に合格した製品の準備が整ったため。ただし、入荷数量に限りがある状態での対応。5 |
| 2025年9月24日 | 出荷調整 | 製造元の設備更新に伴う製造準備の最終段階で、製造プログラムに不具合が発生し、安定した製造が困難となったため。6 |
| 2025年11月28日 | 出荷調整(続報) | 最終段階のバリデーションを実施中。完了すれば、シタネストは2026年2月中旬から出荷調整緩和を目指すと案内。7 |
| 2026年6月9日 | 出荷停止 | 厚生労働省、製造業者、デンツプライシロナの三者協議の結果、「歯科用局所麻酔薬全体の供給量確保を最優先とする」方針が示され、当面はジーシー昭和薬品が製造販売する他剤の供給が優先されることになった。これにより、シタネストは在庫限りで出荷停止となった。出荷再開予定は2026年7月。8 |

歯科用キシロカインカートリッジ 供給状況の推移
今回、同時に同時に発表された同社の歯科用キシロカインカートリッジについても関連事項としてまとめました。
| 年月日 | 供給状況 | 内容および原因の詳細 |
|---|---|---|
| 2021年8月26日 | 出荷調整 | 製造過程で使用する無菌フィルターが新型コロナウイルスワクチンの製造に優先供給され、本剤の製造が困難となったためです。 |
| 2021年10月11日 | 製造再開・順次出荷再開 | 製造の目処が立ったため出荷を再開しましたが、入荷数量に限りがあるため当面は限定的な出荷対応となりました。 |
| 2022年1月26日 | 出荷調整を継続 | 無菌フィルターの優先供給状況が依然として改善されず、安定供給が軌道に乗るまで時間を要するためです。 |
| 2025年9月24日 | 出荷調整 | 製造設備の更新に伴うプログラムの不具合により、安定した製造が困難となったためです。当初は11月頃の解除を見込んでいました。 |
| 2025年11月10日 | 解除見通し困難 | 状況の変化により、出荷調整解除の見通しを立てることが困難である旨が案内されました。 |
| 2025年11月28日 | 限定出荷 | 最終段階のバリデーションを実施しており、完了すれば12月下旬より出荷調整が緩和(限定出荷)される見通しとなりました。 |
| 2026年6月4日9日 | 出荷停止(供給停止) | 2025年9月以降の製造トラブルに加え、厚生労働省の方針により他社(ジーシー昭和薬品)製品が優先製造されることになり、当面の間生産・出荷を停止することとなりました。 |

今回の出荷停止をどう読むか
2019年から2022年にかけては、原薬試験法の見直し、海外調達原薬の規格逸脱、出荷試験不合格といった、原薬と品質管理の問題が供給不安の中心でした2,3,5,12。一方、2025年には製造設備更新に伴う製造プログラム不具合が前面に出ており、供給不安の原因が原薬だけではなく、製造体制そのものにも及んでいることが分かります6,7。
さらに2026年6月の通知では、個別製品の問題を超えて、厚生労働省が歯科用局所麻酔薬全体の供給確保を優先する判断を示したことが重要です8。これは、シタネスト単独の問題ではなく、市場全体で何を優先的に作り、どう配分するかという行政的・政策的判断のフェーズに入ったことを意味します8,12,13。
4. 代替薬の選択が単純ではない理由
シタネストが出荷停止になったからといって、単純に別の局所麻酔薬へ置き換えれば済むわけではありません。歯科用局所麻酔薬は、主成分、血管収縮薬、麻酔の立ち上がり、持続時間、止血効果、適応症、禁忌がそれぞれ異なるためです1,9,14,15。
特に重要なのは、シタネストを使っていた患者さんには、アドレナリン含有製剤を避けたい事情がある場合が少なくないことです。心血管系の既往、動悸への不安、服薬状況などによっては、キシロカインやセプトカインへ単純に切り替えることが難しいことがあります10,11,16,17。
また、フェリプレシンにも妊娠中などで注意が必要な場面があります。つまり、アドレナリンが難しいから常にシタネストが最適、逆にシタネストがないから常にキシロカインで良い、という単純な図式にはなりません10,11。
5. 主要な歯科用局所麻酔薬の特徴と使い分け
主要4製剤の統合比較
| 製剤名 | 主成分 | 血管収縮薬 | 主な適応 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| シタネスト-オクタプレシン | プロピトカイン | フェリプレシン | 浸潤・伝達麻酔 | アドレナリンを含まない。心血管系への配慮が必要な患者で選択されやすい。1 |
| 歯科用キシロカインカートリッジ | リドカイン | アドレナリン | 浸潤・伝達麻酔 | 標準的に広く使われる。止血効果・持続時間に優れる。9 |
| スキャンドネストカートリッジ3% | メピバカイン | 血管収縮薬なし | 浸潤・伝達麻酔 | 血管収縮薬を含まない代替候補。シタネスト代替として案内されている。14,6 |
| セプトカイン配合注カートリッジ | アルチカイン | アドレナリン | 浸潤・伝達麻酔 | 浸潤麻酔で高い有効性が期待されるが、伝達麻酔では慎重な判断が必要。15,18,19,20,21 |
血管収縮薬の違い
局所麻酔薬に配合される血管収縮薬は、麻酔の効きを長持ちさせ、出血を減らすために重要です。アドレナリンはその効果が強く、歯科治療では非常に有用ですが、循環器系への影響が問題になることがあります10。
一方で、フェリプレシンはアドレナリンとは作用機序が異なります。心拍数増加は比較的起こしにくい一方、血圧変動や末梢血管収縮、妊娠時の子宮平滑筋への作用が懸念されるため、これもまた「完全に安全な代替」ではありません10,11。
血管収縮薬の比較
| 項目 | アドレナリン | フェリプレシン |
|---|---|---|
| 主な配合製剤 | キシロカイン、セプトカイン9,15 | シタネスト-オクタプレシン1 |
| 主な利点 | 止血効果が高く、麻酔持続の延長が期待しやすい9 | 心拍数増加を起こしにくく、アドレナリン回避が必要な症例で検討されやすい1,10 |
| 主な注意点 | 動悸、血圧上昇、循環器系への配慮が必要9,10 | 血圧変動、末梢血管収縮、妊娠時の子宮平滑筋への作用に注意10,11,16 |
| 向いている場面 | 一般的な外来歯科治療、止血を重視する処置9 | アドレナリン含有製剤を避けたい患者の選択肢1,10 |
| 向いていない/慎重な場面 | アドレナリン反応が問題になる患者10 | 妊娠中、血圧管理に注意が必要な患者11,16 |
代替薬選択の考え方(概略)
| 患者背景・状況 | 候補になりやすい薬剤 | 注意点 |
|---|---|---|
| 標準的な外来歯科治療 | キシロカイン | 一般的には使いやすいが、アドレナリン配合である点に注意。9 |
| アドレナリンを避けたい | スキャンドネスト、シタネスト | シタネストは供給停止中。スキャンドネストは持続や止血面で差がある。14,6 |
| 妊娠中 | キシロカイン中心に慎重判断 | フェリプレシン含有のシタネストは慎重投与の考え方が重要。10,16 |
| 浸潤麻酔で確実性を高めたい | セプトカイン | 有効性は高いが、伝達麻酔では議論がある。18,19,20,21 |
患者別の代替薬選択
| 患者タイプ | 第一候補として考えやすい選択肢 | 判断のポイント |
|---|---|---|
| 標準的な成人 | キシロカイン9 | 汎用性が高く、止血や持続のバランスが良い。 |
| アドレナリンで動悸が出やすい | スキャンドネスト、シタネスト1,14 | シタネスト供給停止下ではスキャンドネスト検討が現実的。 |
| 心血管系に配慮が必要 | シタネスト、スキャンドネストを軸に個別判断1,10,14 | ただしフェリプレシンにも注意点があり、一律では決められない。 |
| 妊娠中 | キシロカイン中心に慎重判断9,16 | フェリプレシン含有製剤は慎重投与の考え方が重要。 |
| 抜歯・外科処置で止血を重視 | キシロカイン、必要に応じてセプトカイン9,15 | アドレナリン配合による止血効果が有利になりやすい。 |
| 下顎臼歯部で浸潤麻酔の成功率を高めたい | セプトカイン18,19,20 | 頬側浸潤麻酔で有効性が期待される。 |
| 伝達麻酔が必要 | キシロカイン中心、セプトカインは慎重判断9,15,21,22,23 | セプトカインは適応ありだが、実臨床では議論が残る。 |
| 小児・高齢者 | 処置内容と全身状態に応じて個別判断1,9,14 | 一律の代替ではなく、必要最小限投与と全身状態の確認が重要。 |
| 麻酔歴や副反応歴がある | 過去の反応を踏まえて個別選択10,11,16 | 成分名・血管収縮薬・症状の内容を確認して選ぶ。 |
処置内容による選択の考え方
単純な充填や生活歯の形成では、標準的なキシロカインで十分対応できる場面が多いです9。一方で、炎症が強い歯、下顎大臼歯、抜歯、切開などでは、浸潤だけでなく伝達麻酔の必要性や追加麻酔のしやすさも重要になります18,19,20。
このため、供給不安下では「どの薬が一番良いか」ではなく、「この患者さんにこの処置で何が最も安全で現実的か」という視点で選択せざるを得ません6,7,8。
6. セプトカインの伝達麻酔はどう考えるべきか
セプトカイン配合注カートリッジは、国内添付文書上では浸潤麻酔・伝達麻酔の両方に適応があります15。一方で、アルチカインを下歯槽神経ブロックなどの伝達麻酔に使うことについては、海外でも神経障害リスクや適応の考え方をめぐって議論があり、日本でも慎重な扱いが必要と考える臨床家が少なくありません18,21,22。
セプトカイン配合注カートリッジ(アルチカイン+アドレナリン)
アルチカインは、特に下顎臼歯部に対する頬側浸潤麻酔で高い成功率を示す研究が多く、浸潤麻酔の有力な選択肢として注目されています18,19,20。そのため、シタネスト不足をきっかけにセプトカインへ関心が高まるのは自然な流れです。
ただし、浸潤麻酔で有効だからといって、すべての症例で伝達麻酔に積極的に置き換えてよいとは限りません。実臨床では、添付文書、処置内容、既往歴、術者の経験を踏まえた上で、慎重な判断が必要です15,18,21,22,23。
7. 「個別判断」を求めた理由 ── メーカー通知に込められた意味
理由①:シタネストを使っていた患者は、アドレナリンを避けたい患者が多い
シタネストは、アドレナリンを含まないという特性から、循環器系に配慮が必要な患者や、アドレナリンによる動悸などを避けたい患者で選ばれることがありました1,10。そのため、供給停止後にキシロカインやセプトカインへ一律に置き換えることは、患者背景によっては適切ではありません9,15,16。
理由②:一つの代替薬では全症例をカバーできない
血管収縮薬を含まないスキャンドネストは、シタネストの代替候補として現実的ですが、止血効果や持続時間は異なります14。逆に、キシロカインやセプトカインは止血や持続に優れる一方で、アドレナリン配合という別の制約があります9,15。
理由③:行政主導の供給最適化
2026年6月9日付の通知では、厚生労働省・製造業者・デンツプライシロナの三者協議の結果として、「歯科用局所麻酔薬全体の供給量確保を最優先とする」という方針が示されたことが明記されています8。これに基づき、ジーシー昭和薬品が製造販売するリドカイン製剤等の生産・供給が優先されることとなり、シタネストは一時停止とされました8。
つまり今回の問題では、個々の歯科医院が自由に薬剤を選べる範囲が狭まり、市場全体の供給最適化という観点から、個別判断が求められる状況になったのです8,12,13。
8. シタネストがなくなると「診療に制限がかかる」患者とは
診療に影響が出やすい患者群
| 患者群 | 影響が出やすい理由 | 実際の判断ポイント |
|---|---|---|
| アドレナリン配合製剤で動悸や気分不快を起こしたことがある患者さん | 代替薬にアドレナリン含有製剤を選びにくい10 | 成分だけでなく、過去の症状と重症度を確認する。 |
| 心血管系の既往や内服薬の関係で、アドレナリン使用に慎重さが求められる患者さん | 標準的なキシロカインへ単純置換しにくい10,16 | 全身状態と服薬内容を踏まえて個別判断する。 |
| 妊娠中で、局所麻酔薬の選択に追加配慮が必要な患者さん | フェリプレシン含有製剤にも注意が必要10,16 | 妊娠週数、処置必要性、代替候補を総合的にみる。 |
| 長めの処置、抜歯、外科的小手術などで、麻酔の持続や止血とのバランスが難しい患者さん | 代替薬によって止血性や持続時間が異なる9,15,18 | 処置内容に応じてキシロカインやセプトカインも含め検討する。 |
- アドレナリン配合製剤で動悸や気分不快を起こしたことがある患者さん10
- 心血管系の既往や内服薬の関係で、アドレナリン使用に慎重さが求められる患者さん10,16
- 妊娠中で、局所麻酔薬の選択に追加配慮が必要な患者さん10,16
- 長めの処置、抜歯、外科的小手術などで、麻酔の持続や止血とのバランスが難しい患者さん9,15,18
こうした患者さんでは、単なる「薬の名前の置き換え」ではなく、どの成分を避けるべきか、どの作用を優先すべきかを丁寧に見極める必要があります10,11,16。
9. なぜシタネストは供給不足に陥ったのか ── 構造的背景の考察
① 原薬の輸入依存と供給リスク
2019年12月の通知では、日本薬局方改訂に伴う原薬試験法の見直しが必要となり出荷調整が行われました2。2021年4月には、海外調達の原薬(プロピトカイン塩酸塩)の純度試験で規格逸脱が発生し、適合原薬の確保が困難となったため販売一時中止となっています3。さらに2022年には、出荷試験や検証にも時間を要し、再開後も十分な供給余力がない状態が続きました5。
厚生労働省資料でも、医薬品原薬のサプライチェーンが海外に依存する構造的課題が示されており、原材料の調達先が偏るほど、海外の生産・物流トラブルが国内供給に波及しやすくなります12。
② 薬価の慢性的な引き下げと採算性の低下
シタネストやキシロカインのような長年使われる注射薬は、低薬価のもとで安定供給が求められています1,9。一方、日本では薬価改定が継続的に行われるため、原材料費、人件費、輸送費が上昇しても価格に反映しにくく、製造設備への再投資や供給余力の確保が難しくなりやすい構造があります24,13。
歯科用シタネスト-オクタプレシンカートリッジの薬価は1管71.7円です。比較として、リドカイン製剤(1.8mL)が83.3円であり、歯科用局所麻酔薬全般として極めて低水準の価格設定が続いています。
③ シタネストには後発品が存在しない
シタネストは代替性が低い製剤であり、供給が止まったときに全く同じ条件で置き換えられる後発品がありません1。そのため、一度供給が滞ると、他剤への置き換えで臨床上の調整が必要になります6,7,8。
④ 少量多品目生産という産業構造の限界
歯科用局所麻酔薬は、注射薬として高い品質管理が求められる一方、市場規模は限られています。こうした少量多品目生産では、一製品のトラブルが起きたときに、余剰設備や別ラインで簡単に補えるとは限りません6,8。
⑤ 国のサプライチェーン強靱化への取り組みと限界
国は、経済安全保障推進法に基づく特定重要物資の指定や、安定供給確保策、薬価面での特例対応を進めています24,25,26。しかし、こうした施策は中長期的な構造改革であり、個別製剤の供給問題を直ちに解決するものではありません。今回のシタネスト出荷停止は、サプライチェーン強靱化が進められている途中でも、なお現場では供給不安が診療制約として表れることを示した事例といえます8,12,25。
10. 患者さんに知っておいてほしいこと
今回の問題で大切なのは、「麻酔薬が変わることがある」という事実を、患者さん自身も理解しておくことです。とくに持病がある方、妊娠中の方、過去に麻酔で気分が悪くなった経験がある方は、受診前に歯科医院へ伝えてください。
また、いつも通っている歯科医院であっても、供給状況によって麻酔薬の選択や治療計画が変わることがあります。これは安全性を下げるためではなく、安全性を保つために治療方法を調整しているということです。
船橋のかわせみデンタルクリニックでは日本歯科麻酔学会認定医である院長が患者さんの既往に応じて最適な歯科麻酔薬を選び処置を行っております。局所麻酔で気になることがありましたらお気軽にご相談ください。
参考文献
- 歯科用シタネスト-オクタプレシンカートリッジ 添付文書
- 「歯科用シタネスト-オクタプレシンカートリッジ」に関するお知らせ(2019年リリース)
- 「歯科用シタネスト-オクタプレシンカートリッジ」販売一時中止のお知らせ(2021年4月5日)
- 「歯科用シタネスト-オクタプレシンカートリッジ」販売一時中止解除に関するお知らせ(2021年10月29日)
- 「歯科用シタネスト-オクタプレシンカートリッジ」出荷停止解除(出荷再開)に関するお知らせ(2022年)
- 「歯科用シタネスト-オクタプレシンカートリッジ」出荷調整のお知らせ(2025年9月24日)
- 「歯科用シタネスト-オクタプレシンカートリッジ」出荷調整に関するご案内(続報)(2025年11月28日)
- 「歯科用シタネスト-オクタプレシンカートリッジ」の出荷に関するご案内(続報 2)(2026年6月9日)
- 歯科用キシロカインカートリッジ 添付文書
- Cardiovascular effects of felypressin(1995)
フェリプレシンの心血管作用 - Felypressin increased the diastolic blood pressure of hypertensive patients with controlled blood pressure(2014)
フェリプレシンは血圧コントロール良好な高血圧患者の拡張期血圧を上昇させた - 輸入原薬のサプライチェーン(厚生労働省資料)
- 医薬品・原材料の安定供給に向けて(日本医師会)
- スキャンドネストカートリッジ3% 添付文書
- セプトカイン配合注カートリッジ 添付文書
- Pregnancy and local anesthesia in dentistry: a systematic review(2025)
妊娠と歯科局所麻酔:系統的レビュー - 歯科用局所麻酔薬の出荷停止について(日本歯科麻酔学会・供給一覧の確認用)
- Can buccal infiltration of articaine replace traditional inferior alveolar nerve block for the treatment of mandibular molars? A systematic review and meta-analysis(2021)
アルチカインの頬側浸潤麻酔は下顎大臼歯治療で従来の下歯槽神経ブロックを置き換えられるか:系統的レビューとメタアナリシス - Efficacy of buccal infiltration anaesthesia with articaine for extraction of mandibular molars: a clinical trial(2018)
下顎大臼歯抜歯に対するアルチカイン頬側浸潤麻酔の有効性:臨床試験 - Anesthetic Efficacy of 4% Articaine During Extraction of the Mandibular Posterior Teeth by Using Inferior Alveolar Nerve Block and Buccal Infiltration Techniques(2017)
下顎臼歯抜歯における4%アルチカインの下歯槽神経ブロック法と頬側浸潤法の麻酔効果 - Does articaine, rather than lidocaine, increase the risk of developing non-surgical prolonged neuropathy after dental local anaesthesia? A mini systematic review(2021)
アルチカインはリドカインよりも歯科局所麻酔後の非外科的遷延性神経障害リスクを高めるか:ミニシステマティックレビュー - Occurrence of neurosensory disturbance after the use of articaine and lidocaine in the inferior alveolar nerve block: a double-blind randomised clinical trial(2024)
下歯槽神経ブロックにおけるアルチカインとリドカイン使用後の神経感覚障害の発生:二重盲検ランダム化比較試験 - 東京歯科大学学会誌掲載論文(セプトカインの伝達麻酔に関する考察を含む)(2024)
- 令和7年度薬価改定について②(厚生労働省)
- 経済安全保障推進法について(日本ジェネリック製薬協会)
- 「セプトカイン®配合注カートリッジ」の有用性と適応症例(GC・2025)
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当院は、初診時にしっかりと検査を行い、虫歯・根管治療から矯正歯科・小児矯正まで、丁寧にご説明のうえで治療を進めています。
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